「ビール禁止って言ったのに、父さんめ…さっそくビール買ってきてるし。この俺の目を欺くなんて父さんもまだまだだな。マニューラ、よくやった」

「ニャッ」

「…姉さんが口酸っぱく父さんが酒を飲む事を阻止する様にと言っていたが……ビールも炭酸、コーラと同様に振りまくったらどうなるのか……試してみるのもアリか。マニューラ、」

「ニャッ」

「振るぞ、ビールを」

「ニャッ!」



ぶんぶんぶんぶんぶんぶん

しゃかしゃかしゃかしゃか







沢山振りまくったビールは静かに元の場所に戻されたのだった



――――――――
―――――
――










千里眼を発動し続けて一週間を過ぎた頃、ようやくシンオウ全土を全て視終わる事が出来た。やはりシンオウは広い。普段ジョウト中心に範囲を広げていたにしても、シンオウの広さには到底勝てるものではない。しかも今回はたとえカントーのふたごじまからだとしても、カントーもシンオウもかなりの距離はある。お陰様で随分と時間が掛かってしまった。状況が状況だったとはいえ、今度から千里眼は出張してでも現地から発動するに限る。マツバはつくづくそう思うばかり

結果的には自分達の探す目的のモノは見つからなかった。似たようなポケモンがいたにしても、自分達が探すポケモンは色違い。あんなに分かりやすい色をした目的のモノを、けして間違えるものか

シンオウには居なかった。見つからなかった。となると、彼等もまた敵の手に―――否、そんな最悪な結果は抜きにして、マツバは次の行動に移す事になる



それは、シンオウ以外の地方への千里眼での捜索だ



確証は無かった。せめてものの悪足掻き、細やかな望み。数多ある地方の場所を千里眼で視るのはかなりの酷でしかなかったが、マツバは衝動のままに、彼女を救いたい一心で千里眼を発動した

まずはどの地方にすべきか。シンオウから近い地方から南に向けて順々に視ていくべきか。考えている暇はマツバにはない。ほぼ闇雲といってもいい勢いで、マツバが選んだのは―――ジョウト地方からだった

何故ジョウト地方を選んだのかは、本人さえも分からない。その場の勢いといったらそれまでだ。少なくてもジョウトだったらマツバの許容範囲内、早く視る事が可能故に敢えてジョウトから選んだのだろう

見慣れた光景、自分の故郷―――

マツバの眼はくまなくジョウト地方を映す










偶然か、奇跡かは、神のみぞ知る


運良くマツバの眼には、ある場所が映し出された







「―――――!!!」





夕焼け広がる空の下

一人の黒ずくめの男に、一匹のスピアー

対面するのは黒い存在

黒い存在に抱かれていたのは、ずっと自分達が探し求めていた、大切な――――




マツバの顔が青くなった








「ミ、ナキ…ミナキはそこに、いるか…?」

「?あぁ、いるぞ。…どうしたマツバ、顔が青いぞ」

「………ミナキ、テレポートが出来るポケモンを出してくれ。なんでもいい、今すぐに!!







―――あの子達を見つけたんだ!!!!」







間に合ってくれ

あの男の手に、渡ってはいけない












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