何かが、いた 暗い暗い空間の中で、ソレはいた 《私に―――い――くれ》 暗い暗い空間で ソレは、悲痛に訴えていた (君は、誰?) ―――――――――――― ―――――――― ―――― ― カランカラン… 何処かの喫茶店の扉の鈴が、軽やかに鳴り響く 「いらっしゃいませ。…………あぁ、貴方でしたか」 カウンターに佇むバーテンダー 来客者に、薄く笑う 「いつもので宜しいですね?……あぁ、お代は要りませんよ。って…元々払うつもりはありませんよね」 薄く笑いながら、バーテンダーの男は黒斑眼鏡の下で、来客を見写す 男がカウンター席に座った バーテンダーの男は手際良く客に水を置き、コーヒーの準備に取り掛かる コポコポコポ…、と心地よい音と香ばしい香りが鼻をくすぐった 「しかし珍しいですね。貴方が此所の喫茶店に足をお運びになられるなんて」 出来上がったコーヒーを提供しながら、バーテンダーの男は言う 滑らかな陶器の中に収まるコーヒーから、香ばしい香りと湯気がたっていく カチャリ、とカップの取手を持ち、コーヒーを口に含める客を見ながらバーテンダーの男は薄く笑った → |