暫く、沈黙が広がった ゴウキは真っ直ぐに、レンを見つめた レンも真っ直ぐに、ゴウキを見つめ返した 銀灰色の瞳と鳩血色の瞳。互いの鋭い眼が互いを写し、お互いを見抜いていた。その様子を、遠くでゴクリンが心配そうに見守っていた 暫く沈黙が続く空間 外は雪が降っていた。しかしいつもみたいな天候が荒れる吹雪きではなく、しとしとと優しい雪が、沈黙した空間をより深みを表わせた その時だった フッ、と、レンは――笑った 「何を今更…ハナっからんな事は分かっているさ」 静かに見つめ返すゴウキを見ながら、髪をかき上げた。その瞳は本当に、今更とばかりにゴウキを写していた 「……確かにゴウキの言う通りかも知れねぇ。このまま進んでいけば、残酷な真実に辿り着く。…それは、間違いないだろうな」 廊下の窓から見える、白い景色 一段と白くなっていく景色を、視線をゴウキから外界へ写したレンは言う 光の反射で外界を写す窓にはレンとゴウキが写し出されている。窓を見るレンに、レンを見るゴウキ。背景には絶え間なく雪が降り続いている。今日も外の雪が止む気配はない 「なぁ、ゴウキ。あの時の事、覚えているか?俺達が三強として名を馳せる前に、アサギ付近の岩山で言ったミリの台詞を」 「全てを知りたくば覚悟を決めなさい。絶望を跳ね返す屈強の覚悟を、全てを受け入れる覚悟を。私達は、貴方達を阻む壁となる ―――私を倒せ、レン」 勿論、ゴウキも覚えている 巻き込ませたくない、そう一心でミリが自分達に言い放った、あの言葉 結果、ゼルジースの件で絶望しかけてしまうが、レンは受け入れた。受け入れて、今度は何故ゼルがあんな行動をしたのかを追及する姿勢になっている レンがこうして笑っていられるのも―――全てはそう、ミリのお蔭でもあった 「全てを知りたくば覚悟を決めろ。絶望を跳ね返す屈強の覚悟を、全てを受け入れる覚悟を。……それがどんなに残酷な結果になろうが、俺は覚悟の上で此所にいる。それは言わなくてもお前なら分かるだろ?」 「……………」 「そもそも俺がこうして動く最大の理由はミリの為だ。親の死が関係してきたと分かれば、当然二人の無念を晴らす為に真実を突き止めたい。それに…あの二人、きっと聖蝶姫を救おうとして…殺された」 「!!」 「だからこの件は俺にとって因縁がかかった事件だ。解決する事が親の為であって、ミリの為にもなる。必ず俺が解決してやる。……絶対にな」 窓の外からゴウキに視線を戻したレンの鳩血色の瞳には、揺るぎない決意の光 レンの瞳の奥の光を暫く見つめ、ゴウキはフッと笑った どうやらレンは自分が考えている以上にしっかり前を見つめていた、と それに、とレンは言葉を繋げる 「お前が荷を抱える事じゃねーよ。あの時から責任感じているらしいが…お前が自分を責める必要はねぇ」 「……気付いていたか」 「俺が気付かないとでも?フッ、あんま俺を甘く見るなゴウキ。…お前があれ以来色んな事件に加わって事件解決しまくるのも、あの事件がキッカケなんだろ?」 「……………」 そう、レンの言う通りだ 警察学校武術師範長の立場なだけのゴウキが刑事に混じってより多くの事件解決に勤しむのも、全てはあの事件がキッカケだった 責任を感じていた 自分の手で解決出来なかった事を 結果無念のまま、涙を飲む事になってしまったのを やはりレンは気付いていた 普段は己の気持ちや決意を口に出さないゴウキの、本当の気持ちを、決意を 「……気付いているなら口に出す必要はない。俺もあの時の無念を晴らす為だ。そして第一の理由に、全ては舞姫の為だ。俺もこの事件を必ず解決してやる。…絶対にな」 思いは二人とも一緒だった 全てはミリの為、 そして、アルフォンスとユリの為に 決意を宿し闘志を燃やすゴウキの瞳を見て、レンは不敵に笑った。ゴウキも口角を上げ、レンを見て笑った。二人は互いに視線を交わしたすぐに、ナズナがいる研究所へ足を進めるのだった 「おいゴウキ。最初に言っておくがなァ、俺がミリの為に動くんだ。手を出すなよ」 「温いな。その言葉は残念ながら承諾は出来ん」 「ハハッ、んだとコラテメェ今から決着つけるかあ゛ぁ?」 「フッ、返り討ちにしてやろう。俺が舞姫を救う。お前はそこら辺でテトリスでもやっていろ」 「テメェ上等じゃねーのゴルァアアアッッ!」 暫く乱闘が続いた (結局騒動に駆け付けたナズナに止められる二人だった) |