コトブキシティを一望出来るこのコトブキマンションの最上階。やはり最上階なだけあって景色は広大で壮大だ。今はまだ太陽が真上にあるが、これが陽が沈めば綺麗な夕焼け、夜になれば絶妙なイルミネーションが垣間見れるだろう





「やぁ、よく来てくれたね。君達を待っていたよ」






三人を向かい入れた男、アスラン

声からもそうだが全身から溢れる優しい雰囲気と、温和そうな微笑。現シンオウ幹部長と正反対な人間だ。何処となく威厳を感じさせる所を見ると、やはり元ホウエン幹部長を務めただけの事はある

前まではきっと黒髪だったソレは、今ではもうその名残は無く、髪は真っ白だ。髪色と同じ真っ白な顎鬚を蓄え、目尻の皺を緩めながらアスランはやってきた来訪者を出迎えた






「アスランさん、急な頼み事を引き受けてくれて感謝をします」

「いやいや、ツバキの息子である君の頼みを引き受けない訳がないよ。すまないね、わざわざ私の家まで来てくれて」

「いえ、当然の事です」

「ゴウキ君も久し振りだ。葬式以来かな?君の噂はこっちに来てからよく耳にしていたよ」

「俺も会えて光栄だ」

「葬式では会話する機会がなかったけど、こうしてツバキの息子達と会えるなんて私にとって嬉しい限りだよ」





ナズナと握手を交わし、ゴウキと握手を交わしながらアスランは笑う

ナズナとゴウキの亡き父であるツバキの古い知り合い。彼のこの口振りからして、どうやら彼はナズナとゴウキの事をかねがね耳にしていたんだろう。やはり二人を見比べてもツバキに似ているよ、とアスランは目尻を緩めた






「それで君は…」

「彼はレン、レンガルス=イルミール。彼も同行したいと言ってきたので連れてきました」

「どうも」

「イルミール…もしかしてアルフォンス君の息子かな?」

「!…父を知っているのか?」

「あぁ勿論。アルフォンス=イルミール、その白銀色の髪は彼も同じ色だったからね。……君のお父さんについては、本当に残念だ。彼は違う支部でもよくお世話になっていたからね」

「………そう、か」

「話を聞いた時は愕然としてしまったよ。君のお母さんまでもね。息子がいるって聞いていたけど……そうか、君が。見れば見るほどアルフォンス君に似ているよ。会えて光栄だよ、レンガルス君」

「…こちらこそ」






優しい微笑を浮かばせながら、アスランはアルフォンスの面影を残すレンの姿を見つめた

アルフォンス=イルミールは紛れもない、レンの父親だ

彼はシンオウリーグ協会支部に務めていたリーグ関係者の一人だった。違う支部だったアスランがアルフォンスの名を知っているくらいだ、アルフォンスはそれなりの立場にいたのだろう



ツバキの息子達にアルフォンス君の息子に会えるなんて今日は本当に良い日だよ、とアスランは笑った









「しかし………







どうしてゴウキ君とレンガルス君はそんなに傷だらけなのかな?」

「「気にするな」」

「………………(溜息)」







アスランの前に立つレンとゴウキの頬それぞれに湿布が貼ってあった。立ち振るまい、そして見た目はあまり変わらないのだが、やはり何処かボロボロに見えるのは気のせいじゃない


実は昨日、二人は乱闘を起こした

勿論、原因はただ一つ


昨日だけに止どまらず、つい先程も大乱闘を起こした。ポケモンバトルから、リアルファイトへ。仲が良いんだか悪いのか、元気と言えばいいのかどうか…というか乱闘させる原因が原因もあるのだが、ナズナにはもう呆れて何も言えなかった

しかも今でさえ言葉が被った事が癪に触った様で、互いに睨み合ってはバチバチと何かが火花が迸っている様な錯覚さえも覚える。間に肉を挟めばこんがり焼ける勢いだ

そんな二人の元気な姿と溜め息を付くナズナの姿を見てアスランは笑った








「ハッハッハッ、若者はやはりこうでなくてはね。…さて、立っているのもなんだからソファーに座ってくれ。今飲み物を用意してこよう」

「はい、ありがとう御座います」












喧嘩するほど仲が良い





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