「――――…無事にミッションコンプリートをしましたよ。えぇ、彼ですよ。あの時仕留め損ねた、あの事件を知る最後の生き残りの彼を、ね。わざわざアレをするまでもありませんでしたよ。証拠になるものは全てこちらで排除しました。事故として、判断せざるおえないのでしょう。滑稽な話です」 真っ暗な空を飛ぶ、黒い影 「中々楽しませて頂きましたよ。…えぇ、報酬は半分で構いませんよ。私は此処で、ゆっくり営業をさせて頂ければ十分ですし―――貴方の元へ共に歩めるのなら、お金は関係ありませんから」 黒い影は、笑った ――――――――― ―――――― ――― ― あれから時が経ち、司法解剖を執り行われた後、その日の内にセキの通夜が行われ、次の日の葬式も無事に終わりを告げた 此処は、火葬場 人里離れたお寺の敷地内にある火葬場に、セキの死を悼む親戚や仲間達が集っていた。煙突から吹き出る煙を見上げる者、未だ涙を流す者など、様々に そこには勿論、ゴウキやアンナも参列していた 「…呆気ないものだよ。記憶にはまだセキがいるのに…もう骨になっちまったよ。あの人やユリ達と同じだね」 「………あぁ」 喪服姿に身を包むゴウキは、ただただ煙突からもくもくと出ていく煙を見上げるしかない ゴウキの隣りにはアンナの他にも、フライゴンがボールから出ていた。サングラスの形をした目は、ただただ煙を見上げているだけだった。ゴウキは悲しみにくれるフライゴンを、その背中を撫でてやる事しか出来なかった 「弟のあの子も可哀相ね…まだ死を知らないままで、セキがいなくなっちゃうんだから」 「……………」 アンナの視線の先を辿ると、セキのご家族の姿が目に入った 母親は傷心しながらただ煙突を見上げていた。まだ5歳になる弟は、父親の手に引かれながら、何も分からずといった様子で煙突を見上げていた 元々セキは所謂母子家庭だった。六年前、母が再婚した事で自分に弟が出来た事を嬉しそうに自慢していた。シホウイン道場に入門して警察になったキッカケはゴウキだったかもしれないが、セキはセキなりに家族を守ろうとしていた。それは口に出さなくても、気を見れば十分な事で ゴウキはポケットからボールを二つ取り出すと、フライゴンを引き連れてセキの家族の元へ歩みを進める。ゴウキがこちらに来る姿に気付いたご家族は、慌てこちらに頭を下げてきたので、頭を上げてもらいながらセキの弟の前にしゃがんだ キョトーンとした顔をしたセキの弟。素直そうな顔はやはり兄弟だった。「おじさん、だーれ?」と頭を傾げる弟に、ゴウキは(色んな意味で心中複雑になりながらも)モンスターボールを弟の手の平に乗せてやった 「!あ、これボール!」 「お前、名は何と言うんだ?」 「ボクね、キオっていうの!ねえねえおじさん、このボールは誰のボール?」 「(おじさん…)一つは、お前の兄貴がお前の為に捕まえたポケモンが入っている。これを、投げてみろ」 「うん!」 嬉しそうに手にしたボールの内の一つを、キオは意気揚々に開閉ボタンを押して軽く投げた ポン!と出てきたのはポケモンはゴマゾウだった。ゴマゾウを見たキオはパァアアッと顔を輝かした 「このポケモンしってるよ!ゴマゾウだよね?わーゴマゾウだー!」 「ゴママ〜」 「あのねあのね、おにーちゃんドンファン持っているんだよ!速くて強くてかっこいいんだよ!だからキオ、ゴマゾウをしっているんだよ!すごいでしょ!」 「そうだな」 「これ、おにーちゃんがボクの為に捕まえてくれたの?」 「あぁ、兄貴がお前の為に捕まえたんだ。ゆくゆくお前が兄貴と同じドンファンを持てる様にな。大事にするんだぞ」 「うん!よろしくねゴマゾウ!」 「ゴマァ!」 ゴマゾウに抱き着き仲良くする姿を見ながら、ゴウキの表には小さく笑みが浮かぶ セキのパソコンを調べていたら、ゴマゾウがいた。まだまだレベルの低いゴマゾウは卵から生まれたばかりで、ゴウキはすぐに理解した。あぁ、このポケモンは弟にあげるプレゼントなのだと それじゃこのボールはなにかな?とキオはゴマゾウを抱き締めながら、ボールをポイッと投げた ポン!と、ポケモンが現れた 「こほぉー」 「これって……ゴクリン?」 「そうだ、ゴクリンだ」 「えっと…」 「アイツもよくこんな顔をしていた」 「ゴマゾウだったらポチエナじゃ…」 「ゴクリンは癒しポケモンだ(と思う)。見ろ、この気の抜けた様な顔を。アイツも道場に来た時はよくゴクリンと遊んでいた。お前も何か辛い事があったらコイツの顔を見て癒されろ」 「えっと、その…ありがとうおじさん。よろしくね、ゴクリン!」 「こぉ!」 「(あの子…あんな所までゴクリン配って…何してんだか…)」 アンナは心中とても微妙だった → |