セキの葬式を終わらせ、無事に帰宅したゴウキとアンナを出迎えたレンとナズナとゴクリン達。二人が帰ってきてからまた数時間が経過し、夕飯を終えた時刻となった


三人は今、研究所に向かって歩を進めていた






「ハッ………お前も色々と苦労しているんだな、フッ」

「ククッ…本当にお前、苦労してんだな。ハハッ」

「……それ以上言ってくれると後で後悔する事となろう。むしろ今から殴る。殴らせろ」

「ククッ…どうやら失言だったらしいな。だから拳を下ろせ、暴力反対」

「フッ、触らぬ神になんとやら、だな。ハッ!」

「白皇貴様覚悟しろ」

「やれるもんならやってみろ」

「……お前ら此処で乱闘起こすなら研究所に入れてやらんぞ」

「「「こぉ」」」






レンとナズナが噴き出しそうに笑いを噛み殺す姿をゴウキがひくりと青筋を立てるのも、原因は食卓に起きた。まぁ説明しなくても大方察しがつくかもしれないが、敢えて説明させてもらおう。ご飯を囲む中、アンナがセキの弟に「おじさん」と呼ばれていた事を暴露してしまったのだ。お陰様で二人の腹筋は崩壊寸前、笑いを堪える事に必死で食事どころではなかった

年齢の割りに老けて見えるらしい自分の雰囲気に、やはりゴウキも気にしていた訳で。キオに改めて自分の年齢を教え込むゴウキの目は、恐怖を覚える程に据わっていたとアンナ同様キオの両親も後に語った(←)

なんというか、大人気ない

むしろ、不憫過ぎて憐れな…

此処で一つ判明したのは、ゴウキに年齢の話はタブーだと言う事。珍しく青筋を立て、拳を握るゴウキに同情するばかりだ






「……フン、まあいい。少々気に食わないが、今は目の前の事に専念するのみ。気に食わないが」

「(二度も言ったな…)」

「(厳格で真面目な性格が容姿に表われて老けている様に見える事には同情するしかないな…)」

「セキの無念を晴らす為にも、俺はなんとしてでもこの事件の真相を明らかにしてみせる。…絶対にな」

「…そうだな」

「あぁ」






セキが死んだ事で、自分達の中で敵の存在は確定した

未だ表に明らかにされていない奴等の存在。奴等のせいで無念のままに命を落とした者達の為にも事件を解決したいと思う気持ちは、ゴウキだけではない。レンもナズナも、同じ気持ちで事件解明の為に此処にいる

因果か、因縁か、三人にとって奴等は自分の敵<かたき>だ。奴等を自分の手で始末する。自分達の無念を、犠牲になった皆の無念を晴らす為に








「(セキ…待っていろ。俺が必ず解決してやるからな)」









無念に散ってしまった命


けして、無駄にはしない








ゴウキは研究所の扉を叩いたのだった






* * * * * *


















シンオウ地方の何処かにある、霧が立ち込めた沈黙の場所

此処は人間が立ち入る事が出来ない、ポケモンだけしか足を踏み入れないその場所に、三つの光があった







「…」
《―――…なるほどな》

《そっか、そっちも…》

《あぁ》







水色と、紅色と、緑色

淡く綺麗な光の名残を残しながら、彼等は湖の上に立っていた








「…」
《やはり主人の読んだ通りだが、》

《うん、これは…》

《少々、厄介な事になりそうだな》








シンオウ地方を走り、翔び、淡い光の名残を残してきた三匹

彼等は、シンオウをどのように見てきたのだろうか


鋭い眼は疑問と疑惑を見抜き、ただならぬ様子に警戒をするばかり


















「…」
《これは被害が拡大する前に、早急に手を打たねばならん》

《そうだね…僕らの仲間の為にも、ミリ様とZさんの為にもね》

《それに此処はナズナ達が暮らしている地方でもある。奴等の為にも、シンオウに住む人間の為にも―――…》








不穏な動きなるものは、未だ姿を見せない


奴等は、一体何者だ?

奴等は、何故このような事をするのか








奴等はまだ、動かない

今はまだ、様子見だ




此処に眠る仲間の為にも

この土地に住むポケモンの為に、

そして、此処に住む人間や彼等の為にも














《全ては我が主様の為に、慈悲なる安寧を与える為に―――――皆も、力を貸してくれるよね?》











紅い光に答える様に、今までそこに居なかったはずのポケモン達が、姿を現わす

あるはずもなかったからソコに空間が開かれ、空間から次々と現れた、数多のポケモン




全てを造ったとされる創造主

空間を司る王

時を司る王

反転世界の裏の王

三つの泉を守る、三匹の精霊

三日月を象徴する化身…







現れたポケモンは全て、水色の光が自身の足で走り、再会を果たした昔の仲間にその子孫達

彼等もまた、シンオウの為、そして我が主の為に集った仲間達―――…










「…」
《今はまだ、動かぬ時》

《全ては、ミリ様の意向のままに》

《その間、我々は身を潜め、沈黙を守ろう》



























霧が立ち込める沈黙の場所


湖の上、跳ねる水音




三つの光は名残を残し、

神と呼ばれしポケモン達の姿は、その姿を忽然と姿を消したのだった―――…








(ポケモン達も、動き出した)



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