幾千の時を超え、時を刻み

数多の世界を越え、様々な世界を渡り歩く

孤高の蝶、孤独の蝶

蝶は自由気儘にゆらりゆらりと異世界を巡る








『―――――…そろそろ、頃合かもしれないわね』







クスリと笑う、女性の声

誰もいない、誰も存在しない、音も風も光も無い、異空間の何処かにある世界から聞こえた声。不思議な声色を意味深に響かせる声は、一体どこから聞こえてくるのか――――その事に関しては、永遠に知る事はないだろう。答えはまさに、迷宮の中

そんな女性の声色から感じられるのは、楽観さ故の楽しみさと――――…昔を懐かしむ様な、慈しむ感情

声の女性は、微笑む

久しく振りのかつての親友との"再会"を、そしてこれから始まる新たな物語を








『…―――何百年、いえ、何千年かしら。【貴女】が死に、【貴女】の世界で変わらない時が流れて空間が生まれ、反転世界で安定が保たれたのは。…そろそろ、【貴女】の故郷に帰らせてあげないとね。【貴女】の死を代償に救った【貴女】の故郷は、果たして【貴女】が望んだものになってくれたのかを――――…魂と聖性の引継ぎと共に、あの子の中でじっくりと見定めてもらいましょう』








一つの光があった

誰の干渉も受けない異空間の世界に輝きを放つ、橙色の光

光はまるで何かを呼び寄せている様な、神々しくも儚い輝きを放っていた



この光は、一体何なのか

一体この光は、誰を呼んでいるのだろうか――――…











『――――――…【貴女】の世界は、あの子にどれだけの影響を与えるのかしらね。【貴女】の聖性を引継ぎ、貴女の魂を同化した事であの子は【異界の万人】としてどのように成長をしてくれるのか…フフッ、すっごく楽しみだわ』








ブゥウンと、突如現れた不思議な光

その光の先にある光景の中に、一人の人間が写し出されていた



人間は女性だった。漆黒の長い艶やかな髪と、髪色に負けない深い闇を宿すも透き通って綺麗な瞳を持つ女。年齢は二十歳前後だろうか。その横顔は目を止めてしまうくらい美しい顔立ちは、彼女の雰囲気を含め彼女から醸し出す艶やかな印象が美しさと儚げさをより一層魅せてくれる

空間に突如浮かんできた光の中に写る女は、何やら手に長方形の物を手にしていた。そして、何かを操作している。どうやら仕事か勉強か何かをしていたのか、机の上には書類が散乱している。そんな机の状態など構わずに、女は喜々揚々とばかりに熱心に長方形の物と戯れていた


女はまだ知らない


まさか今、手にしている『ポケットモンスター』というゲームが、新たに始まる物語だと知らずに…







『そして今度こそ…あの子にとって、【貴女】の世界が――――…本当の居場所に、なってもらいたいものね』









橙色の光は輝き続ける

もう一人の――――同じ魂を持つ生まれ変わりの存在に、気付いてもらう為に



そして光が輝く以前から既に、物語は始まっている



橙色の光を取り巻く数々の光。この物語に必要とする大事なピース。物語が始まる序盤から、その世界では采配が振るわれている

何年、何十年、何百年…

この新たに始まる物語の為に、世界は緻密に動き出す。途方もない時の流れの中、それこそ古代の時代から逆上ろうとも世界は、光は、この瞬間<とき>を待っていた







声は面白そうに、笑う

全てのキッカケを作り、物語をスタートさせる鍵を握る元凶は、今宵も高見の見物を決め込む








まだ何も知らない女は、今もなおゲームに夢中










リーーーーーーーン―――…








始まりを告げる鈴の音が、静かに響き渡ったのだった










 series1

Jewelly flower


Start









(さあ、物語のページを開こう)

20121201 修正


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