あれからまた小一時間が経過した またもや懲りもせず乱闘(しかも研究所の中で)仕掛けようとしたレンとゴウキに、ナズナは自分の能力(笑)でゴクリンを引き寄せ(←)、見事ゴクリンタワーを完成させ二人を撃沈させた(えぇええ…)。流石伊達にポケモンタワーで潰されていない(えぇええ… もはや速読とも言ってもいいスピードで、時間が惜しいとばかりに二人が持ってきた資料に目を配っていったナズナ。鋭い隻眼の眼は一文字も文字を見落とさない。やはり長年資料や書類といった部類と接していただけの事はある。数が多い資料、通常なら数時間掛かるところを、僅か小一時間で全て読み漁る事を可能にした 流石は博士になっただけの事はある。速読で読み終わらしたナズナに、二人は(ゴクリンに埋もれながら)改めて関心するのだった 現在、時刻は22時を過ぎようとしていた 「シンオウ怪電波未遂事件?」 「あぁ」 ゴウキが持ってきた事件簿を手に取りながら、レンは疑問を浮かばせた テーブルの上に整えられ、山済みにされたそれぞれの資料。その一つ、ゴウキが持ち出した事件簿には「シンオウ怪電波未遂事件」と書かれていた。今、レンが手にしているのがその事件簿だ 初めて見た事件簿、その中身を興味津々とページを捲って拝見するレン。ニヤリと口角を上げ、視線は向けずにナズナに言葉を投げ掛けた 「シンオウ怪電波未遂事件と言えば、かなり有名な事件のヤツじゃねーの。俺がまだトレーナーになる前だったから、確か14年前の出来事だったな。あの時の出来事は覚えているぜ、なんせ隻眼のが鴉シンオウを救ったんだからなぁ?」 「事実、確かに俺はシンオウを救った事になるだろうな」 「鴉を皆ヒーローとか言って騒ぎ立てていたモンだ。ま、俺達も例外じゃなかったけどな。正体不明なヒーロー、伝説のハッカーの隻眼の鴉が今こうして対面しているなんざ、昔の俺には考えもしなかったぜ」 喉の奥で笑いを噛み殺しながら、レンは帳簿を読み進めていく シンオウ怪電波未遂事件 14年前、シンオウ地方を震撼させた犯罪集団が存在した。その犯罪集団は怪電波を使ってシンオウのポケモンを操ってシンオウを乗っとろうと企てていたが、サーバーに侵入した【隻眼の鴉】が内部をいじくり混乱させた事で未遂に終わった。それがこの「シンオウ怪電波未遂事件」の大まかな内容だ 当時、まだレンは9歳で、トレーナーになる前だったレンとゼルにとって、この事件は「もしかしたら俺達旅できないんじゃね?」「マジで?」「ヤバくね?」と、将来の夢を危うくさせたちょっぴり懐かしい事件でもある。無事に解決したと聞いたもんなら「からすマジすげぇ!俺パーティに絶対ヤミカラス入れてやる!」「ズルイぞ!お前なんてムックルで十分だろ!」「んだとコラ!」「やるかコラ!」「「上等だゴルァアア!」」と喧嘩までした事がある思い出が詰まった事件だったりする。結局手持ちにヤミカラスが入る事はなかったが 「ククッ…今思えば超懐かしいぜ。突然メディアやマスコミに宣戦布告しやがったんだからな。一体いつ、何処で奴等が動くのか…そして本当にシンオウは乗っ取られるのか、ってな。ヒヤヒヤもんだったぜ、トレーナーになる前の俺達には重大な事だったからな。軽くテレビから離れられなかったぜ」 「ちょくちょくシンオウに来ていてもその時期はまだカントーにいた俺には、当時の状況は帳簿の文面でしか把握する事しか出来なかったが…やはり相当凄い事件だったんだな」 犯罪集団は突然現れた レンの話の通り、奴等はメディアやマスコミに自分の存在を知らしめた後、「シンオウのポケモンを操り、シンオウを我がモノとする」と大胆不敵に宣戦布告をしでかしたのだ。勿論シンオウの住人は驚愕するわけで。ガセかと思うが奴等はマジだった。所在地は不明、奴等の存在も不確かで、警察はお手上げな状態だった。一体彼等はいつ動いて、いつシンオウを乗っ取ってしまうのか…人々は恐怖に陥った イルミール一家も例外じゃなくて、レンとゼルは隣りに並んでテレビに釘付けになっていた。なにせ自分達の将来の夢が掛かっているんだ。まだ子供な二人に将来の心配をさせる一方、両親二人は「大丈夫さ、大体こういうのは頼もしいヒーローが倒してくれるからな。多分」「ご飯出来たわよー」と、なんとも呑気なものだった。「「俺達の未来が掛かってんだ!」」と二人に怒っていたのも今となれば良い思い出 対するゴウキといえば年齢は12を迎える11歳。ゴウキが本格的にシンオウに住み始めたのが12歳の頃だったので、この事件に関してはあまり知らない。勿論、この頃なんてシホウイン道場なんて移転中だし警察とまだ絡んでもいなかったから、知らないのも無理はない 「こぉ」 「こおー、こほっ」 「「「「こふぅ」」」」 「おいそこ。それ絶対飲むなよ」 「「「こお」」」 ゴクリン達が事件簿を読み進めていた → |