そういえば昨日俺はミリと再会して、本格的に同棲生活(軟禁生活)を始めたんだった、と無垢の瞳でこちらを覗き込んでくるミリの顔をぼんやり見ながら昨日の事を思い出す

これは、夢…なのか?

ミリに起こしてもらえるなんて、何度夢に描いたか。改めて起こしてもらえるとじわじわとミリが帰ってきてくれたんだと実感して、嬉しさで口元が緩んでしまう。あぁ、これだけで幸せだって思ったら自分の身が持たない。幸せで死ねる。いやマジで






「それじゃ下でご飯用意して待っていますので、冷める前に降りて来て下さいね」

「あぁ…………ミリ、」

「はい?」

「…おはよう」

「…フフッ、おはようございます」






あぁ、これは夢じゃない

現実だ。紛れもない現実そのものだ


じんわりと心が暖かい何かで浸透されていく。あぁ、幸せだ。夢じゃない。これは、現実

盲目だった時は危なっかしくヒヤヒヤしていた足取りも今じゃしっかりとした足取りで先に部屋から出て行ったミリを見て、俺もベットから降りたのだった






















「オーバ……まだ夢を見ている気分だ。なぁ、これって夢か?夢なのか?」

「安心しろデンジ、俺もまだ夢を見ている気分だ」





リビングに降りてみれば、俺はまだ夢を見ている錯覚を覚えた

テーブルには暖かい朝ご飯が並んでいた。バランスの良い朝食が湯気をたてて俺を歓迎していた。なんなんだ、これは。やっぱりさっきのリズミカルな音は朝食を作っていた音だったんだとぼんやりと思った。他の皆も全員この場に集結していて、全員が全員ポカーンとした表情を浮かべて食卓に座っていた(多分俺もその表情をしているに違いない

誰が作った、だなんて聞くだけで愚問だ






「ミリ…お前これ、全部作ったのか?」

「え、はい」

「……料理、出来たのか…」

「…お口に合うかは分かりませんが…」






ぎこちなさそうに苦笑を浮かばせてポケモン達に飯を与えるミリを見ながら、改めて目の前に並べられている食卓に注視する

何処にでもありそうなオーソドックスな朝食だ。白米に味噌汁(湯気が出てる)、出し巻き卵(分厚っ)に彩りの木の実野菜(珍しい木の実まで…)とまぁ一般的な飯だ(だが一つ一つがなんか豪華)。けど神々しくキラキラ輝いて見えるのは、きっとミリが作ってくれた朝食だからか、最近飯を怠っていた反動からか(きっと前者だろうな

というか料理、作れたのかとびっくりするばかりだ。俺達とつるんでいた時は特別そういった会話を出さなかったし、盲目だから料理は無理だという変な先入観があったからだ。ゲンさんが一度料理について、「料理は出来ると思うけど怪我しないか心配で台所に立たせられない」と言っていた記憶がある。まぁ、普通はそう思うな。俺も思う。そもそも今ミリは目が見えているし六年の月日がある。作れてもおかしくないはず


…ヤベェ、超腹減ってきた








「びっくりしたよ…まさか僕らより先に起きていたなんて。しかも買いに行こうとした食材がもう揃っちゃっているし、しかも美味しそうだし」

「私も驚いたよ。手伝うよりも前に事がすんでいたからね…」

「うぉぉ…この出し巻き卵すげぇな…!プロだろプロ。プロ並だぜこれ」

「ミリ…あなたこの材料どこで買ってきたの…?確か食材なかったはずよね…?それよりも何時に目が覚めたの…?」

「あはー」






そういえば三人は早朝から食材を買いに行こうとしていた気がする(そんな会話を右から左に受け流していたが)

話から察すると、約束の時間に起きて来たら既にミリは起きていて、しかも買いに行こうとした材料が何故かあってそれを使って朝食を作っていた、と言う事になるが………いつの間に……


対するミリはいつもの笑顔で、そう、いつもの調子と笑顔で「あはー」と笑う。あぁ、懐かしい。大体こういった返事は基本何言っても教えてくれない。つまりミリのはぐらかしの一つだ。記憶が無くなっても根本的なモノは変わっていないんだなと思うと、少し笑える








「まぁいいわ、細かい事は気にしない事にしておくわ。もう、相変わらずちょっと謎めいた所は今も昔も変わってないんだから」

「あはー」

「ミリ、このゼリーって何の木の実を使ったのかい?とても美味しそうだよ」

「モモンとオレンとナナシをふんだんに使いましたー」

「にしても…普通の朝食なのに神々しく見えるのは俺の目の錯覚か…?」

「安心しろオーバ。俺も今そんな錯覚を覚えている」

「それじゃせっかくミリが朝ご飯を作ってくれたんだ。冷める前に早速頂こうか」

「あぁ。そうだね」

「それじゃ―――」







「「「「「いただきます」」」」」












たかが普通の朝食だったのにむちゃくちゃ美味かった

生きた心地がした

争奪戦が勃発したがオーバのを奪ってやった。むちゃくちゃ美味かった






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