「―――…にっしてもよぉ、先輩マジでマサラタウンからぶん投げちまったんか?普通だったら無理だろ先輩マジですげーよ」

「……目の前の巨大な岩を粉砕したり軽く投げたはずのボールが豪速球だったりリンゴが握り潰されたり鉄の棒を折り曲げたりした事があったな…しかもあの笑顔で」

「Σあの細っせぇ腕にそんな威力があんのかよ!?つーか笑顔でする事えげつねえ!」

「今更姉さんがポケギアぶん投げてシロガネヤマにやってしまっても驚きはしない。笑顔一つで奇想天外をやりこなすそんな姉さんは俺の自慢の姉さんだ」

「ちょっと二人共喋ってないでこのポケモン達どうにかしないといけないでしょ!?」


「「「ギシャァアアアアッ!!!!」」」








暫く戦闘が続いた


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「船の旅も最初はよかれど後は暇よねー」

「本当にね。ポケモンバトルも一通りやっちゃったし」







カントー地方から離れて、何時間が経過したのだろうか

船に乗り込み、出発し、船の探索やら部屋や食事など船に乗っているからこそ受ける感動と魅了を得たものの、やはり堪能したり慣れたりした後は暇になってしまう

船のバルコニーにあるベンチに腰を落ち着かせているエリートトレーナー達も現在暇を持て余していたのだった






「あー…何か暇つぶしないかなぁ…いや、暇つぶしより重大な事態が起こった。一大事だ大変だリッちゃん!」

「何よ」

「萌が足りない」

「…………」

「後キラメくテライケメスな御仁。そうじゃなくてもこう…何か私にときめきを覚える何かが足りない」

「ほら、あっちに少年達が仲良く戯れているわよ」

「ダメだよそこは美少年達が仲良くつるんでこその萌だってば。あんなそこら辺で野グソしてますみたいな少年は頂かないね。そうじゃなくても華やかじゃないからボツ」

「アンタあの少年達とその保護者に謝ってこい」







誰か目の保養になるようなテライケメスな人や萌え萌えキュートな少年もしくは少女達はいないものだろうかとニヤニヤしながら辺りを見渡すエリートトレーナーの一人にもう一人のエリートトレーナーは呆れた様に、でも慣れているのか冷たくあしらう







「萌やイケメンなんてスズラン大会で見れるから我慢なさい。イケメンで強くて頼もしい御仁が勢揃い、…だったらいいわね」

「やけに投げやりですねリッちゃん。そこはちゃんと勢揃いって言おうよ」

「事実よ。二次元のイケメンと三次元のイケメンは極端に違うの。そもそも…二次元に生きるアンタに三次元のイケメンにときめきを覚えたとしても違う方向に爆走して巻き込まれる私の身にも考えて頂戴」

「うん、一息で正論を突き付けてきたリッちゃんに言い返せない」







リッちゃんのこと、リツミは呆れる。いや、呆れる通り越して脱帽だ

相方はエリートトレーナーとしての実力はある。それは認めているし、他のエリートトレーナーに一目置かれているのも事実。だけどそれを裏返す様に彼女には厄介な趣味を持っていたのだ。控え目で言うならオタク、大きく言うなら腐女子。彼女の暴走っぷりに何度巻き込まれてきたか、考えるだけで気が遠くなってしまいそうだ

しかも相方の手持ちのミミロップでさえ同じ趣向だからお手上げだ。気付くと二人で同人誌見て「萌ェエエエブシャァアアッフォワチャァアアアア!!」とか叫ぶ雄叫びを他のエリートトレーナー達に是非見せてやりたい







「その証拠にマジで同人誌持って来られた時はどうしようかと思ったわ…何でシンオウで凄腕トレーナーとして有名な人間を題材にしちゃったベーコンレタスバーガー買って来ちゃってんのよ。色んなモノに手を出すアンタを色んな意味で尊敬するわ」

「いやぁ〜、照れる」

「照れんな。褒めてない」







いつの日かフスベシティに遊びに行った相方が同じエリートトレーナーでフスベジムトレーナーのリリと一緒に「タマムシシティのイベントに乱入してくるんだぜキャッフォオオオッ!」と言って消えてった事があった

ホクホクと大満足な面持ちでリリと帰宅して来た相方達の戦利品を見せてもらった時の事は今でも忘れられない。なにせ同人誌に堂々と描かれていたソレにはジョウトで現在活躍真っ盛りなあの人物達で、ノーマルカップならまだしもマジでベーコン見せられた時は軽くショッキングだった。驚愕のあまり軽くあの二人を直視出来なかった。イケメンなだけに

リリとミミロップと一緒にキャッキャッする彼女達に、完璧ベーコンとして見られる二人が不憫でしょうがなかった








ちなみにベーコンレタスバーガーの存在を知らない人は純粋でいて下さい










「つーことでぇ、シンオウに着いたらまずする事はイケメンウォッチング!萌を補充しつつイケメン狩りじゃああああッ!」

「はぁ…アンタに狩られたイケメンも可哀相に…」

「何言ってんのリッちゃん。イケメンの他にも美少女狩りもするのだよ私は!」

「主張する事じゃないから」

「シンオウの美女といえばチャンピオンのシロナさん!ほらほら〜週刊誌にあるこの人!金髪美人ウハウハ!それに金髪イケメンなデンジさんニヤニヤ!狩るぞ!私は狩ってやるのさ!」

「逆に狩られてしまえ」







しかし腐女子とは恐るべし

腐女子の範囲内が何処から何処までかだなんて分からないが、確実に言えるのは自分の相方は完璧腐女子だと言う事






―――…あぁ、誰かこの馬鹿に喝を入れてもらいたい。いっその事、あの二人にバレてボッコボコにされてしまえばいいんだ。二人の内一人は情報屋だと聞いているからバレたものなら恐ろしい天罰が襲いかかってきそうだ







犠牲にもなっているあの女性の方は大丈夫なのだろうか。聞けばリリのジムリーダーが本人に見せてしまったらしい。…可哀相に、暫く頭を悩ませ軽く直視出来なかったに違いない。同情します。いやマジで

今でもあのジムリーダーが平然と新しい同人誌を見せているし(あのジムリーダーは腐女子ではないが耐性が付いたんだろう)、あの人まであっちの道に走ってしまった時は相方をマジで土下座させて、いやあの二人の前で土下座させて謝罪させよう。目の前で終始ニヤニヤ締まりない顔しては意気込む馬鹿(相方)を見て心を固めたリツミだった







「……ん?」

「どうした。テライケメスな御仁がいたか。ほら狩ってきなさい。私は遠くで他人してるから」

「いやいや、いやいやいやいやいやいや。いや、ちょっと待ってこれって、え、え、ちょ、え?」

「何よ急に挙動不審になって。気持ち悪い」

「リッちゃんリッちゃん。ねぇちょっとこれ見てよ。この週刊誌に載ってる人、めっさ最近見なかったっけ?いやこの人最近絶対見てるし会ってるって!」

「はぁ?シンオウの週刊誌にそんな人がいるわけな…――――」













なんですと





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