まさかゴウキが(臨時だとはいえ)シンオウ地方の四天王の片棒担いでいた事実に驚きを隠せない

マジどんだけ〜、と開いた口が塞がらない様子なミリにシロナは苦笑を漏らした







「あらあら、本当に知らなかったのね。…ゴウキは半年前にはもう四天王としてキクノさんの変わりに業務こなしてくれていたわ。けど向こうも用事があったみたいで数ヶ月休暇をとっていたのよ。その時は正規じゃないし休んでも支障なかったから良かったんだけど………まさかゴウキとあなたが知り合っていたなんて、本当にびっくりしたわ」

「本当にな。ったくゴウキさん教えてくれたって良かったじゃねーか」

「…あー、あの人ってあまり自分の事とか話さない人ですからねぇ…。ゴウキさん、元気ですか?」

「元気だぜ?リーグ集会の時なんかアイツだけ元気だったんだぜ?今じゃ恐ろしいぜ」

「そういえば彼だけ至って普通に会議にいたよね…」

「私も最近ゴウキと再会したけど、彼も相変わらず絶好調だったよ。まぁ彼がそのくらいでへばる男じゃないし、むしろ彼は生き残るタイプさ」

「へばったらゴウキさんじゃねぇな」

「だな」

「(そ こ ま で 言 う か)」







この時点でゴウキがどれだけ(ある意味)強い人かと改めて再認識したミリ

びっくりしたのが全員がゴウキの事を知っていた事だ。四天王ならリーグ関係者の者達なら分かるが、ゲンまで知っているなんて。鉄壁の剛腕がシンオウ全土に有名だという事までは知らない為、ただただ彼等との関係性に唖然とするばかりだ







「ゴウキさん…ゴウキさんは相変わらずゴウキさんだったんだね…」

「何言ってやがんだか」

「あ、ならゴウキに連絡して頂戴よ!ゴウキもきっと喜ぶわ」

「!そうですね、それじゃ私ゴウキさんの所に連絡しま………………せん」

「「(ズテッッッ)」」

「え、しないの?」

「はい。そういえば私ゴウキさんにプチッしてイラッしていましたのを忘れてましたから。いやいや、ゴウキさんだけに限らないんですよねー?むしろ彼と一緒にいるもう一人にイラッとしてプチッしているんですよーハッハッハ」

