三人の声とパソコンが発動している無機質な音以外静寂だった空間に、ポケギアの着信音が鳴り響いた それはゴウキのポケギアだった。タイミング良いのか悪いのか、二対一の乱闘ならぬ冷戦を繰り広げ様とした矢先だった。ゴウキは構わずポケギアを手にした 「?こんな時間に誰だ…?」 今、時刻は当に深夜を過ぎている 普通なら全員寝静まってもいい時間帯でもある。自分達は今、調べものの関係でこうして徹夜を覚悟で起きているが、他の人間はそうとはいかない。本来、この時間帯に連絡して来る事事態非常識な筈なのに 俺が寝ていたらどうするんだ、そう思いながら隣にいる二人に視線を向ける 「おいナズナ、お前妬いてんのか?ん?俺とミリがラブラブしているから妬いてんだろ?ハッ、素直じゃねーなァ…天下の鴉も嫉妬なんざ珍しい事この上ないぜ」 「フッ、世迷い言を。お前とミリさんがくっつく事は既に先詠みで見抜いていた。嫉妬だと?笑える話だ。これでも俺はお前達の仲は応援しているつもりなんだけどな」 「どうだか。よく白々と言えたもんだぜ」 「事実だ。ま、ミリさんを手放す事があれば俺達が黙ってはいないがな」 「ハッ、それこそ戯言だな。俺がミリを手放す?フッ、冗談はよせ。一生手放すつもりはねーよ。……たとえゼルジースや他の奴等に奪われても、力ずくでも取り返してやるぜ」 「フッ、そのしぶとい執着に嫌がって逃げない事を祈っている。何せお前は馬鹿で過保護で欠乏症なんだからな。よくそれでいて平然としていられるものだ」 「ハハッ、誰かさん達のせいで引き離された事分かってんのか?あ?」 「知らんな。しかしそのお陰でお前はその頭に生やした幸せの花を極寒で冷やす事が出来たんだ。実行したゴウキには精々感謝するといい。きっとその間、ミリさんは羽を広げていたに違いない。過保護な恋人を持つミリさんも大変だな」 「ふざけろ。お前らのせいでミリに悪い虫やストーカーが纏わりつく事になっちまったじゃねーか。いくらジムリーダー達が手を回してくれていたとはいえ、胸糞悪い事には変わりはないんだよ」 「その事に関しては同意見だが、だからこそお前は過保護だと言われるんだ」 「恋人として当たり前の主張だ。つーか俺にどうこう言うよりもテメェは自分の事を考えた方がいいんじゃないか?そろそろアンナさんを安心させた方がいいと思うんがだなぁ?ん?」 「……相手がミリさんでも構わなかったら俺は全然構わないんだがな。むしろ有り難い事この上ない」 「構うわゴルァ。寝言は寝て言えふざけんな」 バチバチバチバチバチ… 「………………」 どうやらあちらはあちらで熱くなっているらしい ゴウキだとすぐに拳が出る大乱闘が起きるが、なるほど、相手がナズナだと口論という名の冷戦に勃発する事が分かった。嘲笑を交えた視線と冷ややかな視線が花火を散らしている。回りの温度が低く感じるのは気のせいだと思いたい まぁそんな事よりも 「…?…アイツからか」 ゴウキは未だに鳴り響くポケギアの液晶画面を開き、着信相手の文字を見た そこに表示された番号と名前を見て、ゴウキは片眉を上げた。相手は自分のかつての門下生で、今はもう卒業して鑑識として腕を振るっている警察の人間だった 何故、こんな時間帯に電話を? そもそもゴウキは、警察の中に混じって事件解決に勤しむ姿を何度か目撃されているが、だからと言ってゴウキが警察の人間で無ければ、警察として常勤している訳ではない。給料なんて以ての他だ。つまりゴウキは何も縛られていないのだ。だからこんな時間帯に連絡を受ける義務はそもそも存在しない 特別な時にしか連絡はしない、それは向こうも認知している。もしくは調査に手伝っていた事件絡みなら、この時間帯で連絡を受けるのは分かるのだが…… 何故か一瞬、嫌な予感がした ピッ… 「……俺だ。どうした、」 『―――あぁ!ゴウキさん良かった…!すみませんこんな時間に不謹慎なのは重々承知なんですが、た、大変なんです!じ、実は…―――』 「――――…なん、だと…?」 (予感は的中する事になった) |