まず最初に紹介をしよう





「アンタ達が帰ってきて一ヶ月ねぇ…前はこの家も寂しいもんだったけど、アンタ達が帰ってきたもんなら随分賑やかになってくれたじゃないの。ナズナは無事に帰って来てゴウキも元気だし行方不明だったレンも無事だったし、あの人の葬儀も無事に済ませて一件落着!これからはゆっくり出来そうだわ〜」

「チャーレ〜ッム」

「と言っても若い連中には負けないわよ!私だって格闘の道にいる女だからね、此処のシホウイン道場の師範をやり続けるのさ!まだまだゴウキに師範の代を継がすわけにはいかないね!ハッハッハ!」

「「「こほぉー!」」」







この女性の名は、アンナ

見ての通りこの豪邸の主であり、ナズナとゴウキの母である。老いを知らないその肉体は59(今年で齢60歳)を過ぎても大の大人十人を連続してぶん投げれるくらい健全である。ナズナとゴウキとは違い髪の毛はショートカットで短いが、色はゴウキと同じ漆黒の色(白髪がちらほら見えるのは仕様)。元気活発な二人の母は、今日も元気に雪かきで汗を流す

ちなみに先程説明したこの豪邸には道場がある。お分かりかと思うが、その道場の師範は専らこの老女(と言われると殴られるので女性)が勤めている。シホウイン道場、と聞けばその道にいる者なら誰もが知っている超有名な道場だ。出はカントーが発端だが、アンナがシンオウへ嫁に行く際に道場ごとシンオウへ移転したのだ。かの有名なカラテ大王みたいな実力や名誉は残念ながら無かったが、アンナの代になりシンオウへ移転し、息子のゴウキの劇的な活躍によってシホウイン道場の名は飛躍していった。お陰様で門下生はカラテ大王、ジョウトのシジマの道場とは引けを取らないくらい多く、またシホウイン道場に入門し、学びたいと男女問わず多くの門下生が様々な地方からやってくる






「ま、アンナさんがこんなに元気なら暫くお前も自由に出来るってわけだな、ゴウキ」

「まだ継ぐ気はないからな、好都合だ。俺は俺でやりたい事をやらせてもらう」






勿論、この話からいけばゴウキは副師範代としてシホウイン道場をまとめ、引っ張っている身だ。継ぐとなれば真っ先にゴウキがこの道場の師範になる。…が、アンナは全くその気はさらっさらのサラダ油如く考えてはいない

「若い連中には負けないわよ!」と豪快に笑いながら今日もチャーレムと一緒に雪かきで汗を流す(大切なので二回言いました






「そうさ若い内に好きな事はしておくもんだよ!ナズナ、アンタもあの人みたいに引き籠もるんじゃないわよ!たまには外に出て空気を吸いなさいよ〜今度はゴクリン集団だけじゃなくてパラスまで大量発生しちゃうんだからね」

「それは…勘弁だ」

「「「こほぉー」」」

「レン、アンタもいい加減シホウインに入門しちゃいなさいよ。大歓迎よ、私の門下が嫌ならゴウキの門下になればいいさ。なんたってゴウキが初めて指導した人間はアンタなんだからね〜」

「頑固拒否する」

「つれないわね〜。ま、いつか強制的に入門させてあげるから覚悟しなさいよ!」

「全力で逃げてやる」






アンナにとって、レンはゴウキの数少ない親友でもあって自分の教え子でもあり、自分の息子同然

レンもアンナを認めているし、また昔色々(強制的に)仕付けられた事もあってアンナに対して頭が上がらないのだ。だから人に敬ったり敬語何それ美味しいの?なレンも彼女にだけは敬語を(使う時は)使う。殆ど素だけど

あのレンでさえこの仕様。それだけこの女は最強なのだ。シンオウ最強の女は今日も元気に雪かきで汗を流す(大切なので三回言いまry







「しかし明日で一ヶ月が経つんだな」

「早いものだな」

「「「こほぉー」」」

「――――……一ヶ月、か」







壁に立て掛けてあるカレンダーにレンは視線を向ける

明日の日付に赤いペンで丸く囲まれている。それが何かだなんて、言わなくても彼等は分かっていた。レンの視線に合わせてゴウキもナズナもカレンダーを見て、最後に視線を追ってアンナも見る







「アンタ達、いつもあのカレンダー見ているけど…明日何かあるのかい?なんか祭でもあったかしら?」

「チャーレム?」

「「「こほぉー?」」」







赤いペンで丸く書かれたソレ

目線を合わせ、意味深に笑う三人にアンナは問う

彼等がシンオウに帰って来て、家に帰って来て、カレンダーを捲ったらいつの間にか書かれていた赤マル。誰が書いたかなんて知らないし、今更こんな歳で自立している息子達の行動に首を突っ込むつもりもない

けれど日が近付いてくる度に、カレンダーに足を止めて暫く眺める三人(特にレン)の姿を多く見掛けていた。しかも小さく笑う姿を見てしまえば彼等にとってその日は特別な日で、ずっと待ち望んでいるという事だ。あのレンが、あのゴウキが、あのナズナが―――…そう思うとすっごく気になる







「それともあれかい、好きな女の子でもこのシンオウにやってくるのかい?」







冗談混じりに、でもふつふつと浮かぶ女の勘にズバッと問い掛けてみれば、ピクリとレンに反応があった


只の勘だとはいえ、的を得て過ぎている女の勘


アンナの質問でナズナとゴウキは堪える様に喉で小さく笑い、レンはプイッと視線を外す。それはアンナの質問に答えていて――――……









「え、本当?」

「あぁ」

「マジで?」

「マジだ」

「レンが?」

「「あぁ」」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」













「「「「……………」」」」


























「うええぇええええあああああああーーーッ!?(ガシャーーンッ!バリーン!ドーン!)」

「お袋!?」
「義母さん!?」
「!?」







アンナは仰天したのだった









(テンガンザンに悲鳴が木霊した)



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