「エルレイド…分かっているな?」

「エル」

「ミリを見つけ出し、救出したら奴等を潰す。二度と立ち上がれない様に木っ端微塵にぶっ潰す。それからスイクンのぜったいれいどで奴等を氷結させる。全てはミリを奴等から奪い返す為だ……容赦はしねぇぜ」

「……………エル」









「…ちょっとアンタ達。レン一体どうしちゃったのさ。背中に黒い何かを背負っている様に見えるんだけど。嫁さんが見たら悲鳴上げちゃうくらい恐い顔してるわよアレ」

「………色々あってな」

「…修羅場だな…」






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朝を知らせるムックルの鳴き声が聞こえる



窓から差し込んで来た朝日が顔に掛かって、まどろんでいた眠気を半端強制的に覚ましていく。眩しい。とりあえず眩しい。高級感溢れる掛け布団を深く被り直す。よし、これなら問題はない







タンタンタンタン、と何処かで心地よいリズミカルな音が聞こえてくる



例えるなら、そうだ。母親が朝ご飯の為に包丁を使っている様な、そんな音だ。微かに小さい音だ、でも何処か安心出来る懐かしいリズム。このまま目が覚めれば食卓には暖かくて美味そうなご飯が並べているんだろう。そんな、ちょっとした期待




眠りが深くなっていく。あぁ、布団がとても心地がいい。つーかなんで俺こんな羽毛たっぷり高級ベットで寝ているんだろうか。これは夢か?…夢だな。そもそも自宅にこんなベットなんて持っちゃいねーし、家に母親なんていねーし。第一俺今一人暮らしだし。おいそこ、寂しい奴とか言うな。毎晩面倒くさくてカップラーメン食って栄養偏ってるけどそれでも元気でいるんだぞ文句あっか。……って、んなことはどうでもいい…あーヤベェ眠くなってきた。二度寝決まりだな。寝よ




















それからどれくらいの時間が経ったんだろう








ゆさゆさと、寝ている自分の身体が揺さぶられている



ぎこちなさそうに、それでいて遠慮している揺らし方だ。誰かの手が掛け布団越しに感じる。淡い感触だ。…誰かが俺を起こしているのか?……オーバじゃない事は確かだな。アイツ容赦ねぇし。目覚めにあのアフロを視界に入れるなんざ御免だ。萎える。色々と萎える



なら、コイツは誰だ?



声が聞こえる。小さな声で、それでいて心地よい声が。俺の名前を呼んでいる事は分かる

俺は、この声を知っている


フワリと香る優しい花の香りが、掛け布団の隙間から入ってきて俺の鼻を燻った

俺は、この匂いも知っている――














「デンジさん、朝ですよー」

「…ん…」

「朝ご飯出来ていますよ〜皆さんももう起きてデンジさんを待っていますよ」

「……ミリ…?」

「はい、ミリですよ。おはようございますデンジさん。お目覚めは如何ですか?」

「……………あぁ、とても、最高だな…」









ヤバい、俺はまだ夢を見ている





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