朝だ。地平線から顔を出す太陽の光が眩しくて美しい。寒気から流れる海風も少し肌をさすがこの綺麗な景色前にすれば苦も感じない。まどろんだ眠気がゆっくりと冴えていく

船は相変わらずゆっくりとまっすぐ動いている。その先に見えるのは目的地であるシンオウ地方だ。テンガンザンが此所からよく見える。後少しでシンオウの土地に足を踏み入れると思うと自然と笑みが深まる






「…」

《主、私達は先に行く》







目の前に広がる光景と今日着くだろうシンオウの旅をぼんやり思い描いていたその時、私の頭の中に声が響く

隣りに並んで一緒に景色を見ていた刹那のテレパシーだ。振り向けば声を発した刹那と海色のたてがみを靡かせた蒼華がこちらを見ている。刹那の頭には時杜が座っていて、刹那の言葉でふわりと宙に浮き、蒼華の隣りに並ぶ。蒼華の背中に乗っていた白亜と黒恋も同様に、蒼華の背中からピョーンと降り私に駆け寄ってはよじ登って来た

二匹を定位置に置かせた後、私は改めて刹那と蒼華に向き直る






「蒼華、刹那、時杜」

「…」
《これからシンオウに眠る仲間と再会を果たしにいく》

《私は不穏な動きなるモノを探しに》

《僕はシンオウに住むポケモン達の情報収集をしてきます》

「お願いね。くれぐれも他の人間には見つかってはいけないよ。忘れちゃいけないのは君達は伝説や幻だって言われているんだから。見つかったらすぐに逃げるか姿を隠しなさい。私の手持ちでいる限りボールで捕まる事はないけど、万が一の事があるかもしれない」








三匹の頭を撫で、ポフィンが入った小袋を持たせながら私は言う

これから数日はこの子達と暫くお別れ。三匹は能力もあるし強いからこそ、任せられる。離れ離れになるのは寂しいけど彼等は頑張ってくれるんだ。私も頑張らないとね







「…」
《それはこちらにも言えた事。主人、無理をするな。何かあったらすぐに我等を呼べ》

《なるべく早く戻れる様に最善を尽くす》

《ちょくちょく顔見せます!》

「うん、何かあったら呼ぶね。ありがとう」







このシンオウぶらりレン探しの旅(命名)、どうやら一筋縄ではいかない旅になりそうだ

嫌な予感はこの事だったのか、と思うもどうも釈然としない。コレとは別に何かがありそうな、そんな予感がまだ私の心中深く蠢いている

こういった場合、私の予感は嫌でも当たるから困ったものだ。もし今回も嫌な予感が当たっていたら…出来れば私だけの問題で止どまって欲しい。これがシンオウ全土を巻き起こす事件に勃発して、原因が私ならそれこそ申し訳ないし、シンオウに足なんて踏み入れられない



……いや、もうこの時点で安易に踏み込んじゃいけないのかもしれない



(部屋に置いてある週刊誌)
(書かれている内容が本当なら、私は…――)












《それじゃ僕らは行きます!》

「…」
《行ってくる》

《白亜、黒恋。主を頼んだ》

「「ブーイ!」」








時杜と刹那がふわりと宙に浮き、蒼華は私の隣りからしなやかに跳んで海の上に乗った

朝日が三匹の身体に光を差した。時杜の紅色の身体と刹那の緑色の身体、そして蒼華の空色の身体が朝日に反射してとても綺麗だった

船が動くのに合わせ、蒼華は走る。時杜も楽しそうに蒼華の回り、そして空へクルクルと飛び回った。刹那が最後に白亜と黒恋に言えば二匹は任せてと胸を張った。無表情はそのままに、でも何処か満足げに頷いた刹那は私に視線を寄越し、踵を返して蒼華の隣りに並んだ。楽しく空中で飛び回っていた時杜も二匹の隣りに並び―――私達が見送る中、三匹は徐々にスピードを上げて海の彼方へ吸い込まれていった








「蒼華、刹那、時杜




 ――――いってらっしゃい」
















さぁ、私達も動きましょう





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