レンガルス=イルミールは俺にとって一番気に食わないムカつく奴だ




理由は簡単

アイツのスカした顔が気に食わない(まぁこれに関しては他の奴等もそうだろうな





出会った当初、突然俺達の前に現われたレンは根強い印象を与えつけた。それが俺達とアイツが引き合うキッカケだった

レンは強い。認めたくないが、俺は今日までアイツのバトルに勝った試しがない。それはオーバだって同じだ。俺達はアイツに勝てていない。俺が強くなっても、アイツはどんどん先に行く。それが一番気に食わなくて、一番ムカつく。なによりムカつくのがアイツが勝った時に浮かべる見下した表情だ。一度くたばってしまえ←








『――――とにかくそういう訳だ。恋人として、俺の主張は間違ってないはずだ。…分かったならさっさとお前らがいる居場所を吐け。居場所を聞くくらい、別にどうってことないだろ?』






別にすぐそっちに行く訳じゃねーしな、と画面に浮かぶ奴の表情はいつもと変わらない不敵な笑みを浮かべている

若干黒い何かが見えるのは気のせいじゃない。隣りに映るあのゴウキさんが溜め息をついているくらいだ。哀れな

つーかマジお前一度死んでこいどや顔すんじゃねぇよムカつく






「…おいおい、お前それマジで言ってんのか?」

『マジもマジで大マジだが?』

「一匹狼だったあのレンが、か?」

『俺は変わったんだよ。…ミリのお蔭でな』

「……――――――」






ムカつく

レン自体気に食わなくてムカつく奴なのに、しかもいつの間にか出来ていた恋人がミリだと?


ムカつくムカつく

ありえない。レンに女が出来る事自体天地がひっくり返ってもないのに(一匹狼は女を側に置くのを拒んでいた)、まぁ女が出来た事はいい。大いに結構。だが、その相手がミリだったら…話は違う


レンとミリが、恋人同士?

あのレンが?あのミリが?




…ムカつくムカつくムカつくムカつく!








「レンガルス!ちょっとちょっと詳しくその話聞かせなさいよ!出会いは?付き合って何か月?初デートは?プロポーズはどっち?!」

「シロナさん!?アンタいきなり何言ってんだよ!?」

「何言ってんのよ!これは一番重要な質問じゃないの!女の子はこういう話は一番大好きなのよ?」

「そういう質問は別の所でしてくれよ俺達の事を考えて!」

「知らないわよ!そもそもアンタ達がミリに告白していなかったから先にレンがゲットしちゃったんでしょ…………ってアラ…?もしかしたらもしかして…この状況って、修羅場?」

『修羅場だな、確実に』

『……………』

「やっだーもしかして昼ドラ?これぞまさに昼ドラ?んもうミリったら罪な女の子なんだから!あ、もしかしてゴウキもナズナさんもミリを狙ってる感じかしら?それこそまさに修羅場ってるわねぇ!レンちょっと頑張りなさいよ奪われない様にね!」

「ちょっとシロナ、君も暫くお口チャックしていなさい」







ムカつく

ムカつくムカつく

ムカつくムカつくムカつくムカつく!





俺は絶対に認めない

絶対に認めてやるものか

レンとミリが、恋人同士だなんて




そもそも、ミリが別の男と仮に(強調)くっついたとしても、ミリがそれで幸せだったら俺は(仕方ないが)認めてやる。けど、そう簡単に気持ちに踏ん切りをつけれる程俺は器用な男なんかじゃない




ムカつくムカつく




もやもやする黒い感情が俺の中を浸蝕していく




ムカつくムカつくムカつく










『…いいぜ?いくらでも教えてやる。なんなら俺が直々にそっちに行って語り尽くしてやろうか?』

「それは楽しみね。――…でもこの居場所を教える事については話は別よ。あなたが恋人だって事はさっきの表情見て分かったし、あなたが嘘を言う人じゃないのも分かっている。……だからってそう易々とミリを渡すわけにはいかないのよ」

『ハッ!よほどお前らは盲目の聖蝶姫が大切なんだな。―――けど、今そっちにいるミリは聖燐の舞姫だ、盲目の聖蝶姫じゃねぇ。それについてどう説明する?』

「それは、」


「―――――…関係ないな」







自然と勝手に自分の口から出た言葉に、全員はこちらに視線を向けてきた

俺は画面に映るレンを睨み付けた

オーバの戸惑った顔が視界に入っている。そういえばコイツは俺の気持ちを知っているんだったな。…あぁ、今俺はどんな表情でいるんだろうか。それすらも憶測になってくる






「盲目の聖蝶姫も聖燐の舞姫も関係ない。アイツはミリだ、紛れもないミリ本人だ。ミリは帰ってきてくれた。生きていてくれた。俺達は六年間、ずっとアイツを待っていた。――………お前なんかに、ミリを渡してたまるかよ」








何年、ずっとアイツを待っていたんだと思う俺達の気持ち、お前には分かるか?

分からねぇよな

お前なんかに、俺達の気持ちが分かる訳がない






…渡さない

絶対に、ミリを渡してやるものか







「俺達はお前にミリを渡さない。ゴウキさん、ナズナさん、アンタ達にもミリを渡さない。絶対にな」

「…デンジ君の言う通りだ。レン、君がいくら恋人だからといって、ミリを手放すわけにはいかないよ。残念だけど」

「ミリは私達が守る。…何があっても、ね」

「レン、お前の出る幕はねぇぜ。安心してお前は雪かきしてろ」

「あらあら、皆言うわね。私はさっき言っちゃったからもう何も言う事はないわ。でも、そうね……もしミリを無理矢理奪うっていうなら、容赦はしないわ」







そうだ、容赦はしない

相手が誰だろうが関係ない


俺達からミリを引き剥がすなら、俺は容赦はしない








「つーわけだ。…肝に銘じとけ」

『!まっ――――』








ブツッ―――






回線を、切った





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