「(…顔は笑っているけど目が笑ってないぞ…)」








そう、忘れてはならない事実がミリにはあった

いや、ぶっちゃけ此所まで色々ありすぎて忘れていたけど。でも思い出してしまえばフツフツと怒りが沸き起こってしまうわけで

絶対に連絡なんてしてやらないんだから!と此所で無駄な闘志が燃え上がる








「…何かあったのか?」

「別にー?(^_^)」

「(ええぇええ…)」

「ゴウキに限ってないと思うが…何かされたのか?」

「( ´3)〜♪」

「(されたのか…)」

「もう一人の人って誰だ?」

「しーらな〜い(_-# )」

「(そうか、そいつのせいか)」

「…事情は分かったけど私が連絡する隣りに居なさいよ?会話しなくても顔を見せれば向こうも安心すると思うから」

「えー(´A`)」

「ほらほら、そんな顔しないで連絡しに行くわよ」

「…(´・x・`)」

「可愛い顔しても駄目なものは駄目」

「(`ω´ )」

「はいはい、ちゃちゃっと連絡するわよー」









「…可愛いな」

「だな」

「僕らも連絡しようか」

「あぁ」






* * * * * *












その頃、テンガンザンにある豪邸内では









「……………」

「……………」

「……………」

「「「こほぉ」」」

「……………」

「……………」

「……………」

「チャーレーム」

「……………ちょっとアンタ達、三人して険しい顔していないで何か一言くらい喋りなさいよ」

「「「…………」」」







少し遅めの食卓を囲み、食事を終え後は各々自由に過ごしているそんな穏やかな時間が流れている最中だった







アンナの目の前には、リビングのソファーに座る三人の姿





一人は険しい顔はそのままに、ポケギアを片手に持ってひたすら睨み付ける様に黙って見続けている

一人は険しい顔はそのままに、仕事場から持ち出した資料を睨み付ける様に黙って黙読している

一人は険しい顔はそのままに、自分のノートパソコンを開いて睨み付ける様に黙ってキーボードを叩いている






言わなくても大体察しが付いてくれるかもしれないが、とりあえず誰なのかと補足させてもらうと、上からレン、ゴウキ、ナズナの順番になっている







「……………」

「……………」

「……………」

「こほぉー?」


ぽむぽむ


「こぉ!」


ピョーン


「……………」

「……………」

「……………」

「…こ、こほぉ…」

「…………ダメだこりゃ」

「チャ、チャーレ…」






…元々彼等の性格からして騒ぎ立てる様なタイプではないので、目の前の光景は至って普通の、普段から見てきた光景だ

けど、何故揃いも揃ってそんな険しい顔をしているのだろうか。空気が重い、重過ぎる。沈黙が痛過ぎる







「(全く…呆れてモノが言えないわ)」







様子がおかしいと気付いたのは昨日の夕方辺りだろうか

レンの嫁さんが盲目の聖蝶姫じゃないか、と浮上した疑問を調査し始めたナズナとレン、リーグ集会の関係で忙しくなったゴウキの三人を見送ったアンナだったのだが…




昨日の夕飯の時だった

この家庭は家にいる以上、一緒に食事を取るのが鉄則になっている。用事や出掛けている場合は例外だが、昨日は全員家に揃っていたので必然的に食事は全員で取った



が、この時点でもうソレは始まっていた



キッカケは、レンが物凄くどんよりした雰囲気で現れたのが始まりだった気がする。いや、むしろ残りの二人も例外じゃなかった様な。一言でしっくりくる言葉といえば、そう、三人(特にレン)は落ち込んでいたのだ

珍しい事もあったもんだ、というか研究所で何してきたんだと驚くも口には出さなかった。一々成人した息子達の行動に口を出すつもりはない。だからその日の夕飯が沈黙が広がってしまってもさほど気にはしなかったのだ








「(ま、原因は分からなくもないんだけどねぇ)」








原因は指図め、盲目の聖蝶姫

いや、聖燐の舞姫と言うべきか


レンが一番に愛している大切な存在。ゴウキやナズナにとっても大切な存在なのは確かだ。じゃなければわざわざこうして自ら動こうとするわけがない







「チャーレム、道場で掃除するわよ」

「チャーレム」

「ゴクリン達、アンタ達も行くわよ」

「「「こほぉ」」」







とにかく自分は母として見守り、第三者として傍観に徹底する。それが自分が今一番に出来る事だ

アンナはチャーレムと沢山のゴクリン(←)を引き連れてリビングから出て行くのだった






















―――……pipipipipi







「!!!!っミリ…!」

「…残念、俺のポケギアだ」

「糞ッ!!!!!」






沈黙が重く広がるリビングから、よく耳にする着信音が響き渡った

自分のポケギアが鳴ったとすぐさまダイヤルを押そうとするも、鳴ったのはレンのポケギアではなく机の上にあったゴウキのポケギアだった。レンは悪態を付いてポケギアをソファーにぶん投げた

手にしていた資料を置き、ポケギアを手に持ったゴウキはパカリと開いて名前を確認する。が、ゴウキは着信相手の名前を見て訝しげに眉を潜めた






「…どうした、ゴウキ」

「知らない番号だ」

「…センターからじゃねぇのか?」

「いや、センターならセンターの番号がある。…とにかく出てみるか」





ソファーから立ち上がり、ゴウキは廊下に出ながらポケギアの着信ボタンを押した

一体誰なんだ、自分のポケギア番号を知る人物を浮かばせながら「……俺だ」と声を発すれば―――…聞き覚えのある声が、自分の鼓膜を震わせた








『―――…夜分遅くにすみません。ゴウキさん、…お久し振りですね』

「っ、舞姫…!?」










(久々の、彼女の声)



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