「フッ、研究所に引き籠もってるわりに実力は落ちぶれていない様だな」

「伊達に首領の補佐はしてはいない。お前の牙も相変わらずの様だな」

「当たり前だ。引退して博士になったお前と現役の俺を比べる方が間違ってるぜ」

「それもそうだな」






レンとゴウキが幾度に渡りバトルを繰り広げているのは周知の事実。それがプチ喧嘩やミリ死守戦や普通のバトルだったり何かの攻防戦等それは様々。一日必ず拳を交えたりバトルを繰り広げたりと、彼等は日々強さを競いあっていた

しかしナズナは違った。ナズナは彼等より歳が上で二人みたいに無駄に競いあう事がないのもそうだが、元よりバトルはしない主義だった。ロケット団にいた頃はサカキやマチスの補佐の関係でトレーナー業を勤めていたが、ナズナの本職は科学者で、あくまでバトルは自分達の身を守る為だけに嗜む程度だった。そもそもナズナが補佐に任命されたのは団員同士バトルで競いあうちょっとした行事に参加した事でまさか才能が開花し、珍しいポケモンを連れている事から上司の目に止まったのが始まりだった。それさえ無ければきっとナズナはバトルをする事は無かっただろう


ナズナは科学者を辞め、親の職を継いで考古学者となった。同時に短期間で『博士』の称号を我が物にした。科学者と考古学者は専門が違うだけではなく『博士』にもなってしまったナズナの力量は計り知れない。ナズナは博士になった事で、本格的にバトルから身を引いた

才能はそんなに要らない

そう言って、ナズナは己の牙を隠したのだった






「―――…白銀の麗皇としての実力は今も昔も変わらない。いや、今の牙の方が昔よりも強度が高いと見た。…やはり一匹狼が守る者を見つけるとガラリと変わるものなんだな」

「ハッ、良く言うぜ。お前の弟に見事なまでに引き離されたんだがなぁ?」

「良かったじゃないか、牙を取り戻す為にシンオウに戻れて。お前の帰郷を許したミリさんと実行に移したゴウキに感謝するんだな」

「テメェ白々と言いやがって……チッ、今からその顔を歪ませてやる。覚悟しろ」

「やれるものならな」






レンとナズナがバトルしたのは、これで二回目だ

初バトルはまだ二人がカントーのふたごじま研究所でお世話になっていた時だった。お互い嗜む程度に軽くバトルをしたのだが、それだけでも相手の力量を知るには二人にとって容易いものだ




ナズナが科学者ではなく本気になってトレーナー業に励んでいればゴウキと同様凄腕のトレーナーになっていただろう、とレンはナズナの才能を見抜いた

牙を隠しているとはいえ一からポケモンを育て上げ、昔と変わらない実力を従えるレンにゼルの件が無ければ本当にチャンピオンになっていたのかもしれない、とナズナはレンの育成の才能を見抜き尚且つ底知れないバトルの才をも見抜いた






「エルレイド!」

「フーディン!」






猛吹雪で見えない視界の先には自分達のパートナーが戦っている

二人にとって二匹は最も手持ちの中でも主力でもあり最大のパートナー。言葉を交わさずとも、指示を出さなくとも相棒は分かってくれている





吹雪きで視界が利かない真っ白な世界。暴風と積雪で足場が取られる不安定なバトルフィールド。障害が多く降り懸かる空間で二体のポケモンは地を掛け、宙を走る



エルレイドの放つサイコカッターが荒れ狂う吹雪きを一刀両断し、フーディンに襲いかかる。一発に限らず、何発もののサイコカッターを食らわせた。普通ならサイコカッターは一回に一発なのだが、レンのエルレイドはかまいたちの様に一回に数発も放つ事が出来ていた。切れ味抜群な無数の刃がフーディンを襲った

自分の念力で浮かばす身体を駆使しながらフーディンは軌道から逸らせ、避けきれなかったサイコカッターには自身のスプーンを使って強力な念の防壁を作って相殺させた。すぐさま態勢を立て直し、フーディンもサイコウェーブで応戦した

最終的には最大の技、はかいこうせんを相手にぶちかましてやった





ドォォオオンッ――――




爆発音が轟いた














「サイコカッターの連発を可能とするエルレイドは初めてだな」

「俺のエルレイドをそこら辺のエルレイドと比べるのはお門違いだぜ」

「そうらしいな」






攻撃を止めた二匹がそれぞれ主の隣りに着地をした事でバトルは終了となった

久々のバトルにフーディンは多少息を切らせている。しかし対するエルレイドは激しいバトル且つ猛吹雪に見回れた不安定なバトルフィールドにも関わらず、一切疲れを見せていない

まだやれるとばかりに腕を構えるエルレイドに、レンは制止の手を上げた






「満足したか?麗皇」

「フッ、さあな。……ま、多少なりとも苛々も収まってくれたと思うぜ」

「だといいんだがな」

「だがまだまだやるぞ。お前の実力もこの際最後まで見定めるのも悪くない。…大体ここら辺でいつもゴウキと肉弾戦に勃発するんだがな。お前も一発拳交えるか?」

「それは流石に無理だ」

「フッ、良かったなナズナ。此処にゴウキが居たらお前も道連れだぜ?」

「…アイツは俺を殺したいのか…?」













それからまたテンガンザンに爆発音が轟いた





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