犯罪組織、『彼岸花』

約14年前にシンオウを震撼させ、恐怖の渦に巻き込んだ謎の集団

既に解決され、壊滅されているので、今ではもう名前すら世に浮上しない忘れ去られた存在





―――――奴等が、復活した














「これを見てくれ」





フォン、と小さく機械音が鳴る

ナズナはパソコンの所定位置に腰を落ち着かせると、鳴れた手つきでキーボードを操作し、エンターキーを押した

様々に画面上に流れていく文字の羅列。パッとパソコンの画面に出てきた数多くあるグラフを、この場にいる者全員が見える様に画面を大画面の方に見せてやる

デカデカと表示されたソレを、二人は見上げた






「人工衛星からシンオウ全体の様子をピックアップしたデータを元に、色々と分析をしたものだ。専門的な話は省かせてもらうが、これを見れば分かりやすいはずだ」

「これは…」

「所々色が違うのは分かるな?これは強い電力を表している。たにまの発電所やナギサシティが良い例だ。電力から始まり、電波や磁場などあらゆる電気を表示し、表したものだ」

「これが一体どうしたって言うんだよ。電気は何処の家にだって使ってるぜ?」

「だろうな。…が、これを見てくれ」





ピピッ、とまた新しく画面が開かれる





「一家に使用する平均電力、発電所が発電する日常平均電力指数、電気ポケモンが発電する数多の総平均電気力、その他を換算し、人工衛星を元に電力発生平均割合を絞り込む。それがこの図だ」

「……アレだけあった黄色い色が数ヶ所になったな」

「赤に点滅してんな」

「この色は平均標準基準値を大幅に越えた電力…つまり、不正の電力」

「不正の電力?」

「ロケット団もそうだったが、実験の為には電力をかなり消費する。非合法な組織で実験を必要とするやつ程な。シンオウだったらギンガ団だ、実験はせずとも多大な電力を使用したからな。…全く、電気は大切にしてもらいたいものだ」

「お前電力消費した当事者だろ」

「(無視)普段、電気の消費量など金さえ払えば発電所の利益にもなるから追及はされない。だがコレの場合は他から電力をくすねたか、電気ポケモン乱用か。とにかく電気の使用が半端ないと言う事だ」






パソコンの全画面に映る、シンオウ地方

そのシンオウ地方の所々にある、点滅された赤い印






「…そんな事まで分かるのか(つーか見事にスルーしやがった)。で?この分析結果を見て何が分かるんだ?」

「シンオウ怪電波未遂事件。事の発端を作った奴等は怪電波装置を製作した。数年前にジョウトにあるいかりのみずうみで、コイキングが突然ギャラドスに無理矢理進化させられた怪電波と同様だ。こういう類いこそ、電力が必要になっていく」

「つまり…この色の部分は奴等の本拠地か?」

「そうだ、と言いたいところだが……それが分からないんだ」

「分からない?」

「これを見てくれ」






ナズナはまたキーボードを叩き、エンターキーを押した

また新たな窓枠が表示された





「…?さっきと変わらないじゃねーか」

「…いや、違う。赤色の点滅が一ヶ所しかない」

「これは14年前、俺が調べた当時の結果だ」

「「!」」

「随分前のデータだったから捜すのに苦労をした。見ろ、そこに映る赤色の点滅の場所を。思い当たる節があるだろう?」

「……あそこは当時奴等『彼岸花』の本拠地だった場所…なるほど、それでお前は奴等の本拠地を見つけ出したのか」

「…意外に近い場所にあったんだな…」






『彼岸花』の本拠地だった場所は、ミオシティから北に、こうてつじま付近にある、名も無い小さな孤島

地図にも乗らない曖昧な場所

奴等にとっては都合のいい場所だったに違いない








「当時の俺はハッキングで色んなサーバーに侵入した際、奴等のサーバーに辿り着いた。勿論、調べを進めていけば簡単に居場所など見つける事が出来た。今思えば懐かしい限りだ。こんな場所に拠点を置いたか、とな」

「なら何故この図があるんだ?」

「半分は探求心だ。元々この図は警察の人間に教える為に作ったモノだ。もし奴等が本格的に活動し始めた事を想定し、この事をいち早く的確に理解してもらえる様にな。…そのお蔭で随分と手間を取ったが、中々楽しませてもらった」






やれやれと小さく溜め息を零すナズナだが、当時まだ彼は17歳。そんな頃からこれだけの分析結果を作り上げてしまったなんて。ナズナの才能はまさに末恐ろしいと言わんばかりの偉業だ。ゴウキとまさに正反対だ



今となれば良い経験になった


ナズナはまたシレッと言いのけた










「ヤドー」
「フー」

「「「「こおー!?」」」」




ヤドキングとフーディンが手分けしてゴクリンを研究所から廊下へ放り投げていた







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