「オホホ、お姉様は無事レンさんと再会を果たしたのかしらね」

「!レン兄ちゃんとね?」

「レンさんって…あ、噂のレンさん?」

「確かミリさんの彼氏でしたっけ?」

「クリス、違う。姉さんの彼氏(仮)だ」

「か、(仮)…」

「あぁ、そうね。クリスとイエローは会った事なかったわね。いつか紹介するわね!…もう、お姉様ったら肝心なところを濁すんだから、実際お付き合いしているかは分からないのよね」

「…ですが、ブルーさんは核心しているのでは?」

「あらルビー、鋭いわね〜。あなたもやっぱりそう思う?」

「(あんなパフォーマンスを目の前でされたら誰がどう見てもそうだと思う※姫抱っこ)」

「レン兄ちゃん元気にしてるといいっちゃ!ミリ姉ちゃんのラブラブっぷりをまた見たいっちゃね!」

「…俺は嫌だな。認めない」

「こんな話がグリーンさんの耳に入ったら機嫌がすこぶる悪くなりそうですね……」

「あーるーこーあーるーこォォォ!(俺は何も知らない聞いていない聞こえない!」

「わたーしはーげーんきぃぃぃ!(グリーンさんの犠牲になりたくねぇ!」










――――――
――――
――










シンオウ地方ナギサシティ


シンオウ地方にあるリーグ協会の窓口でもあり、シンオウ随一の電気発展の土地であるナギサシティ。発電所も兼ねた展望台はジョウト地方のアサギシティにあるアサギの灯台と同じく、船を迎える為には重大な役目を持つ立派なナギサのシンボル

そのシンボルの中にある中枢に、デンジの姿があった






「デンジさん、電気量の消費の制限を掛けました。これで一定量を、たとえ微量でも超える事は無いはずです」

「メインコンピューターとメインコアのセキュリティーも徹底してあるか?」

「はい!サラツキ博士オススメのセキュリティーにしましたので、まず間違いないかと思います」

「そうか…引き続き監視を頼む」

「はい!」





発電所に勤務する従業員と会話をしながら、徹底的に管理を重視する様に命令を下すデンジ

ちょっとした、些細で微量な電気消費量とはいえ、あの話を聞いてしまえば見過ごすわけにはいかない。何せこの微量な電気を、奴等が盗んで使っている。盗んだ電気を悪用しているとなったら、発電所創設者でもありナギサジムリーダーとして電気を乱用する奴等をけして許す訳にはいかない。その電気を使い、シンオウを、大切な者に牙を向けるのなら、尚更

一通り従業員達に指示を出し終えたデンジは、早々に発電所を後にする


このままジムに向かおうとしたデンジの先に―――赤いアフロが、目に入った





「ねーねーオーバおにーちゃん、なんでお外に行っちゃダメなのー?」

「ボクお外にでたーい!」

「「「「でたーい!」」」」

「ダーメーだ!お前らパパとママに言われなかったかー?今ナギサの外は危ないから出ちゃいけませーんってよ」

「やだやだでたーい!」

「「「でたーい!」」」

「おにーちゃん遊んでー!」

「「「「遊んでー!」」」」

「おいおい、そんな事言っちまうとパパとママに怒られるぞー。つーか俺が怒られるっつーの!……仕方ねぇ、バク兄ちゃんが遊んでくれっから、今日はそれで勘弁してくれよー?」

「Σちょっ、俺!?」

「「バク兄ちゃん遊んでー!」」

「「「「遊んでー!!」」」」

「じゃっ、後は頼んだ!」

「うええええ!?ちょっ、まっ、兄貴「「バク兄ちゃーん!」」うわちょっとコラ一気にとびかかrオバジッ!!!!」





わらわらと暇を弄ぶ小さな子供達に囲まれたアフロ、もといオーバの姿。隣にはその弟であり兄に負けず劣らず個性的な髪型をするバグの姿もあった

自宅謹慎の命令が出ているにも関わらず外で遊ぼうとする悪い子供達に注意して帰らせようと試みたオーバだったが、自身が四天王であり子供達に人気だった事が裏目に出てしまい、遊びたい遊びたい遊んでと懐かれてしまう。埒が明かないと悟ったオーバはバグに全てを押し付けて難を逃れる事に


遠くでデンジが自分達の姿を呆れた様子で眺めている事に気付いたオーバは、颯爽とデンジの元へと歩を進めた





「お前何やってんだよ」

「バクに全てを任せた!」

「ついに弟を犠牲にしたか」

「バク、お前の事は一生忘れない」

「酷い兄貴がいたもんだ」






兄貴気質で人当たりの良いオーバで通っているが、結局バグに全てを投げ出すとは。ハッハッハ!と笑うオーバの後ろには、小さい子供達に引きずられて消えていくバグの姿があった

かといってデンジもバグを助けるかと思っても答えはNO。彼にそんな慈悲は無い。消えていくバグの姿をしばし眺めた後、もう興味がないとばかりに歩を進めた。オーバもバクの姿を笑って見送った後、デンジの後を追った



デンジが歩き、オーバも歩く


自然と辿り着いたのはジムではなく―――ナギサ西海岸の浜辺

ミリとの思い出が詰まった、あの場所だった






「………」

「………相変わらず、海は平和だな」

「あぁ…」






陸は今大変な事になっているというのに

海は相変わらず、穏やかで平和だ






「アイツも馬鹿だよな。…深く考えなくてもよかったのにな」

「馬鹿も馬鹿で、馬鹿野郎だ。誰も…そうまでして約束を果たしてくれと、思ってねぇのに」

「真面目だよな。真面目な馬鹿だ」

「あぁ、真面目な馬鹿だ」






海を見て、いつも思い出すのはミリの事

ナギサシティはミリが初めて訪れた発祥の地であり、ミリがシンオウを発った別れの地。たくさん笑い、たくさん思い出を作った、自分達にとってかけがえのない大切な場所―――此処はあまりにもミリとの思い出が大き過ぎた


それから二人の脳裏を過ぎるのは、かつての記憶







「―――ミリ、俺達も約束を交わすぞ。チャンピオンに遅れはとらせねぇ」

「ははっ、それいいな!いっちょ俺達も約束を交わそうぜ!んー、そうだなぁ…ミリ!俺はお前と再会した時は、立派で強いトレーナーになってやる!メラメラに熱く燃え上がるバトルが出来るトレーナーになってお前とのバトルを楽しみにする!それが俺の夢で、俺とミリの約束だ!」

「おいオーバ!テメェ何勝手に抜け駆けしやがるハゲろ!」

「ハゲねーよ!」

「後で覚えてやがれ!……あー、ミリ。俺は…お前が前に言ってくれた人物像に、なれたらなる」

「いや、そこはなれよ」

「うるせぇ。…後、発電所も完成させる。完成したら、絶対にお前を真っ先に案内してやるよ。俺が造った発電所、楽しみにしててくれ。それが俺の夢で、お前との約束だ」







誰がそこまで約束を優先しろと言ったんだ

そんな、自分を犠牲にしてまで約束を強制した覚えはない

少なくても自分達は、再会を約束する為の口実なだけあって

深い意味は無かったというのに―――









「うん、約束だね」

「約束だ!」

「あぁ、約束だ」


「「だから俺達も指切りしようぜ!」」







嫌いだと思っていたなら


何故あの時、言ってくれなかったんだ







「うん、いいよ




 指切り、しよっか?」


















「…仕事が終わったら、今日こそミリを見つけるぞ」

「おう!」










ミリ、無事でいてくれ

再会したらまず説教からだ








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