そして時間は過ぎていき、

時刻は、約束の時間を迎えた






「幹部長、副幹部長。ようこそお越し下さいました」

「お久し振りです、コウダイ幹部長、ジン副幹部長。わざわざこちらに足を運んで下さり、ありがとう御座います」

「今日のこの日を楽しみにしていましたよ。…彼女は、何処に?」

「居間で待っています。こちらにご案内します」

「うむ。邪魔をするぞ」






リゾートエリアにある、ミリ達が居住する別荘。その玄関に、コウダイとジンの姿があった

仕事から直通でやってきた二人を出迎えたのはシロナとダイゴで、訪問してきた二人を歓迎した。二人は玄関に上がり、シロナの案内で居間へと歩を進めていく






「あら?副幹部長…そのお荷物は?」

「勿論、手ぶらで来るわけには行きませんからね。彼女にプレゼントを、と思いまして」

「きっとミリも喜びます」

「そうだといいんですが…」






ジンの手には紙袋が下げられていた。しかも大きな袋やら何やら入っている事から、お土産かプレゼントなのかは把握出来る

一体何が入っているのかしら、と上司の紙袋の中身を興味津々に想像するシロナ。きっとジンの事だから、センスの良い買い物とかしてきていそうだ。自分が運営する喫茶店お自慢の紅茶の缶でも入っていてもおかしくなさそうだ。あそこの紅茶は美味しいと評判があるから




―――と、詮索中のシロナを余所に、小さな二匹のポケモンがひょっこりと現れた






「ブイブイ!」

「ブーイ!」

「…ほう、色違いのイーブイか。白と黒…今まで見てきた色の中で、一番珍しい色をしている」

「「ブーイ!」」

「おやおや、可愛らしいイーブイですね。これは彼女のポケモンですか?」

「えぇ、そうです」

「白亜、黒恋、二人をミリの所へ案内してあげて頂戴」

「「ブイブイ!」」






こっちだよ!と黒恋が尻尾を振り、白亜はブイ!と鳴いて二匹一緒に駆け出して行く

彼女らしいポケモンですね、と小さな二匹の姿を見ながらジンは笑い、コウダイも頷いた。色違いのポケモンは、彼女の色を表すオレンジ色の他に最も聖蝶姫を象徴とするポケモンだ。久々に見る色違いのポケモンの姿に、やっと彼女が帰ってきてくれたと改めて実感するばかりだ






「「ブイブイ!」」






イーブイ達の姿を追い、リビングの中に到着した

役目を終えたとばかりに足元で嬉しそうに尻尾を振る二匹は、踵を返して駆け出した。勿論、向かう先は二匹の一番大好きな存在の元へ。ソファに座っていた主の元へ、イーブイ達は真っ直ぐに向かってその胸の中へ飛び込んでいった




ソファに座っていた主――ミリは、腕の中に二匹を抱き留めると、喉を鳴らし甘えてくる二匹の頭をそれぞれ撫でる。二匹をしっかりと抱き上げ、立ち上がってリビングの中へ入ってきた彼等と対面をした

彼女がミリです、そうダイゴが言い、シロナも嬉しそうに頷いた。コウダイとジンは二人に視線を向け、改めてミリに視線を向けた





六年前、突然行方不明になってしまった少女

彼女は、今も昔も変わらずに、記憶のままに存在していた









「―――こんにちは、初めまして。わざわざ遠い場所からお越し下さり、ありがとう御座います」










その声も、その容姿も

その立ち振る舞いも


何一つ、記憶のままに

彼女は変わっていない







初めて対面する来客に向かって、ミリはフワリと笑ったのだった













嗚呼、やっと会えた





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