サカキとダークライの元に現れたのはマツバとミナキだった

遠くから走ってきたのか、二人は息を切らしている。二人は休む間も無くサカキとダークライの間に入ろうと、そしてダークライの腕に抱かれるイーブイに手を伸ばそうとした

しかし瞬時にダークライはサカキから離れ、影の中に潜り込んでしまう。空振りをしたミナキは悪態を付くも、マツバ同様にサカキに対し、戦闘態勢に入る

勿論サカキも突然現れた乱入者相手に戦闘態勢に入った。サカキを守ろうとスピアーは自身の針を振り上げ、相手に威嚇を掛ける

ピンと張る、緊張感


ズズズッ、とダークライは影から頭部だけを現した






《…何者だ。何故、この二匹を渡してはならないと言う?》

「初めましてだな、ダークライ。いや、闇夜と呼ばせてもらおう。私の名はミナキ。そして隣はエンジュジムリーダーの、」

「マツバだ。僕達は探していた。君の腕に眠る、その子達をね」

《!―――そうか、お前達がミナキとマツバ、か…会えてよかった。ならもう一人…カツラと名乗る者は、》

「僕達の仲間だ。案内しよう。こちらに来るんだ、闇夜。すぐにその子達を手当てしよう」






緊張感は、一瞬

しかし二人はすぐにでもダークライを歓迎し、この場から早々に去ろうとしている。サカキから、離れる様に

勿論思い通りにさせるサカキではない






「ちょっと待て。お前達はミリが一体何があったのかは知っているのか?」

「………これは驚いた。知っていて闇夜に近付いてきたものとばかりに思っていた」

「何の事だ。闇夜とは今さっき会ったばかりだ。まだ何も聞けていないんだ、俺にも知る権利があるはずだ。……俺もお前達に着いて行く」

「貴方の事は知っている。元トキワジムリーダーでもあり、…ロケット団首領であるサカキさん、だろう?悪いけど、貴方を連れていくわけにはいかない」

「何故だ。…と、言いたいが…もしやロケット団が関わっているのか?」

「「………」」

「……無言は肯定と取らせてもらおう。だったら尚更俺も共に着いて行く。…無理矢理にでもな」






何故ロケット団が関係しているのかは分からない。首領である自分を差し置いて、知らずに動いていたとも考えられる。しかし、何故ミリに危険が?ロケット団がミリに牙を向ける事は―――ありえないというのに



強功姿勢を取ろうとするサカキの意図に気付いたのか、マツバとミナキは腰からボールを取り出した

繰り出したのは彼等主力ポケモンのゲンガーとスリーパーだった。ゲンガーはニタニタと舌を出し、スリーパーも怪しくコインを揺らしながら戦闘態勢に入った。対峙するスピアーも鋭い眼光と武器を掲げ、いつでも攻撃可能態勢に入った






「残念だが、お前を連れていくわけにはいかない」

「サカキさん、貴方はこのまま何も見なかった事にしてもらいたい」

「断る。第一、お前達はミリにとってどういう存在だ?……闇夜、お前はその二人に聞かなくてもいいのか?俺には聞いといて二人には聞かないとなると、不公平ではないか?」

《確かに。では改めて二人に問おう。主にとってどういう関係性なのかを》

「決まっている。僕達とミリちゃんは家族同然の仲間だ」

「……家族同然、だと?」

「ロケット団首領ならば、ナズナさんの名は分かるよな?―――当然、ナズナさんも私達にとって家族同然であり、互いにミリ姫の為に動き始めた仲間でもある」

「…人を信用しても信頼しなかったミリちゃんが、僕達を頼ってきた。君ならこの意味、分かってくれるよね?闇夜」

《そうだな。十分に値する立派な理由だ》







最北の土地、シンオウ地方

行方不明になった【盲目の聖蝶姫】

【盲目の聖蝶姫】【氷の女王】


酷似している、ミリの姿





「――――……俺はミリさんに生かされた身、いつか彼女に恩を返したい。あの笑顔が守れるなら、俺は…俺のやり方で、守ってやりたい」









「フッ…なるほど。アイツから連絡が来なくなった理由は…そういう事か」

「関係ないお前を巻き込ませるわけにはいかない。尚且、ロケット団首領なら尚更だ」

「だったらそれこそ俺が着いて行く理由になるはずだ」

「何故、」

「俺にとって、ミリは血の繋がらない家族だ。息子の姉代わりとして世話になった事だってある。シンオウに行く時も報告に来てくれたくらいだ。それにアイツは俺が、ロケット団の首領と知っていても変わらず接してくれた」

「「!!!!」」






本日二度目になってしまったが、サカキは嘘偽りのなく正直に二人に言ってやった。サカキとミリに接点があり、まさかそちらも家族だと言ってくるとは思わなかった二人は、目を張ってサカキを見返した

予想外だった答え。それはお互い様だった。三人と、三匹の緊張感がピークに達し、張り詰めた空気が流れた




――――動いたのは、ダークライだった







《……主が信用した者達が相手なら、私はどちらでも構わない。この子達の手当てをしてくれるなら、なんでもいい》

「…………ミナキ、」

「……待っていろ。今カツラさんに連絡してくる。まずは向こうの承諾を得てからだ」

「なら連絡が来る前にその二匹の応急処置だけでもさせてくれ。…生憎今、きずぐすりしか持っていないが…」

「こちらも持参してきた。手伝おう」











彼等を繋ぐのは、ミリの存在





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