「デンジさん、少し耳に入れておきたいお話がありまして…」 「あ?なんだ?これからバトルするから手短にしてくれ」 「はい。実は…発電所の消費電気量が些かおかしい点がありまして。この場合、製作者の方に確認してもらった方がいいと思いまして」 「消費電気量がか?」 「はい。三人の男性の方々が発電所へ来て指摘してくれたんです。見た事ある方々だったんですが、何分他地方出身なので誰かは分からなかったんですが…」 「三人の男性?………そうか、分かった。近い内にこっちで調べておく」 そうして、少しずつ ―――――――――― ――――――― ―――― ―― 「……あー…」 「うあー…」 「…………」 此処はシンオウリーグ協会の、とある一室 時刻は、もう午後を回っていた 「終わりませんねー…」 「終わりませんねぇ」 「終わらないなぁ」 「普段って、こんなに仕事時間掛かりましたっけ?」 「いえ、普段はこんなに時間は掛かりませんよ」 「だな。確実にこんなに時間は掛かっていなかった」 「ですよねー」 だはー、とオーバとリョウは今日で十回目の盛大な溜め息を零した 此処にいるのは、シンオウ地方を代表する四天王の姿 今、彼等は書類整理に追われていた もうじきスズラン大会が控えているシンオウ協会。大会の為の書類や、大会を見越して片付けなければならない書類など様々に、彼等が対面する机の上にはドッサリと束になった書類が置かれていた 先程休憩時間に入り、栄養を摂取した彼等であったが、膨大な量に既に集中力が迷子になりかけていた。撃沈するオーバとリョウとは別に、ゴヨウはやれやれと二人の様子に苦笑しながら手を止めずに黙々と進めていく。その集中力に二人はつくづく尊敬するばかりだ。別にこんな書類とバトルしたい為に四天王になったわけじゃないんだけどなぁ、と意気銷沈する 「あー、くそっ。まさかゴウキさんが居なくなった途端、こんなにオマケがドッサリきちまうなんて予想外だったぜ…」 「僕…つくづくゴウキさんが四天王になってくれて良かったと思いますよ……初めてこの書類に殺意を覚えました」 「キクノさんがいてもきっと変わってなかったんだろうなぁ…あの人ばーちゃんだし」 「それだけ彼が率先して私達の分までやってくれていたんです。いくら臨時とはいえ、彼はもう私達にとって欠かせない存在ですよ」 普段だったらこの場所にいる筈だったもう一人の存在を瞼の裏に浮かべながら、三人はそれぞれの思いを口にする キクノの代理として任命されたゴウキ。彼が来てからというもの、仕事が一気に楽になっていた。仕事の流れがスムーズになった、と言うべきか。それにゴウキが仕事を引き受けてくれた事が何度もあり、随分と楽をさせてもらっていたのだ ツケが回った、そう、まさにこの現状はこの言葉に限る。つくづくゴウキという懐が広い男に改めて感謝をしたい。そして仕事を押しつける形で楽をして申し訳ないと今改めて思う。いや本当 とにかく!と、机に突っ伏していたリョウはガバッと起き上がった 「いつも僕達の為に頑張ってくれたゴウキさんの為にも頑張らないと!」 「そうだな。そうと決まれば頑張るしかねーよな」 「それに早めに終わらせておけば気兼ねにパーティに参加出来ますしね」 「そうそう!早くパーティの日になってくれないかなぁ〜」 楽しみだなぁ〜と意気揚々に書類に手を付けるリョウ。それもそのはず、後少しで―――行方不明だったミリと、ご対面出来るのだ ミリがシンオウに来てから、少しずつ計画を練ってきたパーティ。その為にも、彼等は頑張ってきた。約束の日の分まで仕事をこなし、スズラン大会の為の仕事も副職も。それはリョウやゴヨウだけではなく、他のジムリーダーの人達も同じだった 既にミリにもパーティの事についてシロナから話を聞いている。皆と会うのを楽しみにしている事も、オーバやデンジの口から伝わっている とても、楽しいパーティになりそうだ 「…そういえば、今日は幹部長の方々がミリさんに会いに行く話を聞いていますが」 「そうなんだよなぁ。マジ今日仕事に来て良かったぜ…」 「あ、そうそうさっきジン副幹部長が無駄にニッコニコした顔でおっきな袋抱えてリーグから出て行ったのを見ましたよ!やっぱりあの袋は聖蝶姫さん宛てかな?」 「あの人が無駄にニッコニコした顔で、ですか。それは気になりますねぇ」 「気になりますねぇ!」 「おーおー、なら帰ったら副幹部長から何貰ったか聞き出さなけりゃな〜」 その前にお仕事お仕事 → |