「ミリ、眠そうだね」






先程から台所でお弁当をせっせと作っているミリの様子に気付き、身支度を終えたゲンは心配そうに声を掛ける

丁度ダシ巻き卵を作り上げてそれぞれのお弁当に盛り合わせていたミリは、ゲンの言葉を聞いて驚いた様子を見せるも、すぐに「そんな事ないですよ」と苦笑を漏らして作業に戻る

今日も一段と家庭的で美味しそうなお弁当だ






「嘘を吐いてはいけない。私にはお見通しだ。今にもベッドの中で眠りたいと思っているだろう?」

「…波動から読み取りましたね?」

「それもあるけど、そうじゃなくても君が先程から欠伸をしている事は事実だよ」

「…敵いませんね、よく見ていましたね」






手はテキパキと忙しなく動いているが、その表情はやれやれと疲労を浮かばせた


波動と言うのは、相手の位置を把握する事も出来れば感情を読み取る事も可能としている。具体的に波動からどのように感情を汲み取れれるかは波動使いの本人達でしか知り得ない

一体どのようにゲンの目に見えているかは分からないが、ゲンの言葉はまさにミリの図星を付いた。そもそもゲンの言う通り、波動はどうであれ、最近気付けば欠伸を噛み締めている姿を何度か目撃していたのだ。気にならない、という訳にはいかないのだ

ミリの場合は、特に







「やはりミリはゆっくり休んで貰わないといけないね。なにせ家事全てをやってもらっているんだ、朝も一体何時におきているんだい?睡眠が足りないと身体に悪いじゃないか」






この一週間、ミリは誰よりも朝早く起床し、全ての家事をこなしてきてくれた。しかも夜なんて皆と同じ時間帯に就寝しているから、普通だったら睡眠不足で何かしら症状が出てもおかしくはない

ミリには此処でゆっくり寛いでもらいたい気持ちがあった。それはゲンだけではなく、全員が思っている事だった。皆、ミリを大切にしている。大切に思っているからこそ、ちょっとの変化にも気付こうと目を配らせている。なにせミリは自分の事を話さない。もし体調を崩してしまったら、原因は自分達にあるのだ。いくら家事だけとはいえ、家事も一番大変な仕事なのだから


ミリは苦笑を零した






「心配し過ぎですよ、ゲンさん。確かに眠いのは事実ですけど、これくらいどうって事ないですよ」

「しかし…」

「それに、今日はわざわざ幹部長達の方々がこちらに伺ってくれるんです。午後からと聞いていますから、仮眠を取れば済む事ですので」

「………しっかり昼寝をするんだよ。君が倒れてしまったら、私もそうだし皆が心配するんだからね」

「はい」







皆さん過保護ですからね、とミリはクスクスと笑う姿を、ゲンは心配そうに表情を曇らすもミリの言葉に苦笑をした

過保護…そう、まさに自分達は過保護だ

過保護な発言をするのも、人間として当たり前の発言は前提にしといても。自分達は盲目だった頃のミリを知っている。特にゲンは一週間という短い旅仲間であっても、ミリの性格や本質を垣間見ていた。ゲンがミリ限定でお母さんポジションになってしまうのも、前々の行いのせいであれど、心配な事には変わりはない


しかしミリの為とはいえ、いつの間にか定着してしまったお母さんポジションに、男としてちょっぴり心中複雑なゲンだった









「―――…?どうしたの?ゲンがいつになく明後日の方向に顔が向いているけど…」

「…シロナ、いつになくってどういう意味だい…?」

「細かい事は気にしない気にしない。…あら?まあ!今日もとっても美味しそうなお弁当じゃないの!良かったわねーゲン、今日もミリのお手製弁当よ!」

「今日も上手く出来ましたよ〜」

「………………」









ミリは相変わらず笑っていた





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