「デンジ兄ちゃん!なんかすっごい大きなお弁当だね!いいなー大きなお弁当!デンジ兄ちゃんそのお弁当だれに作ってもらったのー?おかーさん?それともかのじょー?分かったデンジ兄ちゃんかのじょに作ってもらったんでしょー!」

「よく分かってんじゃねーかチマリ。かしこい奴は嫌いじゃねーぜ。よし、今日の昼は一緒にコレ食おうぜ」

「わーいありがとうデンジ兄ちゃん!今度チマリにかのじょ見せてねー!」

「おー」








おかしい。何かがおかしい


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時刻は早くも午前11時を回った







「このシンオウの地下って面白いんだよ。様々な種類の石が手に入るんだ。石に限らずポケモンの化石まで見つかる時もあるんだよね。あ、そうだ…これをみて欲しい。時間があった時ちょっと地下通路に行って掘ってきたんだ。白玉と金剛石に水の石、それからダイヤモンドの原石をゲットしちゃってね」

「ダダダダダ、ダイヤモンドの原石!?地下通路にそんなモノが見つかっちゃうんですか!?」

「うん、まさか見つかると思わなかったよ。はい、ダイヤモンドの原石。これ宝石店に持って行ったらどうなるんだろうね。価値あるかな?」

「原石が見つかれば価値はありますよ!んー、ダイヤモンドの原石を此所で見れると思わなかったよ!」






リーグの仕事やジムの仕事で此所を発った皆を見送ってから数時間が経過した

今僕らはリビングのソファーに座っている。机に並べられているのは会話で分かる通り、地下通路で取ってきた石だ。キラリと輝く光沢がとても綺麗だ

僕の目の前に座るミリはキラキラとした目で僕が取ってきた石を見ている。そう、ミリは石について知識が詳しい。特に宝石の原石が一番興味をそそるみたいで、今も特にダイヤモンドの原石を注視している。やっぱり根本的な所は変わっていないんだなぁと思いながら、ダイヤモンドの原石を手に持って頷きながら見ているミリを見てクスリと笑う






「ミリも…いや、以前のミリも特に宝石の原石に興味津々としてくれていたよ。盲目で原石自体見る事は出来なかったけど、よく原石を触って頷きながら感触を味わっていたよ」

「…そうですか」

「いやー以前のミリは僕の話を分かる数少ない相手だったよ。勿論、今のミリもね。だって皆、石って聞くとあまり良い表情してくれないんだからさー」

「………、そういえばダイゴさんはストーンゲッターなんですよね?てことは色んな石を見つけて色んな宝石の原石とか見つけちゃっていたり…!?」

「あぁ!勿論!今手持ちにはこれしかないけどホウエンに戻れば色んな石があるんだ!例えば、そうだね…黒曜石とかトパーズの原石だったり!」

「おおおおお…!!!!」






キラキラと期待溢れる可愛い瞳をこちらに向けてくるミリに、自然と口元に笑みが浮かぶ

やっぱり話が分かる人がいてくれると違ってくるよね。親父はともかく(いや親父もそうだけど)ミクリには呆れられたり四天王達(カゲツとかフヨウとか)には笑われたりレンには馬鹿にされたりあまり良い反応してくれなかったし。…なんか今振り返るとヘコんだけど…まぁ気にしないけどね。うん


ミリの場合は宝石の原石とかパワーストーンとかそういった部類になるかもしれないけど、やっぱり共通出来るものがあると本当に嬉しい。記憶が無くなっても、変わっていないって思えて改めてミリが帰って来てくれたって実感出来る







「ダイゴさんダイゴさん!この原石是非専門の人に持って行ってダイヤモンドにしちゃいましょうよ!これ絶対価値が高いと思いますよ!ほら、ダイゴさんよく見て!この原石をよーく見ると、ほら、内包物がちらほらあるでしょ?これ天然石を主張してるんですよ!凄い凄い!…わー、これ絶対に宝石にしたら綺麗なダイヤモンドになりますよ!」

「ハハッ、相変わらず宝石になるとテンションが違うね。きっと今のミリは石を前にした僕の姿みたいだよ」

「!!…あ、あはー、すみませんつい…。ですが宝石もそうですけど石には様々な力がありますからね!私も色々原石や石や宝石を厳選する時はもう時間を忘れちゃいますもん!」

「そう!そうなんだよミリ!ご飯抜かしちゃうくらい真剣になってしまうんだよ!それで熱中し過ぎて帰りが遅くなって怒られてしまうんだよね、ハハッ」

「分かります!私もルーペ使って宝石の価値を見定めたり鑑定したりと、気付けば鑑定する物が終わったり空が夜だったりしちゃうんですよー!一つの物に注視するから目が疲れちゃったりとか、肩凝っちゃったりするけど、止められないんですよねー」






そういえば以前のミリは宝石関係の勉強をしていたっていう話を少しだけ聞いた事がある

知り合いが宝石関連の仕事を営んでいたとかなんとか…。ミリはあまり自分の素性を語らなかったから真相は定かではない、けど知識の幅をみてもかなり勉強していた事がよく分かる言葉の数々だった。今は分からないけど、深く詮索しなくてもこうして話が通じ合えばそれだけで十分だ






「……そうだ!近い内に一緒に地下通路に行こうか!きっと良い石が見つかるはずだよ!」

「!!…いいんですか?」

「勿論さ!遠慮しなくていいんだよ。僕らはミリのしたい事をさせたいし、ミリの気持ちを尊重するつもりでいるからね。…そうだ!また別の日には地下通路のプロフェッショナルの二人を呼んで色々探索しよう!彼等ならシンオウの地下を熟知しているからね!きっと二人も乗り出してくれるはずさ」

「……地下通路のプロフェッショナルの二人?」

「うん。まぁ近い内に会うと思うから、その日までお楽しみって事で」

「やった!ダイゴさん、ありがとう御座います」







嬉しそうに笑顔を綻ばせながらミリは笑う


実はちょっと夢見ていたりしていた。ミリといつか、一緒に石を探す夢を

それだけじゃない。今朝方だって目が覚めたらミリがいて、しかも朝ご飯を用意してくれた事も勿論夢だったりしていて、しかも簡単に夢が叶った事に喜んでいる自分がいる。当時僕らは別々で、約束事やミリの気分で来てくれなかったら会えなかった身だ。あの時の彼女は紛れもないホウエンチャンピオン…普通だったら、ありえなかった事だ。ポケモンマスターなら、尚更

でも今は、夢が現実になってくれる








「それじゃ地下通路は君がもう少し此所に慣れてから一緒に行こう」

「はーい」







これが、失っていたあの時の日常





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