「ダイゴ、つかぬ事を聞くが…本当にあの別荘を彼女に譲るつもりなのか?」 「勿論そのつもりだよ」 「………。ゴヨウさんの話は本当だったのか…」 「ほらみなさい。私の言う通りの反応でしょう?先程噂の別荘を見に行きましたが…十分過ぎるくらいの広さでしたよ」 「…………君という人は…」 「あぁ、それでなんだけど。まだあの家に家具が置かれていないんだ。注文すれば一日で届くから、丁度三人いるから一緒に家具を選ぼうじゃないか」 「「え」」 カタログ注文は便利です ―――――――――― ――――――― ――――― ――― ― 「フォッフォッフォッ!いやースズラン大会が楽しみじゃのう!どんなトレーナーがやってくるのか、どんなポケモンを使ってくるのか…たまらんのぅ!」 「左様でございます」 船のオープン広場 そこにあるビニールテラスで一人の老人が椅子に座り、海原を眺めながら熱いお茶を飲んでいた。隣りには一人の女が立っていて、楽しそうだとルンルンする老人の言葉を返答しながら頷いた 老人の名は、タマランゼ会長 リーグ主催者でもあるタマランゼ会長。どのリーグ大会に必ずと言ってもいいくらいに見掛ける、ふさふさ髭ともさもさの髪、そして青いキャップがトレードマークな元気いっぱいのおじいちゃんだ。口癖は「たまらんのぅ」、な彼は今日も必ず一回はその口癖を呟く 対するタマランゼ会長の隣りにいる女性は、タマランゼ会長の秘書だ。タマランゼ会長の次なる行動や予定、所持金もこの女性が管理している。彼女の名前はラン。物静かな彼女は冷静沈着にタマランゼ会長の後ろを着いて歩くエリート秘書でもある タマランゼ会長及び秘書ランは船の旅を楽しんでいた 「会長、既に存じていると思いますがシンオウに着きましたらチャンピオンのシロナさんがお迎えに来られるそうです。それからシンオウリーグ協会で顔合わせした後、あちらが用意して下さる宿泊施設にて、その日の行動は終了になります。次の日からお忙しくなりますので、体調には十分お気をつけを…」 「分かっておるよ。しかしシロナ君か…久々に会うからきっと立派なチャンピオンになっているに違いない。たまらんのぅ」 「シロナさんとはお知り合いでございましたか」 「フォッフォッフォッ、ワシはシロナ君がチャンピオンになった頃から彼女を知っておるぞ。あの時のバトルはたまらんものじゃった。あれから日が経つが、どんな風に成長しているか…再会が楽しみじゃ」 たまらんの〜、と言いながらテーブルの上に置いてある羊羹を一口 ランに入れてもらったお茶をズズズズッと口に含めながら、ふぅとタマランゼ会長は空を見上げた 「そういえばあの時も、こんな晴れ晴れとした良い天気じゃったなぁ」 「タマランゼ会長、お願いがあります!私、ずっと戦いたい人と最後の決戦の場を作りたいんです!どうか、どうか私に力を貸してください!お願いします、タマランゼ会長!」 「たまらんのぅ」 六年前、リーグ大会とは別に行われた特設ステージは何を隠そうタマランゼ会長の力があったこそ出来た事だ でなければいくらチャンピオンになったからといって好き勝手に出来るわけがない。タマランゼ会長は大会の主催者、タマランゼ会長の言葉さえあれば会場を造る事なんて造作も無かった 会場自身が承諾さえすれば、シンオウリーグ協会も手を変えしたようにシロナの言葉に従った。お蔭様で大絶賛大反響を巻き起こし、予想以上に盛り上がりを見せてくれた 勿論あの場にタマランゼ会長は居て、バトルを観戦していた。今でもあのバトルは忘れられんよ、とタマランゼ会長はフォッフォッフォッと笑う 「ランちゃん、君は六年前のシンオウ特別大会は知ってるかのぅ?」 「六年前、ですか…いえ、存じておりませんが…」 「そうかそうか。今度機会があったら見てみるといい。素晴らしいバトルを見る事が出来るんじゃ!あれこそ、まさにたまらんバトルじゃった」 あの大会後、シロナと戦った少女がまさかホウエンでチャンピオンになって、ポケモンマスターになってしまっただなんて…誰が予想ついたか 今、彼女は何をしているのだろう 「こんにちはタマランゼ会長。今日は最南の土地ホウエンへわざわざお越し下さりありがとう御座います」 「フォッフォッフォッ、久しぶりじゃのう!アレから一年経ったけど、君も随分成長したんじゃな。それにポケモンマスターになったんじゃってな!たまらんの〜。おめでとう!」 「フフッ、ありがとうございます。私達が築き上げたこのホウエンを、是非楽しんでいって下さいね」 「…ん?」 「どうかされましたか?」 「…羊羹がいつの間にか無くなっている…」 「…………は?」 アンビリーバボ → |