此処は、ジョウト地方にある

とある、秘密基地の中―――






「―――父さん、ナナシマに行ってきてもいいか?」

「…ナナシマに?」





夕方、秘密基地に帰って来たシルバーが

早々に、サカキに言った






「前に話した…ミリ姉さんとは別の、俺の姉代わりだった人がいるのは知っているよな」

「あぁ」

「その姉さんの両親が遊びに来てほしいと誘われた。他の皆と一緒にな。皆は行くと返事をしていたが、俺には父さんがいる。返事は保留にしてもらっているが…もし父さんがよければ、」

「お前のしたいようにすればいい。…行ってこい、シルバー。その姉代わりの者によろしく伝えておいてくれ」

「!…ありがとう、父さん。…ブルー姉さんに連絡してくる」

「あぁ」





あまり表に感情を出さないシルバーだが、サカキの承諾に嬉しそうに早々と部屋を後にする

皆、とはきっとレッドを含めたあの図鑑所有者達だろう。自分達の行く手を阻み、時には共闘した子供達。本来だったら快くは思わない相手だが、今は違う。自分はロケット団のボスではなく一人の父親、息子のやりたい事を見守る立場にある

それにシルバーは自分よりもこちらを優先する事がある。気持ちは有り難いが、こちらに気にする事無く有意義に羽を伸ばしてほしい。いい父親想いの息子、とは聞きはいいが、だからって介護で束縛はしたくないのが本音。まだまだ介護される年齢じゃあるまいし


数分後、シルバーが部屋に戻って来た






「連絡してきた」

「そうか」

「今から行ってくる」

「……えらい急だな」

「善は急げ、と急かされた。便もそれしかないらしいから…父さん、しっかり栄養とバランスのいいご飯を食べるんだよ。ミリ姉さんがいないからってビールを飲まない様に。偏食も禁止だから」

「………最後の最後に耳が痛いな」





しっかり父親に釘をさしておく事を忘れないシルバーは、今度は荷造りの為にまた早々と部屋から出て行く

少々図星を突かれたサカキ。実は隠してビールを買ってあったんだと言ったものなら取り上げられるのがオチ。一缶だけなら問題ないのに。とりあえずシルバーが行ったらこっそり呑むか、とそんな事を考えていたりいなかったり






「……ククッ、誰の影響やら」





シルバーの後ろ姿を眺めながら、サカキは喉の奥で小さく笑う





「ちょっとサカキさん!?なんじゃこのビール缶の山は!飲み過ぎでしょアンタ!アルコール依存症か!……俺だけじゃなくジムトレーナーも飲んでいた?いやいやいや、回りを巻き込んでもダメなものはダメ!!こんな父親シルバーに見せられない!!……ってちょっとサカキさーん!?何処に行くのかなー!?…シルバーのところに行っちゃダメだってこの酔っ払いいいいい!」




ゴィィィィンッッ!









「アイツがシンオウに行ってから軽く一ヶ月か……無事にナズナと合流出来たのだろうか」





一ヶ月もあればあの広いシンオウの何処かにいるであろうかつての仲間の元に辿り着けているはず。ミリもそうだし、手持ちのポケモン達なら簡単に再会を果たす事が出来ただろう。シンオウに着いた、という連絡は来たがそれ以降の連絡は今のところ無い。きっと楽しんでいるに違いない

ナズナの奴も楽しんでいるだろう。真面目で勤勉で型にハマっている元科学者、研究が彼女といってもいいナズナにはミリの存在はいい刺激になる

それと、恋人という存在にも

…お父さんは認めませんがな






「ミリ…お前に恋人がいるって本当か?」

「ゴフッッッ!!!!!(紅茶)……ケホッ、ゲホッ!………やっだーサカキさん貴方なに突然変な事を聞くンデスカー!びっくりして吹き出しちゃったじゃないですかー!」

「フッ、ナズナから話は聞いたぞ。今更俺に隠したところで意味は無い」

「……ナズナさんめェェェ覚えてやがれ…!(わなわな)」

「その恋人、ナズナが極力避けようとしていたトレーナーだろ?名は確か白銀の麗皇。実物は見た事無いが…相当の切れ者だと噂では聞いている」

「……………、回りには言っていない事なのでサカキさんも秘密にしといて下さい。勿論シルバーにも。…その、恥ずかしくて……ハハハ」

「それは構わないが………条件としてミリ、近々こちらにソイツを連れてこい」

「え、どうして」

「父親として奴とバトルをし、お前に相応しい男かどうか見定める」

「大袈裟!」














「父さん」

「準備が出来たか?」

「うん」

「外まで見送る」

「分かった」








父さんは認めません






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