「彼岸花がグレン島にか?」

「あぁ、数は少なかったが綺麗に咲いていたぜ」

「そうか、あのグレン島にも花が咲いたのか…カツラには良い知らせだな」

「ほう、彼岸花か。…………彼岸花は全草有毒で、特に鱗茎にアルカロイド始めとしたはリコリン、ガランタミン、セキサニン、ホモリコリンなど多く含む有毒植物だ。誤食した場合は吐き気や下痢、酷い場合には中枢神経の麻痺を起こして死に至るものだ。鱗茎は澱粉に蓄積され、有毒成分であるリコリンは水溶性であるため長時間水に曝せば無効化が可能とされている。そもそもリコリンという成分はアルカロイドの一種で、催吐作用があり、多量に摂取してしまうと死亡してしまう。彼岸花を口にして出る症状がリコリンと酷似しているのも成分が含まれているからだ。それから……」

「おいそこの科学者。人の彼岸花像を崩すな」













「潰し損ねた犯罪組織『彼岸花』……そもそも彼岸花という花は、」

「「二度まで言うな」」






語り出したら止まらない


――――――――
―――――
―――









一般人の人は知るはずも無い、冷たい気温が肌を刺す…静寂の糸が張る牢獄の世界

犯罪を犯し、罪を問われ、罪を背負った者が集う逃れられない檻。自由と尊厳を奪われた、犯罪者が身を潜める永遠の箱庭







此処はシンオウ地方の何処かにある、とある刑務所









「――――…あぁ、シラクモ受刑者の事なら覚えてますよ。えぇ、なにせ彼はあのシンオウ怪電波未遂事件の『彼岸花』のリーダーなんですからねぇ。よくもまぁあんなけったいな事をしでかしてくれますよね。鴉が居なかったら今頃どうなっていたものやら……今となれば過去の話ですが」






刑務所の中にある、警務室

真夜中にも関わらず、未だ仕事を全うする者がそこにいた。彼の役割は監視員―――目の前にある数ある監視カメラ映像を前に、彼は外線電話を片手に悠長に話をしていた







「しかし、意外ですよ。あなたが突然14年前の事件を聞き出しているなんて。14年前はまだシホウイン道場がこっちに来ていなかった時でしたよね?…それに、これも噂で聞いてますよ?リーグの盗難事件、あなたが率先しているって。……あぁ、安心して下さい。まだ他の人間は知らされてませんよ。まぁ、あなただから大丈夫だと思いますが無理はならないで下さいね。……おやおや、どうやら心配は無用の様ですね。ハハッ」






沈黙に静まり返った警務室の中に、男の声が含み笑いと共に木霊する

警務室の中には男しか居なかった。他の人間が居ないのは、巡回中で不在な為か、男が夜勤に入り交替して一人勤務か。どの道にしろ、警務室であろうが刑務所であろうが何処も、静かだ






「しかし、シラクモねぇ……あなたが何でこんな事件を調べ直しているかは分かりませんが、残念ながらあなたが欲しい情報は手に入らない様ですよ









――――死にましたよ、彼。誰にも看取られる事もなく、一人であの世に行ってしまいましたよ」






トサッ、と男が持っていた資料が白い机の上に置かれる


その資料は、シラクモの事が書かれた過去の受刑者記録だった







「死因は脳出血死。体調に異変は無かったんですが、突然起こしてしまったみたいで。……はい。私達が行く前にはもう手遅れでして…69歳でこの世を去りました。身寄りは無かったので、こちらで埋葬しました。……えぇ、遺体は間違いなくシラクモの者です。DNAも血液も合致してます。…………はい、えぇ、分かりました。当時の死因記録をそちらにFAXで送ります。他にも団員だった者の記録も付けておきますね」







そう言い、男は手際良く資料を出していく

シラクモの事が記された記録から始まり、次々とファイリングされた資料の中から、十人以上の記録が姿を現わす


様々な顔写真に、事細かく記された個人情報に、刑務所での日常を記したモノ等々。資料の中から続々と顔を覗かせていた










「こんなにあると少々骨が折れますね。………ハハッ、気にしないで下さい、少々お時間掛かりますが。………はい。また何かありましたら連絡を。―――では、失礼しました」






ガチャッ………









受話器を置いた音が、響いた






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -