此処はポケモンリーグ協会シンオウ支部

情報管理部が管理する、目まぐるしい数のコンピューターやモニタースクリーン等機材が沢山置かれている、シンオウの全てに関する情報の中心部

情報管理部長アキラを筆頭に沢山の従業員が入り交じる中、そこにはある人物達の姿があった






「また、変わりましたね。怪電波の位置…昨日の調べとはまた逆な位置に怪電波が広がっている」

「随分と敵は用意周到ね。怪電波の発信をランダムにさせるなんて…」

「シンオウは広いですからね、更に特定するのは至難の技でしょう。サラツキ博士達が特定に苦戦していたのも無理はありません」

「しかし、今は大勢の人達の手によって調べられている。この調子でいけばすぐにでも奴等の居所が見つかるはずだ。けして気を抜く事のないようにな」

「「はい」」






チャンピオンのシロナ、四天王のゴヨウ

幹部長のコウダイと副幹部長のジン

シンオウリーグスズラン大会で忙しく動いていたリーグであったが、今回の件によりさらに多忙を極める事になっただろう

今回の"敵"は、自分達が知らないところで活動をしていた。この事実を見過ごしていたとなったらリーグの落ち度なのは間違いないし―――何より本部が、あの総監が動いたとなったら、メンツを守る為にも必ず敵を見付け出し、全ての決着をつけなければならない

情報を盗まれた責任として無給で無休の処罰を与えられクビを免れたコウダイは、更に威厳と威圧を深く醸し出しながら、事件解決に真摯に打ち込んでいる。無意識とはいえそのプレッシャーに回りはタジタジだ。それだけ上からの圧力があるのだろう、そう思わざるおえない

手早く情報を収集したコウダイはジンを引き連れて早々に立ち去った。コウダイの行く先々、彼に恐れおののく従業員が慌てて道を開く姿は苦笑を浮かべるしかない。状況を知るシロナとゴヨウは二人の後ろ姿を見届けた後、自分達も踵を返した





















「丁度今日で一週間…」

「…えぇ」

「…今もあの別荘で?」

「勿論。ミリの部屋以外は嘘の様に無傷だったから、変わらず使っているわ。いつミリが帰って来てもいいように、ね」

「…皆さんもそうですが…シロナさん、貴女もしっかり寝れていますか?」

「……グッスリ眠れるほど、図太い神経はしていないわ。ダイゴ達も同じよ。ミリがまた行方不明になって、あの話を聞いちゃったなら、尚更。それに…ゴヨウ、あなたも同じでしょう?」

「………」






沢山の従業員が行き交う長い長い廊下を、二人は流れに逆らって速足で歩く

二人の顔は真剣だった

真剣だった、しかし、瞳は嘘はつけない。二人の瞳の奥は―――悲しい色を浮かべていた






「たとえ波動が消えてしまったとしても、私はミリの無事を信じているわ。だって、六年間行方不明だったあの子が無事に生きていてくれていたもの。今回も絶対に諦めないわ」

「…私も諦めません。まだミリさんと再会出来ていなければ、約束の謝罪すら出来ていない」

「………」

「…全てが解決して、再会も果たせたら…ゆっくり、あの図書館で本の読み聞かせをしてあげたいものです」








「―――ゴヨウ、貴方の読み聞かせはとても心地好いね。ずっと聞いていたいくらいだよ。ありがとう、こんな私に時間を割いてまで読み聞かせてくれて」






貴女にそう言ってくれるのが嬉しくて

こんな事で喜んでくれるなら、何度でも読み聞かせてあげたい

唯一自分が彼女にしてあげれる事を、約束という形で、繋いだ。純粋な気持ちだった。しかし、まさか、彼女にとってこの約束が負担になってしまっていただなんて―――







「一緒に読書……フフッ、ゴヨウらしいね。シンオウに戻ったら、また私に読み聞かせをお願いね。それが私と貴方の、約束だね」

「ではミリさん、私達も指切りしましょう」

「うん、そうだね。指切り、しましょう?」







優しい彼女だからこそ

自分達は、追い込ませてしまった










「私も…謝らないとね。全てのキッカケは、私が言い出した事だもの。あの子が約束の所為で自分を追い込み、苦しんでいたとなったら……許せる事ではないわ」









「―――…ねえ、約束しましょうよ」

「約束?」

「そう、約束よ。あなたがこっちに戻って来る約束。私はこっちで頑張るから、あなたがあっちで頑張る約束。再会したら、またバトルをする約束よ」

「フフッ、約束が三つあるじゃないの。守る方も大変だよ?」

「いいのよ。それくらいの約束しないと私の気が済まないんだからね!絶対の絶対の絶対の、約束よ。いいね?」








今思えば、自分の身勝手な気持ちで彼女に約束を強要させていた

ホウエンに行ってチャンピオンになる、そう彼女は笑って言ってくれた。嬉しかった。嬉しかったからこそ、お互いに励みになってくれる様に約束を交わした。その為の約束だったのに

破られても構わなかった。むしろあんな事件に巻き込まれていたのなら、そんな約束なんて破ってくれた方がよかった

なんでなの、ミリ

なんでそこまで、自分を犠牲にしてまで約束を守ってくれていたの?









「しょうがない、大切な親友の願いだからね。分かった、ちゃんと戻って来るしあっちでも頑張って、戻って来たらバトルをしよう」

「えぇ、絶対よ。それじゃ、指切りしましょう?」

「そうだね、指切り…しよっか」

「えぇ!」




















「―――あ!いたいた!シロナさーん!ゴヨウさーん!こちらにいたんですね!探しましたよ〜!そろそろ護衛の時間なので行きましょう!」

「えぇ、そうだったわね」

「行きましょう」









お願い、無事でいて

また会えたら、貴女に謝りたい










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