「コウダイさんコウダイさん、明日はどんなお土産をプレゼントすれば彼女は喜んでくれますかねぇ。やっぱりわざわざこのシンオウに来てくれたからにはとびっきり美味しい地元名産のお菓子を買い尽くしてプレゼントにした方がいいと思いますか?それとも女の子らしい小物や服とか買った方がいいですか?やっぱり迷ってしまいますね〜」 「…ジン、私達はあくまで顔を見せるだけであって、遊びに行く訳ではないんだが」 「それかこの際彼女を連れて観光名所を渡り歩くのもありかも知れませんね。彼女は目が見えていますから、観光を案内するのも楽しくなっていく筈ですからね。連れて行くとすれば、やはりコトブキシティ…いやソノオタウン、それともヨスガシティ……」 「ジン、話を聞け。むしろ戻ってこい」 楽しみなんです ――――――――― ―――――― ―――― ―― シンオウに来てから、数日後 夢を、よく見る 前世の記憶からなる夢ではなく、過去夢でどっかに巡ってしまう夢ではなく、また別の夢を 「―――――………」 この夢を何の夢かと問われれば、「他者からの干渉の夢」と答えた方が妥当だろう 周りは真っ暗だ。己の内に宿る【万人】による恐ろしい闇とはまた違った、暗闇。恐ろしい暗闇だ、しかし【万人】の闇と比べれば、全然 その空間に自分は立っている 気付いたらこの場所に一人で立っていた。夜――いつもの様に家事を終わらせ、手の掛かる彼等の相手をしてから、高級感溢れるベッドの中へ眠りに着いた筈なのに、気付いたらこの暗闇の中にいた。夢の中がこういう暗闇で自分が立っている光景はよくある事なのだが、そう、この夢は他者からの干渉から生まれた夢だ かつて、生と死の狭間にいたナズナさんと夢で干渉出来たのも、こういう暗闇の中だった 《――――…いて―――》 そして毎度の様に、暗闇から静かに木霊する声が―――私の頭に、響いてくる 悲しくて、切なくて、 焦りを含ませたその声は、ひたすらに私に訴え掛けている ―――――…しかし、声は断片的な所でしか聞き取れない為、声の主が誰で、何者かは未だによく分からない… 《―――い――――れ…》 夢でずっと繰り返し見ている光景から、少しだけ分かった事がある 相手は、私を求めている 何故、私なのかは分からない 何故、どの様な望みで私を求めているのかは…今はまだ分からない。声のトーンから読み取って仮定するには、些か不明な点が多い。しかし、そんな事を省いても、わざわざこの私の夢に干渉をしてこれるのだから、それなりに相手に力が存在するという事になる ―――…この【万人】としての私を望むのか、この世界のただの人間として存在する私を望んでいるのか… わざわざ私の夢で現れ、干渉をしてくるんだ。それなりの望みがあってこその、干渉なのだから 《私に――…》 声は、未だに響き渡る 《……――――気付いてくれ》 悲痛な叫びとも取れる嘆きの木霊は、暗闇を震わし、頭の中へ永遠と木霊していく 嗚呼、君は何故泣いているの? 何故、私を求めているの? 何故…――― 「―――…気付いて欲しければ、姿を示しなさい。自分の望みを叶えて欲しければ、私の元に貴方が来なさい。貴方の意図は分からないし、貴方が一体誰なのかも分からない。けれど―――私は、貴方の来訪を首を長くして待っている」 来なさい、私は逃げも隠れもしない 貴方が一体誰で、何故私を求めていたかは、出会ってから話し合いましょう? だから―――もう、この暗闇から出て、光在る場所へ行こう。この暗闇は、正直飽きたから 《―――…私の、…………―――》 もう、声は聞こえなくなった → |