『『『こほぉー』』』

「…敢えて深く追求しなかったけど、何でそこにゴクリンが…?しかもいっぱい居るし」

『…住み着いてしまってな…今じゃマスコットキャラになってしまったが』

「あぁ、君の無類のポケモンに好かれる体質は相変わらず健全なんだね」

「「(好かれる体質…)」」

『…そのせいで家がゴクリンで埋もれそうだ』

『…クッションかと思ったら本物のゴクリンだった時はびっくりしたぜ。しかも何か日に日に増えてやがるし…』

『『『こほぉー!』』』

「「(うわぁー…)」」








名付けてゴクリンハウス


―――――――
――――










「―――…ゼルジース様」







真っ暗な空、満天に輝く星の大空

静寂が包み込む暗黒の世界





城の一室の中に、ガイルはいた








「……ガイルか」

「シンオウ支部から受け取った資料です」

「あぁ」








大きな机、俗に言う社長椅子に腰を掛け悠々と仕事らしきモノをこなしていたガイルの主、ゼルジースに歩み寄って持っていた封筒を手渡す

掛けていた眼鏡を外し、走らせていたペンを置きガイルから封筒を受け取るゼル。一際立派なカッターナイフを取り出し、器用に封を開けて中身を取り出し、分厚い資料の量に目を通す






「―――…フッ、あちらもよほど切羽詰まっているのがよく分かる。そんなに手に戻したいか…あの蝶を」

「……盲目の聖蝶姫の事ですか」

「あの集会で奴等はカントーとジョウトに存在を明らかにさせたらしい。ククッ、さぞ驚いただろうな…。認めたくないのか奴等はミリ様の個人情報と聖蝶姫の個人情報を照らし合わせるつもりでいるみたいだぜ」






一通り資料に目を通したゼルは鼻で笑い、嘲笑の笑みを込めて無造作に資料を放り投げる

バサバサと紙の擦れる音が沈黙した世界を響かせ、ゼルとガイルの回り一面にバラバラになった紙が散らばった


愚かな奴等だ、とゼルは静かに喉の奥で笑う。愚かで馬鹿な連中だ、そう吐き捨てたゼルは仕事を再開すべく眼鏡を掛けた






「我等でさえ把握しえないものを奴等が掴めるわけが無い。ましてや迷宮に迷い込んだ情報を見つけ出せるなど不可能だ」

「――――…その事について、一つ」

「何だ」

「鴉が潜り込みました」






ペンを滑らせていたゼルの手がピタリと止まる






「…鴉が?」

「貪欲な鴉は"此所"に眠る光モノを狙いに来たのでしょう。」

「興味深いな。で?その貪欲に飢えた鴉は光ものを求めてどうなった?」

「結論から言わせて頂ければ見事見つけ出せたのでしょう。――…が、鴉の狙う光ものは此所に非ず。見つけ出せたとはいえその光ものがどの場所にあるかは鴉本人も分からない様子でしたが」

「ハッ、なるほどなぁ……―――勝手に泳いでくれるたぁ好都合だ」





器用に手でペンを弄ばせながら、ゼルは意味深に呟く

眼鏡のフレームから覗くカシミアブルーが楽しげに揺らぎ、口元はニヤリと口角を上げる。まるで面白い玩具でも見つけた様な顔だ








「如何致しましょう」

「このまま泳がせておけ。このまま進めば"奴等"の居所が掴めるはず。鴉狩りはその後だ。だが貪欲な奴等は何をしでかすか分からない。警戒を怠るな」

「承知致しました」

「鴉の辿ったルートを見つけろ。鴉が辿り着いた場所が"奴等"の本拠地だ。鴉や支部の人間、そしてミリ様が奴等に辿り着く前に叩き潰せ」

「全てはゼルジース様のお心の儘に」







優雅な動作でお辞儀をするガイルを一瞥し、ゼルは手元にある自分の仕事に顔を向け、ペンをまた走らせた


それからゼルは視線を向けずに淡々と口を開く







「ガイル、燃やせ」

「御意」







自分達の回りに散らばる無数の紙

ガイルはまたお辞儀をした後、パチン!と指を鳴らした





ジュッと何かが燃える音、"蒼い炎"が絨毯一面に燃え走り―――大量にあった紙が、跡形も無く炎に燃えて消え去ったのだった












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