それからミリは本格的に別荘で暮らす方向で荷物の整理をし、なんとか腰を落ち着かせた後、時間が時間だったので夕飯を作る事になった 出前を取るよ、というダイゴの言葉を丁重にお断りしたミリは冷蔵庫にあるモノで済ませようと考えていた。…しかし、まぁ、流石に冷蔵庫の中身までは揃っていなく見事にすっからかんだった。当たり前と言えば当たり前なのだが。結局出前を頼む事になり、ダイゴに頭を下げながらご好意に甘える事になった。流石に金は払いました。白亜と黒恋もボールから出し、また彼等のポケモンもボールから出し全員と仲良く夕飯を取った そしてミリは彼等から詳しく盲目の聖蝶姫に着いて話を聞いた 週刊誌でデカデカと光輝く文面で書かれる聖蝶姫の意外な素顔と彼等との関係 彼女は慕われていた。老若男女、人種問わず様々に。それは週刊誌で既に理解している。彼女は盲目だけれど沢山の人と交流があった。デンジ、オーバ、ゲン、シロナ、ダイゴの五人は特に聖蝶姫と関わりがあり、最も親しかったらしい。デンジとオーバは聖蝶姫が"盲目の聖蝶姫"になる前からの付き合いで、聖蝶姫にとって初めての友達だと言ってもいい。ゲンはこうてつじまで彼女と出会い、一週間という短い期間だが共に過ごした旅仲間。シロナは聖蝶姫と所謂ライバル同士で、けどシロナ曰くずっと追い掛けていた憧れの存在でもあったらしい。ダイゴは聖蝶姫がホウエンチャンピオンの時の数少ない友達で、自分をチャンピオンとして背中を押してくれた、良き師匠だった―――……彼等は食事を通しながら、懐かしそうに自分達と聖蝶姫との過去を明らかにした 「アイツがあの時…――」 「んでその時ミリは…――」 「そういえばミリは…――」 「あの子ね、私が…――」 「楽しかったよ、あの時は…――」 しかし、彼等の表情は懐かしそうにしていてもやはり悲しい表情をしていた 会いたかった人間が帰って来てくれた。しかし記憶喪失になってしまった。生きていただけで嬉しいと彼等は言うが、本当に、過ごして来た日々の記憶を覚えていないミリに悲しき思いが募るばかりだった。過去を懐かしく振り返っても、あの頃を知っている彼女は此所にはいない 彼等も流石に馬鹿じゃない。辛くて哀しいのは自分達じゃない、記憶を無くしてしまったミリ本人なのだ、と。分かっていても、やはり過去を振り返ってしまうのだ 「(…まぁいくらでも過去を振り返ってくれても私は一向に構わないんだけどね…)」 彼等が今どんな気持ちで、どんな表情で過去を振り返っているかなんてミリにとってこれほど分かりやすいモノはない ミリは分かっていた 彼等が過去を追い求め、聖燐の舞姫のミリではなく盲目の聖蝶姫のミリを求めているのを 「(―――…まさか此所で、こんな壁にぶちあたるだなんて、ね…)」 ―――だからと言って、今の自分に彼等にどうこう言うつもりは毛頭ない 小さく息を吐きながら、未だ口を動かし話が盛り上がっている全員に視線を向ける 視界の隅では白亜と黒恋がデンジとオーバのサンダースとブースターに懐いている姿が見えた。やはり同じ同種同士だから、だろうか。全員のポケモンがボールから出ている為、かなり大所帯になってしまっているが、まだ部屋が広いと感じれると言う事はそれだけ別荘が広い証しだ 時刻は午後の七時過ぎだ。もう空は真っ黒で、遠くの空に数個の発光体が仲良く寄り添って飛んでいるのが見える。多分アレは蛍ポケモンに違いない。随分と素敵な場所に来たんだなぁ、と改めてミリは思った 「…そういえばミリ、」 「(あ、話終わったんだ)」 「向こうに連絡したか?家族や知り合いにこの事を伝えておいた方がいいと思うけどな」 「そうね、あちらのジムリーダーさん達にも連絡した方がいいわ。…そうだ、私もゴヨウ達に連絡入れておこうかしら。じゃないと怒られちゃうし。オーバ、デンジ、私はゴヨウとキクノさんとリョウとゴウキに連絡しておくからジムリーダーの方お願いするわ」 「(――……、ん?)」 「了解。そんじゃ手分けして連絡すっか」 「なら僕の方もミクリ達に連絡しておこう。ミリ、電話ならそこにあるのを使ってくれ。映像付きのモノが備わっているから使いこなしてくれ」 「……」 「ミリ?」 「………あのー」 「何だ?」 「………………今、すっごく聞き覚えのある名前が聞こえたんですけど……」 「?誰だ?」 「誰かいたかしら?」 「あぁ…アイツだろ?」 「そういやそうだったな」 「彼の事か」 「そういえば彼も一員だったっけ」 「あら?ミリあなた知らなかったの?」 「な、何が…?」 「ゴウキはシンオウの四天王の一人よ。まぁキクノさんが復活するまでの間だけれど」 「…四天王…?」 「四天王」 「ゴウキさんが、四天王…?」 「「あぁ」」 「………………マジ?」 「「「「「マジ」」」」」 「―――――――…………、………………嘘だろぉおおお!!!????」 知 ら な か っ た → |