「―――……そうか。分かった、わざわざ調べてくれてありがとう。後は私達に任せて君はゆっくり休んでくれ。………なるべく早めに皆に連絡するよ……あぁ、では失礼する」





ガチャッ――――…





「…カツラさん、」

「残念だが彼女も見つけ出せなかったと言っていた」

「そうか…」







此所はカントー地方


―――ふたごじまの研究所







「やはりそうか…私が無理なら彼女に期待をしていたが…タマムシジムリーダー管轄の部下でさえも見つけられなかったか…」

「君でさえ見つけられなかったならしょうがないさ、ミナキ。今は僕らが出来る事をするのみさ」

「君には仕事があるのにわざわざ来てもらって悪い事をしたね。申し訳ない」

「いや、気にしないでくれたまえ。私もミリ姫の為ならこちらを優先したいのさ。その為にも仕事を全て終わらせたからな」

「頼もしいよ」






空はもう夕焼けが過ぎて陽が落ち、外は夜を迎えつつある。段々薄暗くなってきている空に巣に戻るキャモメ達のシルエットが浮かんでいる

ふたごじまの研究所の研究室に、カツラとマツバとミナキの姿があった。彼等の目の前には大きなパソコン画面があり、机の上には様々な資料が重ねてある。また机の上には二つのカップが置いてあり、コーヒーでも飲んでいたのだろう、飲み干した底が乾いている所をみると何時間も研究室にいる事が分かる






「さて、一からふりだしに戻ってしまったね」

「そうですね」

「…まさか此所まで手間取るとは思ってもみなかったよ」

「あぁ…」





暗い表情を忍ばせながら、彼等は苦々しく呟く








「……盲目の聖蝶姫の情報はまだしも…」

「聖燐の舞姫……ミリちゃんの情報が全然出てこなかっただなんて、ね…」

「――――……」







盲目の聖蝶姫

彼女の個人情報が紛失


一向に調べても見つかる気配はない





なら聖燐の舞姫はどうだろう?


彼女が盲目の聖蝶姫だという確証はまだ分からない。あちらはもう確信がついているみたいだが、彼女の個人情報を調べあげるのは過去が無い彼女の経歴を調べる為でもあり、聖燐の舞姫と盲目の聖蝶姫が同一人物だと自分達が理解させる為

浮上できる核心はいくつかある。彼女の容姿、彼女のポケモン、そして彼女のトレーナーカードだ。聖燐の舞姫のトレーナーカードはゴールドカード。盲目の聖蝶姫もゴールドカード所持者だ。カードが合致していたら二人は同一人物だと断言出来る



――…が、聖燐の舞姫の個人情報さえも見つからなかった








「他に何か手立ては?」

「いや…センターに行ってみてもやはり詳しい情報を入手する事が出来なかった。聞けば名前と顔と出身地、後は番号さえ合っていれば十分らしい。詳しい個人情報まではパソコンに表記されないとジョーイさんが言っていたが…」

「よく教えてもらったね。センターと言えど個人情報には厳しく取り締まっているんだろ?何処のジョーイさんから聞いたんだ?」

「コガネのジョーイさんからな。本人から直接聞くのは違法になるからと…彼女、その場にいたラッキーに話しかけてな。聞き出すのは駄目だが勝手に耳から入るのは不可抗力だ。中々話が分かるジョーイさんで良かったぜ」

「流石はジョーイさんだ。中々頭がいいね」

「だろ?」






トレーナーカードはポケモントレーナー専用の身分証だ

カードには自分の名前と番号と出身地、それと誕生日とカードレベルを表わす星の数が書かれている


しかしこれだけだと本人を示すのには証拠不十分だ

もし個人情報の全てを書かれていた場合、紛失して誰かが拾い、拾ったカードを悪用されるケースがある。実際それが現実に起きてしまい、一時期問題になってしまった事があった。その為、個人情報流通させない為にも敢えて詳しい情報を伏せている

なら詳しい情報は何処に記載されているのか?

運転免許証を思い描いてもらいたい。カードの中にICチップが埋め込まれていて、詳しい情報はそこに記載されている。トレーナーカードは身分証でもあれば保険証としても使われる。ICチップの中には全ての情報が詰まっていると考えてもいい


主にカードが良く使われるのはポケモンセンターだ。ポケモンを回復したり宿泊施設に泊まる際にジョーイに提示させる。カードを受け取ったジョーイはパソコンにインストールしてカードを読み取る。ミナキの言う通り、名前と顔と番号と出身地だけでセンターを利用する事が可能だ。これ以上の事を見るとプライバシーの侵害だとかそういった規制に引っ掛かる為らしい。その為に情報は少なく、且つ分かりやすいものが必要になってくる

つまりセンターもセンターで色々大変で厳しいのだ








「しかし…正式で調べても何も出ないとなると、ミリ姫は一体何の事件に関与してしまっているのだろうか…」






ミナキの仕事は主に伝説のポケモンの調査等を専門としている。一言で言えば研究者でもあるが、正直言って研究者には到底見えない。此所暫くはスイクン追っかけて不在する事無く真面目に仕事をしているらしいが

まぁそんな余談はともかく

彼は自分の立場を利用してリーグのシステムにインストールし、公開されているうん千万のトレーナーの情報を閲覧した(一般トレーナーは一般人は駄目だが研究者とかポケモンに関わる仕事がある人には見れるらしい)(だが見れる職場と見れない職場とまばららしいが)(ちなみに警察は該当する)。様々な情報の中でミナキは「ゴールドカード」の欄を検出し、数人にまで絞られた情報を閲覧するはいいものの―――




無かったのだ。彼女達の、

いや、ミリという名前を持つ少女の情報が





これにはミナキも驚愕通り越して唖然とした

普通ならあってもおかしくない筈だ。無いなんて普通は有り得ないのに、どうして彼女の情報だけが無いのか

その後色々な手で調べてみても詳しい情報は手に入れる事が出来なかった。唯一手に入れたとすれば「コロシアム優勝」「ポケスロン.スピード部門優勝」位だけで肝心な過去の情報が見つからない








「こうなる事を考えれば一度ミリ姫からカードを拝借すべきだったぜ」







――――ピピピピ…








電話画面に開かれた





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