同時刻―――

地方は変わって、カントー地方タマムシシティ






「ちょっとアンタ達ー!男ならもっとシャキッとしなさいよシャキッとー!」

「お、おー……」

「ちょっ、ブルー先輩勘弁してくださいよ〜!先輩が買ったモノのせいで前が見えないッス!」

「姉さん流石に休憩させてくれ…!」

「島に住むのも大変なんだね…こうして毎回大量買いしなくちゃいけないなんて…」

「潰れる…オレ潰れる…荷物で潰れる…!」





タマムシシティにある、一番大きいタマムシデパート。自動ドアから出て来たのはブルーを筆頭に、頭の上まで積まれた戦利品を抱え込む男子群の姿が

レッド、ゴールド、シルバー、ルビー、エメラルド。所謂荷物持ちとして駆り出された彼等は、フラフラと危なっかしい足取りで沢山積まれた荷物を頑張って運んでいた

その後ろを歩くのは、ブルーの買い物に付き合っていた女子群の姿が





「ブルーさんも大変ねぇ…男子達もっと頑張りなさい!」

「ボクらの荷物も持ってもらっちゃって逆に悪いなぁ…」

「ヘロヘロすぎてルビーの口から魂が出てるっちゃ。エメラルドも荷物に埋もれて姿が見えないとね」





クリス、イエロー、サファイア。応援する子、苦笑する子、心配する子様々。ちゃっかり彼等が持つ荷物の中に自分達の戦利品も入っている辺り彼女達も中々良い性格をしている



カントー、ジョウト、ホウエンを代表する図鑑所有者達

まだまだ子供心真っ盛りで遊び足りないお年頃。今日も彼等は仲良くバトルを楽しみ、買い物を楽しみ(楽しみ?)、交流を深めていく。暫くしたらホウエン組のルビーとサファイアが帰ってしまう為、時間が許す限り遊び尽くす魂胆だ

図鑑所有者の中で唯一不在のグリーンは、今日もジムリーダーとして責務を全うしている。先程皆で遊びに行ったら「このジムは遊び場じゃないんだぞ!」と鬼になったグリーンに追い返されたのは記憶に新しい








「――――あ、ブルーさん」

「何かしら?イエロー」

「そういえば…ミリさんから連絡来ました?」

「そういえば皆に言ってなかったわね。お姉様の連絡は来たわよ!元気にやっているみたいよ〜今リゾートエリアでゆっくりのーんびりしているみたいよ〜」

「り、リゾートエリア?すごいところにいますねミリさん…!」

「!いいなぁミリさん!リゾートエリアだなんて!優雅にリッチにしているんでしょうねー!羨ましいー!」

「リゾートエリア…ミリねーちゃんすごか…!お土産が楽しみっちゃ!」

「お、おーいブルー!そ、そういう大事な話はちゃんと教えてくれよなー!」

「そっすよー!それいつの話っすかー!?いつ連絡来たんすかー!?」

「えーっと…確か二週間前かしら?」

「…姉さん、それシンオウ行ってすぐじゃないか」

「僕らあの後普通に会ってましたよね…?」

「ブルー先輩イイイイ!」

「テヘペロッ☆」








このまま彼等は、何も知らずに平和な時間を過ごすのだ


シンオウに起きている現象も事件も、ミリに起こった悲劇を、その安否が危うい事も、

彼等は何も、知らない


知らなくて、いい









「まあまあ、お姉様が無事にシンオウに着いて楽しんでいるだから!大目に見てちょうだい!小さい事をちまちま言わない!」

「Σ開き直った!」

「まぁミリさんが無事にシンオウに着いたなら安心ですね」

「だな!…なぁーブルー!そろそろ休憩しようぜー。俺腹減ったー!」

「センパイにさんせーい!もう俺ヘロヘロッス!美味しいモン食いたいッスよー!」

「姉さん…俺もそろそろ休憩したい…」

「ちょっ、サファイアそこでミリさんのお土産に期待していないで僕らを助けて…!」

「ヤバい…俺ヤバい…色々ヤバい…潰れる…!」

「気付くともうお昼の時間だったわね。男子達がヘロヘロになっちゃうのもしょうがないわね」

「いったんポケモンセンターにでも行ってご飯食べに行こっか」

「あたしもお腹が空いたっちゃね!」










彼等は何も知らない

どの道彼等は知ったところで、彼等の助っ人は拒まれて終わるだろう



シンオウに起きている事件

因縁蠢く不可解な謎

これは、大人達の戦い

負けられない戦いなのだ



そんな戦いに、子供達を巻き込ませるわけにはいかない





危険だから?――当然だ

この戦いは、今まで通りにいかない。既に人の命が簡単に亡くなっているのだ。こんな戦いに、安易に子供達が関わってはいけない戦い





これは、大人達の譲れないプライドの戦いなのだから













だからこのまま

君達は、束の間の幸せを噛み締めていて







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