シンオウ地方リゾートエリア

ミリが隠れ家として滞在していた別荘

今もなお関係者以外立ち入り禁止とされている別荘は、半壊したままだ。半壊した部屋はブルーシートが覆われているが、外から見るととても異質だった。豪華で綺麗な別荘に一部分だけブルーシートが被せられたそこは、誰がどう見ても何かあったんだと思わざるおえない

ブルーシートに覆われた部屋―――以外の、被害が何もなかった部屋にて

そこには、ダイゴの姿があった






『――――そう、だったのか………ダイゴ、あまり自分を責めてくれるなよ。誰も君の所為とは言わない。無論、私もこれはダイゴの所為とは言わないさ』

「分かっている。…分かっているさ。でも、そう思わざるおえないんだ……せっかく見つけ出したのに、また振り出しに戻るなんて…」

『ダイゴ…』






別荘の中にあるテレビ電話でダイゴと会話をしているのは―――自分の親友でもあり同じチャンピオンであるミクリ。

久し振りの電話だった。最後に連絡をとったのはリーグ集会でミリの居場所が分かり、無事再会出来たという知らせの時。知らせを聞いたミクリは大変喜び、つられてダイゴも喜んだのが記憶に新しい

それから暫くは連絡を取り合わずにいたのだが―――まさか、次に来た連絡がミリがまた行方不明になってしまっただなんて、ミクリも思わなかっただろう






「今、必死になって捜索している。僕もこの電話が終わったら皆と合流するつもりだ。もう、一週間も経つんだ…これ以上長引かせるわけにはいかない」

『…………一週間、か』

「…そっちは、どうだい?復興は進んでいるかい?」

『……着々と、ゆっくりとだけど進んでいる。まだ死亡者が居なかっただけ救われている。街の皆も必死になって前に進んでいる。他の地方の支援、そしてダイゴのお父様のお力添えもあってかなり助かっている。この調子なら皆も頑張ってくれそうだ』

「そうか…よかった」

『ミリの事は幹部長には知らせておく。もう話は本部から行っているとは思うが、確認の為にもね』

「あぁ」

『…幹部長に、事件の話が実際にあったのか聞いてみる。幹部長は当時副幹部長…知っていておかしくない。あぁ、勿論他の人には気付かれない様にする。この話…四天王の、あの二人が聞いてしまったら…それこそ怒り狂って暴走しそうだからね』

「…そうだね」





ダイゴはミクリに全てを話した。あの日何があったのか、敵の事、今のシンオウの状況、そして―――ミリの全てを

話を聞いていたミクリを一番驚かせたのは、やはりミリの事だった。ミリに襲いかかり負傷した傷、闇に葬った事件、【氷の女王】―――信じられない、ありえないとミクリも動揺を隠せなかった。知らなかったから、聞かなかったから、そんな言い訳なんて通用しない。友人だったからこそ気付けたのに、気付けなかった己の失態をミクリも悔やみ、拳を握り締めるばかり

これは誰にも話せられない話だ。事件は闇に葬った事で誰にも知られる事がなく終わった事件だからこそ、それこそミリを知っている者がこの事件を万が一にも気付いてしまったら―――それはそれは大変な事になるのは間違いない

ミクリとダイゴが真っ先に脳裏に浮かべたのは、四天王の古株メンバーであるゲンジとプリム。ミリの時代から共に歩んでいた二人だからこそ、この話を聞いたものなら怒り狂って荒れるだろう。何故自分達に言わなかったんだ、と。その勢いのままに元四天王で今は一般人になっているロイドとミレイに連絡をとって彼等にも真相が伝えられてしまったら、たまったものじゃないのは目に見えていた。特にロイドはタチが悪いから恐ろしい

二人は大きなため息を吐いた






『……本当だったら私達ホウエンもミリの捜索に乗り出したいところだが…』

「分かっている。ホウエンの状況はシンオウの皆さんは重々理解してくれている。この事件はシンオウの事件、自分達で解決すると言っているよ。むしろ安易に入らない方がいいと思う」

