提供された夕飯で腹を満腹にさせたレンとゴウキは、早速ナズナがいる研究所へ足を運んだ





本館と研究所を繋ぐ渡り廊下。耐熱対策や暖房管理が整っているので、外がいくら吹雪いていようが氷点下になろうが廊下の温度が下がる事は無い。シンオウ地方に限らず、寒帯地域の住居は殆どが耐熱素材を使用した家に住んでいる


屋敷の中にはモダンなアンテークを主流としているのが殆どだ。廊下に敷かれた絨毯の上を、スリッパを掃く足で真っ直ぐ研究所へと向かう







「随分と資料があるんだな」

「お前の両親の事件簿と、ナズナに頼まれたものを向こうで拝借してきた。…お前のソレは、家からか?」

「あぁ。親父の部屋から持ってきた。気になる内容のヤツを選んでいたら遅い時間になっちまいやがった」

「奇遇だな。俺も資料を読み耽っていたらこんな時間になってしまった。しかも資料整理にもつき合わされてしまってな…予定より大幅に遅れてしまった」

「フッ、師範長とやらも大変なこったぁ」

「全くだ」







二人の言う通り、様々にある資料を読み耽っていたら大幅に時間が過ぎてしまった

アルフォンスの部屋から持ち出した資料を片手に、プテラに乗ってコトブキシティを通過しようとしたレン。同時に資料整理もさせられやっと解放したゴウキがフライゴンの背に乗って上昇し、自宅に向かおうとした時に、二人は偶然にもバッタリ出くわしたのだ

二人は互いの資料の多さに気付くも、追及する事なくすぐに屋敷に向かっていた為、今までノータッチでいた。しかし、それだけ資料があれば何かを掴んだ、という事になる







不意に、ゴウキは足を止めた



隣りで並んで歩いていたゴウキが急に止まった事に気付いたレンは、足を止めてゴウキを振り返った。どうした、そう問い掛けるレンに―――ゴウキは真剣な眼差しでレンを見つめ、口を開いた






「―――…もはやこの件は、聖蝶姫だけの問題ではなくなった。闇に葬られた謎、偶然にしては不可解な死、そして…お前の両親の死。この事件の全貌を解き明かすという事は、残酷な真実を知る事になるだろう

「―――………」

「お前の事は昔から見てきたつもりでいる。ゼルジースの件は知らなかったにしろ、お前は十分に傷付いた。……俺もお袋も、一番それを分かっている」







互いの母親から紹介を受けて知り合った、レンとゴウキ

二人は互いを認め、切磋琢磨しあった仲間でもあり、兄弟。レンは兄を捜しに様々な地方へ飛んでいたが、どんなに遠くへ離れていようが絆や繋がりが途絶える事は無かった




ゴウキはレンを見てきた




仲間であり、友であり、親友であり、弟を

彼には誰にも明さない闇がある事は、相手の気を視るゴウキには気付かないわけがない。何かある―――それはユリやアルフォンスにも感じた事だったが、今まで聞き出す事は無かった


闇は人間誰にだって存在するものだ

無闇に口に出す事ではない





レンの両親が死んだ


アルフォンスとユリはレンを愛していた。それは他者が見ても分かる様に、二人はレンを愛していた

レンもあまり表に出さずも、二人を大切にしていた、愛していた。親がいるから、自分は頑張れる。誰がどう見ても、微笑ましい家族だったと言ってもおかしくなかった。当時家を留守にしてばっかであまり接点が無かった多忙な父を持つゴウキにとって、三人の姿は羨ましい事この上なかった。今となればいい思い出だが




大切な両親が死んでしまった時のレンを、ゴウキは知っている




警察の仕事をする関係、被害者の遺族の悲しむ姿は度々見ていた。が、やはり身内の死、友の悲しみは見ていられなかった。辛かった。友を失った母は悲しんだ。自分も悲しんだ。しかし、レンはそれ以上に悲しんだ。ゼルジースの存在を知った今、あの時の悲しみはレンには強烈な一撃だけではすまされなかった




閉ざされたた心。悲しみにくれた毎日。虚ろに宿す鳩血色の瞳…




躍起になる事もなく、酒乱に溺れる事もなく、自我放棄する訳ではなかったのが救いだった。理由は後々から判明されるも、当時は本当に、何をしでかしてもおかしくないレンを、いつ殴ってもいい様にに警戒をしていたくらい危機感を覚えていたのだ

とにかく、両親が死んだ半年間は、本当に痛々しい事この上なくて、







「――――それでもなお、お前は真実に向かって立ち進む覚悟はあるか?」






今まで明かされなかった原因が解明される事は、二人の死の全貌が解き明かされる


真実はまた残酷に、レンを傷つけるのだろう






だから、ゴウキは問い掛けるのだ






――――かつて、自分の兄がレンを遠ざけようとした様に











双方の、鋭い眼差しが、混じりあった






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