此処はシンオウ地方ナギサシティ


時刻は12時30分を回った







「あー、まだかしらミリが居る船は!ちょっと遅いんじゃない?ゲン、あなたなら波動でこう…ビュビュッと船を飛ばせるんじゃない?」

「いや、シロナそれは普通に無理だ」

「えー、そこは気合いよ」

「もっと無理だ」

「おいオーバ、お前もこう…アフロパワーでなんとかしろ。オーバーヒートだ」

「しねぇよ!!逆に船沈没しちまうだろ!だったらデンジも停電で蓄えた力で船引き寄せやがれ停電王子め!」

「トムさん、ココアもう一杯頂きたい」






ナギサシティにある喫茶店に彼等は居た

テーブル席に座っているのはシロナとダイゴとゲンの三人に、カウンター席に座っているのはデンジとオーバの二人。ずっと居るのか食べ終えたお皿や飲みかけのコップがちらほらと見受けられる。現在昼時で混み合う筈な喫茶店が何故か彼等の溜まり場になってしまっていた。人っ子ひとりも入ってきやしない。そんな五人を相手するのはカウンターに立つ喫茶店のマスターのトムだ。相変わらずなサングラスを掛け、慣れた手付きでダイゴから注文を受けたココアを提供している


何時間も居座って商売の邪魔になりつつある彼等は今か今かとカントーから出航した船到着を待っていた






「後一時間じゃないか。聞けば予定通り着くんだろ?それくらい我慢しろ。彼女に怒られてしまうぞ?」

「それでも待ち遠しい!六年振りの再会よ再会!あぁ早くこの目でミリを見たいわ〜!仕事終わったら速攻でミリの胸にダイブ☆インするんだから!」

「いーよなぁ〜女はそういう再会を喜べる手段があるなんて。…チクショウ羨ましい!」

「俺はやるぞ。ダイブ」

「いやお前は止めろ」

「そのままベッドにダイブ☆イ「はいお前ミリが来るのが嬉しいからってそんな夢のまた夢な発言しちゃ駄目だろーお前のファンが泣くぞ〜」…本気と書いてマジと読「んだりしたら私のガブリアスのギガインパクトよ」…冗談だ」

「「ははは…」」






此処最近リーグ集会や復旧作業など彼等それぞれが大変なハードスケジュールの中で生活していたのに一切疲れている様子は見受けられない。むしろ爽やかだ。リーグ集会が終わってまだ二日しか経っていないのに、だ

昨日、彼等は折角与えてもらった貴重な休みを削ってこの日に備えてきた。シロナはスズラン大会の準備、は別としてダイゴとゲンは別荘の荷物運び(←)、デンジは新たに改造(止めろ)、オーバは船の艦長と交渉をしていたりと各々自主的に動き続けた


全ては今日やってくる大切な存在の為だけに







「僕とすればミリと再会したらあの別荘を見てもらいたい。中々良いコーディネートになったからね。いやーゲン本当何度も言うけど助かったよありがとう」

「暇だったから構わないが…改めて金持ちの感覚は末恐ろしいと思ったよ…何あの家具。どこぞの英国豪邸なんだアレは」

「んじゃミリと再会したら全員で行こうぜ!ゲンさんが引く程の別荘をこの目で見ないとな!」

「引く程って酷いなぁ。まぁ確かにアレはやり過ぎたと思うけど、彼女の為ならどうって事ないさ」

「ダイゴ…君はもし恋人が出来たら貢ぐタイプだよ絶対」
「やっぱり?」

「別荘に行く前にまずナギサを回るのが先だぞ。俺の改造したジムや発電所を見せて回るんだ。昨日だって新たに改造した部分があるから是非見てもらいたい」

「お前懲りねぇなオイ。つーか俺が艦長と交渉してる最中何やってんだよ殴るぞ」

「ハァ…これがタマランゼ会長が別の日に来日してくれれば私も一緒に回れたのになぁぁぁぁ。…絶対トバリシティのデパートで買い物してやるんだから!男子禁制!」






そう言えば反対する声が上がり、喫茶店の中は笑い声で一杯になる

全員が全員、笑顔だった。楽しそうに笑っていた。ここ半年、彼等は一見普通に見えるが元気じゃなかった。一人になれば思い耽ったり思い詰めたり様々で、勿論それは彼等だけじゃなかった。が、当時盲目の聖蝶姫と接点が特に多かった彼等の方が酷いものだった。でも彼等は笑っている。これから訪れる再会を、待ち望んで


トムはコップを磨きながら静かに彼等を見た。シロナとダイゴとゲンの三人と会う回数は少ないにしろ、普段から接点があるデンジとオーバの姿に少なからず驚いていた。最近見る彼等二人はそれはそれは見ていられなかった程だ。そう、半年前聖燐の舞姫が活躍し始めたあの頃から

盲目の聖蝶姫と聖燐の舞姫が同一人物と核心している。トムだけではなく、此処にいる全員が。勿論此処にはいない他のジムリーダー達も二人は同一人物だと信じて疑わない。その為、先程から楽しく会話をしている内容はまさに彼女達を同一人物だとみなし、彼女の目が見える事前提に話が進められている

誰一人、彼女が自分達の事を知らないという事実を口にしないのも、その為だ







「(信じたくない気持ちは分からなくもないが…心配だ)」







再会した時、記憶が無くなった彼女を見て、彼等は耐えられるのだろうか

生きていてくれただけで十分だと喜ぶのか、それとも自分達を忘れた彼女を嘆き悲しむのか。分からない。それこそ何故覚えていないのかと苛立ち暴力を振ってしまう恐れも、有りうるのかもしれない


変な事にならなければいいが

トムはそう思うしかない








「〜〜〜ッあー!でも心配だわ!」

「?何が心配なんだ?」

「私が居なくなったらあなた達四人であの子と行動するんでしょ!?もう私それが心配!あなた達ミリにセクハラしたら許さないんだからね!あまりの可愛さにデレデレしたりニヤニヤしたりそのままお持ち帰りでもしたら本気でギガインパクト食らわすから覚悟しなさいよ!」

「「「「誰がするか!!」」」」









何もなければいいが…





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