自分の目標、自分の夢

やっぱり目指すはアレだよね


誰もが目指す、あの目標を











Jewel.04



















気付いたら私達は知らない土地の、知らない海の上にいた。そこで私は一人の綺麗な青年と出会って、此所暫く『ナギサシティ』という聞いた事のある様でない様な街に滞在する事となる

この街は殺伐としている。海から岸に上り、地に足を降ろして回りの空気を読んで、真っ先にそう感じた。視界が無くなったけど、お陰様で色々と敏感に察知出来る様になったのは、盲目だからのお蔭か…やっぱり今までの経験からだろうか。この子達の目を借りて回りを見てもやっぱり想像通りで、綺麗な海以外は閑散としていた








「トレーナーカード…トレーナーになるにはトレーナーカードが必要、ですか…」

「あぁ、トレーナーの最低条件だ。一般人とトレーナーの区別を付ける意味もある。トレーナーカードがあればポケモンセンターの宿泊施設を無料で利用したり、バトル大会や色々な催しにカード一枚で登録したり出来る」








旅がしたい

旅をして自分を捜したい


仲良くしてもらっているデンジやオーバー、それから眼前にいるだろうトムさんには悪いけど、私は早くこの街から出たい

彼等には色々お世話になった。衣食住に関しては自分でなんとかしているから問題無いけど、三人には私が早くこの街に慣れる様に色々と気遣ってもらった。盲目だからもそうだけど、でもその優しさが嬉しくて、辛かった

抜け出せられなくなってしまう

居心地が良くなってくる

逃げる為にも、私は早くこの街から出たい。――…でも、財布の金には困らなくても、トレーナーカードが無い事にすっごく焦りを感じていた。確かに自分は持っていた様な、いなかった様な…でも曖昧な答えは誤解を生む。無いなら無いでハッキリ言えばいいし、記憶が無い以上変な事なんて言えやしない








「…つまり、トレーナーカードはトレーナーの身分証みたいなものなのですね」

「ざっくり言えばそんなもんだ。………なんだ、持っていないのか?」

「はい、持ってないです」

「そうか…。…君の後ろにいるポケモン、ボールに入っていない所をみると君の手持ちじゃないのか?何故ボールに戻さない?」

「ボール…いいえ、この子達にボールなんてありません」

「…野生なのか?」

「分かりません。ですがとても大切な仲間です。ボールが在る無いなんて、関係ありません」

「…」
「キュー」
「……」









異空間に、この子達のボールは無い

ボールが無いなら野生のポケモンだと思われるのはしょうがないと思う。でもこの子達は確かに私のポケモンで、大切な仲間

何故、この子達のボールが無いのかは…私も分からない







「私はてっきり凄腕のトレーナーかと思っていたんだがな」

「うーん、どうでしょうね…ですが自信はありますよ。この子達と一緒に、世界を渡って、ポケモンマスターになるのを」

「ポケモンマスターになる以前に…トレーナーカードが無ければ意味も何もないぞ?」

「おっしゃる通りです…」

「しかし、ポケモンマスターか…デカく言ったな。あの二人が聞いたらお前を…応援するだろうが…止めるだろうな、多分」

「?止める?どうして?」

「そりゃ……いや、何でもない。今のは聞き流せ」

「えー…」










長く居ると、別れが辛くなる

一線を越えさせない為にも、早く此所から出て行かないと


彼等は、優しい人


優しい人だから、曖昧な存在な私と一緒にいても、私が辛いだけだ






「…仕方ない、私が君のを発行しておこう」

「え、いいんですか?」

「君が困っている姿を見て助けてやらないなど言語道断だ。トレーナーカード位、ジムリーダーの地位でどうにかなるさ。本当は正式な元で作られるんだが」

「ありがとうございますトムさん!」

「だが…あの二人には言ってくれるなよ?あの二人の事だ…君に着いて行くのは目に見えている。寂しいが……行くなら黙って行くんだぞ」

「任せて下さい」

「発行されるカードは、全員共通してノーマルカードだ。カードはその人の活躍によって色も違っていくから…頑張ってゴールドカードにしてみるのもいいかもしれない」

「ゴールドカード…分かりました。頑張ります」

「…」
「キュー!」
「……!」










何でだろう


一瞬、ゴールドカードが懐かしいと思ったのは








「――…そうだ、今の内に君の出身地を聞いておこう」

「え…」

「あぁ、詳しく言う必要は無い。トレーナーカードは詳しく住所とか書かなくていいから住民票と比べれば楽なんだ。あくまでも私がすることは仮だ、後から改めて本登録をすればいい」

「はい、わかりました」

「そういえば君の出身地とか色々聞いていなかったな。丁度良い、君の出身地は何処なんだ?」

「…私の、出身地は…――」










記憶が、無い

記憶が無いから安易に言えない


あったとしても、"このポケモン世界"には無い住所だ。変な事は言えない




でも―――――…








「私の出身地は、マサラタウンです」









昔ゲームで遊んだ初代の最初の町、マサラタウン


どうしてだろう、不思議と馴染みがある町で、言葉にも普通に馴染んでいたのだから











(ゲームでは知っている)(でもそれはゲーム上の話だけ)(マサラタウンって、何処の町なんだろう)

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -