気付いてくれ

気付いてくれ


私の存在に 気付いてくれ


私の 声 に 気付いて くれ





《私に―――――くれ》







気付いてくれ

私に 気付いて く れ …


―――――――――
――――――
――――
――















朝、とても清々しい晴天の空

チュンチュンと耳をくすぐるのは野生の鳥ポケモンの囀り。朝の心地よいカラッとした空気は山の中の空気と同じくらいに気持ちがいい


此処は、リゾートエリアの別荘

そこの庭に、ミリはいた







「――――…んー、ふわぁぁ…」






朝日が登る眩しい太陽を前に、ミリは小さな欠伸を口から漏らす






《ミリ様、寝不足ですか?》

「んー?ううん、大丈夫だよ〜」

《そうとは見えないんだが》

「…」
《大丈夫なのか?》

「大丈夫だよ、いつもこの時間に起きているし、折角三人が戻って来ているんだもん。それに私…皆に会いたかったんだから〜〜!」

《私も主に会いたかった》

《僕もです〜!》

「…」

「久し振り皆ぁああ!」






ミリの前にいるのは、シンオウ地方に到着する前に一度別れた頼もしい仲間達

シンオウにやって来てから約一週間、彼等はこの広い大地を走っていた。全ては、ミリがシンオウの裏に隠れる不穏な動きを捜す為に


そして彼等は帰って来た

大好きな、主の胸の中へ






「あー、もう本当に会いたかったよ〜…蒼華ちゃーん、時杜ちゃーん、刹那ちゃーん…」

「…」(ペシッ

《ミリ様〜♪》

「えへへ〜」

《しかし、そっちはそっちで大変な事になっているんだな。…部屋の中に数人の気配を感じる》

「うーん、ちょっとあってね…」






蒼華がすり寄り、時杜を腕の中に抱き締めているミリに、頭を撫でられながら刹那は言う。ミリは何とも言えない表情で、時杜の身体を解放し、三人を見返す

刹那の言う通り、色々あった。シンオウに来て初日から色々とあり過ぎた。今となればもう慣れた生活だけど、これをどう説明すればいいか正直説明し辛い状況だ

とにかく三匹をシンオウに出しといて良かったと、ミリはつくづく思った。今一緒に住んでいる彼等は、あまりにも自分を束縛し過ぎている。行動したくても出来ない状況だ。三強の時よりも、ぶっちゃけ言って質が悪い






「状況は後日また説明するよ。今、彼等に…君達を見せると大変な事になりそうなの」

《話は聞いてますよ。確かに、僕らの姿は今明かさない方がいいのかもしれません》

「…」
《今、我々の姿は見つかっていない。時杜の力、刹那の力、そして仲間の力があれば人間に見つかる事はまずありえない》

「ゴメンね…。ボールに戻ればいいんだけど、ご飯とかさ、融通が利かない場合がありありだからさ…」

《構わん。それに……主とZが睨んだ通り、やはり敵はシンオウに潜んでいた》

「!!……やっぱり」

《気付いていたか》

「嫌な予感もそうだし…何かこの土地、妙な感じを受けるの。まだ此処から離れていないから分からないけど…やっぱり、そうだったか…」






一週間、ミリに渦巻く嫌な予感は未だに晴れてはいなかった

むしろ、悪化の方向まで向かっていた。口には出せない、口には説明し辛い何かが…ミリにはひしひしと感じていた






《だから、今度は三人で調べを進めようと思っている。私達が揃えば無敵に等しい。主、私達に命令を》

「……分かった。私の代わりにお願い。でも…無茶はしてはいけないよ。もし何かあっても、敵に見つかる真似は決してしてはいけない。いいね?」

《分かっている。その時はインジブルやテレポート、時杜の力で脱出する》

《それにミリ様のお力の加護もあります。無茶は絶対にしません、必ず》

「…」
《再会した仲間も主人の命令を待っている。何かあったら仲間に頼れ。仲間は主人の"声"でいつでも姿を現わす》

「うん。少し落ち着いたら私も動き出すつもりでいるから、その時再会しよう。情報は後々聞くから、私の"声"には耳を澄ましといてね」

「…」(頷
《分かりました》
《了解した》






身動きが取れないミリにとって、三匹の行動は重要な鍵になっていく

三匹のそれぞれの力、そしてミリの加護をあれば人間に捕まる心配は無い。それは前提にしても、彼等は自分の代わりの"眼"になってくれる。ミリの眼の代わりに、彼等は隅々までシンオウを映してくれる。彼等が足となり、シンオウを走ってくれる





三匹の頭をそれぞれ撫でながら、お互いに頷く

時杜がフワリと回転すれば、三匹の後ろには紅い空間が開かれた。一週間振りに見た、【時と空間】を司る時杜の力。紅い空間を前に、ミリは笑った







「―――いってらっしゃい」













紅い空間は、名残を残してミリの前から姿を消した






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