落ち着こう私

色々諦めて落ち着こうか私






「左右見ても森、後ろを見ても森…見上げた空は晴天。いい天気だわー。風向きは北………このまままっすぐ行くしか道はない、かぁ…」






ふむふむ、と私は一人考える

こういう状況はもう何回も経験している。目が覚めたら此処何処だよパターンなんていつもの事だ。回数をこなしていけば嫌でも状況になれてしまう。今回もいつもの様に、頭を切り替えて私はこの先の事を思案する。この時点で普通の一般人、普通の女子高生とは言えない事をしているわけだけど、はははは仕方無いよね泣きたいな!



そもそも私は一般人を装いながら―――本当の姿は、異世界を統べる【異界の万人】でもある



人間であり人間ではない、異端者な私。不思議で強大な力を持つ、唯一無二な存在。人は私の事を――――ああもう、そんな話をしたいわけじゃなくて!

そんな私だからかどうかは分からないけど、こうやって奇想天外な事をフレイリによって経験させられると色々と慣れてきて諦めが着いてきちゃうよね

慣れって怖い






「てか、いつも予告無しだから慣れても驚くっつーの」






溜め息しか出ない

や、本当に。溜め息しか出ない

これもフレイリの言う【異界の万人】としての修行として解釈しているけど…

溜め息しか出ない←





「…とりあえず人か町か…色々探してみますか」






オレンジ色の服に着いた埃を払い、私は目の前に伸びる果てしない道を歩き始めるのだった






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そろそろ歩き疲れました






「何も無い……普通なら何かあってもいいのに……」





回りを見渡しながら私は呟く

歩き始めてから、かれこれ約一時間くらいだろうか。慣れない服と慣れない靴でずっと歩いているのに、未だ何一つ手掛かりになるものを見付けられずにいた






「静か過ぎ……全く何も聞き取れない。それ以前に…此処はとても、空気が澄んでる……」






丁度道端に咲いていた可憐な花を見付けた私は近付いてその花に触れる

瑞々しい葉っぱ、堂々と逞しい茎、精一杯広がる花びらの咲き方―――どれもこれも空気がとても澄んでいるという証拠だ

よくよく見れば森の樹々も、草花も、この澄んだ空気のお陰で散る事を知らずに堂々と立っている。この澄んだ空気、回りの樹々達の姿を見て―――ピンとくる、ある可能性が私の脳裏を過ぎった






「此処は…聖地なのかな」






私は立ち上がる

高山にいるわけでもないのに此処まで空気が澄んでいるとなれば、何かしら誰かの力が発動されている証拠

高山でも麓でも、森の中でも、いくら酸素を放出してくれる存在があったとしても、この澄み具合は彼等の力でも不可能だ。こんなに澄んでいるものは私が色んな世界を巡っても、聖地しかありえない

聖地の全てが、澄んでいる

色んな聖地に足を踏み入れた事があるから分かる。この清らかさは、聖地の清らかさととても似ていたのだから






「【異界の万人】が造る独特の清らかさ……此処に誰か【異界の万人】の人が訪れたのかな…」






【異界の万人】は死ぬまでその宿命を突き通さなければならない。死んでしまったらその【異界の万人】の魂は、そして力は生まれ変わった新たな自分に受け継がれる。【異界の万人】の宿命は、生まれた時から課せられた、逃げたくても逃げれない宿命…

それを今、私が背負っている

【異界の万人】十代目として、私はこの場に立っている







「【異界の万人】が此処の世界を訪れたなら…何かあるのかな」






前世に生きてきた、かつての【私】

きっと何か残すモノがあったに違いない

それを代を超えて、私が新たに訪れる事になる




―――そして私は……








「…もうちょっと頑張ろう」








私は更にまっすぐ伸びる道を歩き始めた









疲れたなぁ





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