「…ナズナ、このまま発生をされていけば、ポケモンはどうなる?」






ゴウキが警察庁や刑務所の方へ連絡を掛けに席を外している中、事件簿を読み耽っていたレンは不意にそんな事をナズナに問い掛けた

キーボードを絶え間なく打ち続け、その鋭い眼は画面を注視していたナズナはレンの質問にピタリと手を止める。視線だけ動かしレンをチラ見した後、画面に視線を戻して口を開く






「この怪電波がどんな働きをするかはまた詳しく調べていかないと分からないが…そうだな、『彼岸花』の怪電波がそのまま使われていれば、ポケモン達は奇怪な行動をし始める。微量の電波を受け続けていけば、それなりの反動があるかもしれない」






キーボードを打ち始めながら、ナズナは言う

科学者としてロケット団が非合法で開発していた様々な機械製造に立ち会い、実際に性能や効果をその目で見続けてきたナズナ。色々と欠陥や不都合があって殆どが失敗に終わっていったものばかりだったが、それはもう過去の話。最先端の技術を施された性能機器を使用出来る時代となれば、昔完成出来なかった機械は容易く完成出来たに違いない

当時、ハッキングをした中で『彼岸花』が怪電波装置を製造した設計図を拝見させてもらったが、確かにアレは素晴らしいものだった。完成して本当に装置が発動していたら、どうなっていたか…。しかし設計図は良くても装置を支える大事な部品が成り立っていなければ話にならない。だからハッキングで簡単に狂わせる事が出来たのだ



だが、次は同じ手が通用するとは思えない。電波発生地点が一つだけではなく、数ヶ所まで及んでいるのだ。奴等の本拠地がどうこうより、この発生を止めてやらないともしかしたら大変な事になりかねない






「……奇怪な行動、か。やはりな」

「やはり?」






意味深に言うレンに、ナズナは片眉を上げる






「一体それはどういう事だ?」

「……最近、野生のポケモンが奇怪な行動をしているのは知っているな?」

「あぁ…ナナカマド博士が言っていたアレか。様子がおかしいから警戒しろって言っていたヤツだな。野生のポケモンが涙を流していたとか、そういう話か」






ナズナが博士になった時に、博士同士の会合で様々な専門の博士がいる中で、ナナカマド博士と顔を合わす事になった

特別会話はしなかったが、ナナカマド博士が自分達に最近のポケモンの様子に注意してくれと言われていたのだ。白い髭を生やし風格のある姿で全員の前で話していたナナカマド博士を思い出しながら、ナズナはレンの問い掛けに答えた






「フッ…俺はポケモンの声が聞こえるんでな、アイツ等が一体何でそんな行動をしでかしているかなんて声を聞けばすぐに分かる」






そう、レンはポケモンの声が分かる

聖地から授かった能力。誰にも語られなかったレンのもう一つの力。一ヶ月前、ふたごじまで語られた、隠された力


ポケモンの声が聞ける力


その力は、ポケモンを扱う人間にとって、誰もが欲しがる最高の力。博士達が何年掛けて調べたポケモンの様子なんて、レンにとって造作もない事なのだ






「ほう、それは麗皇ならではの事だな。実際にその能力には度々世話になっているし、声が聞こえればポケモンの扱いに苦労はしない」

「まぁな。だが他の奴等にとって普段聞かない声を聞く様なものだからな、旅していた時の朝はポッポの囀りがポッポの喧嘩声で煩かったもんだ。お前で言えば、研究材料のポケモンの悲痛な鳴き声が悲痛な叫び声に変わるって訳だ。…流石に俺はそんな叫びは勘弁だがな」

「……便利な能力も大変なんだな」






聖地に行って先詠みの、最も残酷な力を手に入れたナズナであったが、その力も得ていいものじゃないんだな、と遠い目で何処かを見るレンをみてそう思うしかない

チュンチュンとした朝を知らせるポッポの囀りが、ポッポの喧嘩で目覚められたとか、なんつー微妙な。低血圧気味なナズナにとって、ポッポの喧嘩声で起こされたらたまったもんじゃない

今となればポケモンと人間との声を区別しているから大丈夫だとレンは言うが、少しレンに同情したナズナだった






「…なら、ポケモン達はなんと?」

「俺の読み通り、アイツ等は盲目の聖蝶姫を求めていた」

「!」

「ま、その事についてはアイツ等と集会を開いた際に説明するとして、だ。……それらと別に、ポケモン達が既に妙な行動をし始めている」

「…それは?」

「野生のポケモンが次々と姿を眩ませている」

「!!」









レンの衝撃の告白に、ナズナは画面から目を離し、その顔を驚愕の色に染めた






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