六年前に起きたあの時の事件は今でも鮮明に覚えている

何故なら友の両親が、無惨な姿になってしまったのだから

当時まだ19歳だったとはいえ、死体を何度か見た事があるゴウキでさえ、あの遺体は直視出来るものではなかった。特に現場写真なんて無惨なもので、嘔吐しなかったとはいえゴウキにはかなりの衝撃を与えていた





「――――――……」





コトブキシティにある、シンオウ警察庁本部情報管理部

過去事件の帳簿が保管されている資料室に、ゴウキの姿はあった





「……やはりこの事件には裏があったか…」





過去の帳簿を見ながら、ゴウキは苦々しく呟く


捲られていく帳簿

筆記で書かれた紙には事細かく当時の状況が記入されている





「…………」





別に、仲間や先輩刑事を疑っている訳ではない

しかし、聖蝶姫の件で誰かが裏で手を引いている可能性がある。しかも今回、その可能性がこの事件と大きく関わっているかもしれない








「ユリ…!どうしてさ、どうしてアンタはあんな場所に行ったのさ!っ…ユリ…アンタはまだ生きなくちゃ!生きてレンがお嫁さん連れて来るまで生きなくちゃいけないだろ!?」

「……………」

「レンが見たら…絶対に泣くだけじゃ済まされない…。ユリ…アル…アンタ達は本当に馬鹿だ…!レンを残して先にいっちゃってどうするのさ!」

「――――――………っ」












「………………」








瞼を閉じれば鮮明に思い出す




突然来た、警察の連絡

駆け付けた現場

無惨な姿になった、二人の遺体


大きな衝撃

込み上げる嘔吐感






「っ…………」







搬送された病院

解剖室の扉の前

頭を振る、解剖員



ほの暗い、霊安室



連絡を受けて駆け付けてきた人々

啜り泣く声

電話をかけて駆け付けてきた友


友の、絶望した顔

霊安室に響く、痛々しい叫び―――










「父さん…母さん…何で、だよ……っあああああああああッッ!」




















あれ程、衝撃を受けた事はない

身内だと言ってもいい人間の、無惨な姿

捜査に私情を挟んではいけない。それは分かっている。しかし流石のゴウキも私情を挟みたくなる程で

友の為に、皆の為に

あの二人の無念を晴らしたい


だけど現実は事故として処理をされた






被害者二人はゴウキの知り合いだった

まだ若かったゴウキ。私情を挟みたいのを耐えていたゴウキを、先輩刑事は捜査からゴウキを外した。そもそもゴウキは警察でなければ刑事でもない。警察学校師範長な立場なだけで、本来捜査に関わる人間ではないのだ


私情を挟めば捜査のミスになるし、身内や知り合いだからこそ捜査から外さなくちゃいけない





結局、成すすべも無く


事件は、解決された







「…お袋」

「………話は聞いたよ。警察は事故として処理したってね。仕方ないよ、あれは誰が見ても事故だって思うからね……」

「……すまない。俺は結局…何も出来なかった」

「アンタが気にする事じゃないよ。重荷に抱えてはいけないよ」

「…………白皇は、」

「ずっと遺影の前に座っている。………見ていられないよ」

「………………」













「…白皇」

「…………お前か」

「……結局事件は事故として処理する事になった。俺は何も出来なかった…すまない」

「………別にどうとも思ってねーよ。…気にするな」

「………、気がかなり滅入っている。少しは休め、白皇。帰って来てから一度も寝ていないのだろう?」

「…………あぁ」



















「……次こそは、必ず」





昔の自分は若かった

しかし、今は違う

聖蝶姫の件でも、この件でも

自分がやる事はただ一つ




明かされなかった謎を追及し、解き明かす




それが、どれだけ茨の道であろうとも








「―――ゴウキさん!探しましたよ〜!ゴウキさんゴウキさん、これから一緒に組み手をしませんか?」


「―――ゴウキ君、丁度良かったわ!今レンが帰って来ているのよ〜ちょっと鍛えてあげてくれないかしら?」


「―――ゴウキ君、アイツの事をよろしく頼むよ。特にほら、アレだよ、心霊ス「言わせねーよ!」(ガッ!)グフッ!?」












ゴウキは帳簿のページを閉じた









必ず、解決してみせる





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