『………』

「…ミクリ、僕は、」

『言わなくていい。…ダイゴ、君はミリの事を最優先してくれ。ホウエンから動けない私達の代わりに、ミリを必ず見つけて欲しい。見つけて、安全が確認して、事件が解決して……こちらの復興も一段落したら、ミリをホウエンに連れ戻してくれ』

「……すまないミクリ、ホウエンは任せた。必ず、ミリをホウエンに連れて帰ってくる。絶対に」






ホウエンの復興があるにも関わらず、リーグ集会を理由にシンオウに訪れ、ミリの捜索からお世話まで全て彼女の為に最優先にしてきたダイゴ

友人であったし師でもあったし元上司でもあり―――自分にとって、大切な存在

ミクリは気付いていた。気付いていたからこそ、ミクリはダイゴの背を押した。そしてミクリはダイゴに託した。自分達の想いを、絆を、自分達が動けない代わりに

ミクリの、否。ミクリ達ホウエン地方全ての人達の想いを受け取ったダイゴのコバルトブルーの瞳は、彼らしい強く堅い決意の光を宿していた




ちなみに、とミクリは不意に口を開く








『こんな時に聞くのも緊張感に欠けるが……ダイゴ、いい加減ミリに告白出来たのかい?』









「……………、………ミクリ、今何て言った?」

『だから、いい加減ミリに告白出来たのかい?って聞いているんだよ。一緒に過ごして数週間は経ったんだろう?そろそろ告白した頃だとナギと話していたんだよ』

「………今のミリは記憶喪失、年齢も何故か17歳だと本人も言っているのは聞いているはずだよね?てか言ったよね?そんなミリに告白なんてしてみろ、フラれる事は目に見えているし年齢的に犯罪だよ。第一ミリに告白とかそんなつもりは…」

『しかし、好きなんだろ?』

「…………。再会したミリは、僕の事をお兄さん的存在としか見ていない。一人の男として見てもらっていない上に、今のミリにそんな気持ちになれるかどうか、それに………」

『それに?』

「今のミリには…彼氏がいる。六年の歳月は何があってもおかしくないとは分かってはいるんだけどね。しかも彼氏は、あのレンだ」

『…………レン、というのはあのレンか?レンガルス=イルミールの方か?………あのレンが女を、いや違う…ミリの彼氏?』

「………あぁ」

『………』

「………」

『………』

「………」




『「…………………」』














『………ダイゴオオオッ!!!!君って奴はああああ!だからぐずぐずしてないでさっさと告白すればよかったんだよオオオッ!!!!』

「うるさいなあああ仕方無いだろ告白する以前に行方不明になっちゃえば再会したら記憶喪失だし歳とって無いって言うし!!!!挙句彼氏がいて相手がレンだったとかふざけた話があったしもう入る隙が無かったよね!!!!無理だったよね!!!!」

『行方不明になる前から告白していれば良かったんだよオオオッ!!!!』

「それこそ無理な話だよミリはチャンピオンだったんだから僕が安易に入っちゃいけない領域をズカズカ入るわけにはいかなかったんだからさああああ!!!!」

『そんな事私達からしたら言い訳にしか聞こえないんだよオオオッ!!!!そんな考えだったから皆にダイゴはヘタレ御曹司って言われているんだよオオオッ!!!!』

「Σちょっと何それ知らないんだけど僕そう言われていたの!?」

『どれだけ私とナギはやきもきしていたか…!全く動こうとしないダイゴに痺れを切らし、全く気付いていないミリを動かそうと、色々手を焼いていたというのに!!しかもレンに奪われていたとはどういう事だヘタレ御曹司大誤算んんんんんッ!!!!』

「距離を置いていた君達に色々言われたくなければ僕の知らないところでそんな風に思っていたなんて心外だ――――ッッ!!!!」















仮に告白していたら

望んだ結末になっていたのだろうか









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