シンオウ地方、最もテンガンザンに近い215番道路

山の最も麓の位置にあり、人間は殆ど足を運ばない人里離れた場所。ここら一帯はポケモンが住家とし、生活する場所に一つの家があった




雪が吹雪いているせいか、只の一軒家にしか見えない。が、その正体は豪邸だ。豪邸を中心に、左右には見事なまでの大きな道場と研究所が静かに鎮座していた。敷地内もかなり広く、雪が吹雪いていなかったらとても綺麗に豪邸と雪がマッチしていただろう。どごぞのウラニワさん家と同等か、もしくはそれ以上もある

シンオウの最も最北にあるキッサキシティは、氷ポケモンが最も多い地域でもある為、年中無休と言って良いくらいに雪が降り続いている。テンガンザン付近にいてもやはりキッサキ寄りなので、雪の被害は嫌でもやってくる。吹雪きが収まり、日光が照らし明るい陽が差せば、誰もが驚愕するくらいの立派な建物な筈。なのに今ではその面影すらない






「今帰った」





大きな扉を開き、広い玄関に入って来た先程の青年達

外で雪を払ったみたいだが、頭や肩にまだ雪が残っている。冷たい手を擦らせ雪を払っていると、玄関から左側の通路から誰かの足音がやってくる

先に現れたのは、ひょっこりと壁から顔を覗かす……ゴクリンが一匹。そのゴクリンの上に乗る様にゴクリンが一匹、またその上にゴクリンが一匹と…合計六匹のゴクリンが青年達を迎え、「こほぉー」と鳴いた

それは「おかえり」の一鳴き







「あぁ、邸に変わりはないか?」

「こほぉー(´3`)」
「こほぉー(´3`)」
「こほぉー(´3`)」
「こほぉー(´3`)」
「こほぉー(´3`)」
「こゲホッ(´3`)」←咳

「そうか。…外はまだ寒い、今の内に風邪を治しておけゴクリンその6」

「こほぉー」

「…相変わらずだな…」





「チャーレ〜ンム」








塔になったゴクリンの壁から、今度は一匹のチャーレムが現れた

その手に持っているのは二枚のバスタオル。玄関まで歩み寄り、一枚ずつ青年達に手渡す。礼を言った二人は寒い場所から暖かい場所に入った事で雪が溶けて濡れた服や髪を拭いていく

拭きながら雪で冷たくなって濡れた靴やブーツを脱いで足を踏み入れた時、ゴクリンやチャーレムが現れた場所から一人の影が現れた







「お前ら…相変わらず派手にやってきたのか。こちらまで衝撃が響き渡ったぞ





―――ゴウキ、麗皇」

「ナズナか…」

「今帰ったぜ」

「あぁ、中は暖かくなっているから風邪を引く前に身体を暖めておけ。今義母さんが飲み物を用意しているからな」

「分かった」








肩甲骨まである長い茶髪、灰色の瞳、左目は眼帯を付け白の服を身に纏う男、ナズナ

漆黒の髪を高く結い、ナズナと同じ灰色の瞳、焦茶色のバンダナと手袋は変わらずに全体を灰色の服を着込む青年の一人、ゴウキ

白銀色の髪を後ろに縛り、ピジョンブラッドの瞳、黒の服を統一し腕にあるオレンジ色の腕輪を光らせる青年の一人、レン












彼等はミリと別れて一ヶ月、人里離れたこの地でひっそりと生活を共にしていた























「よーゴクリン集団。お前ら相変わらず元気だな」

「「「「「「こほぉー」」」」」」

「「「「「「こほぉー」」」」」」

「「「「「「こほぉー」」」」」」

「ははっ、そうか」

「…………おいナズナ…ゴクリンまた増えてないか?」

「…俺に聞くな。コイツらに聞け」




「「「こほぉー」」」













三匹のゴクリンがよじよじとナズナの身体によじ登り、頭と肩をゴクリンで埋もれるナズナ。小さく溜め息を吐くナズナに相変わらずだなと、ゴウキは自分にもよじ登ってきたゴクリンを摘みあげる

この邸には、何故かゴクリンが大量発生している

元よりゴクリンはこの地域おろかシンオウには生息していないポケモンだ。確認された地方は最南のホウエン地方だと知られている。しかしここ最近になってシンオウでもゴクリンが見つかっている情報が何個か見掛けてはいたが、あながちその情報は間違ってはいなかった



お蔭様で、この邸にゴクリンが大量発生している(大切なので二回言いました



理由なんて至ってシンプル。原因はナズナだ。無類のポケモンに好かれるナズナにきっと一匹のゴクリンが着いて来ていたのだろう。それからナズナの住む邸があまりにも居心地が良かったのか仲間を呼び集めて、結果ゴクリンが大量発生してしまったのだった

最初にゴクリンの存在に気付いたのは、今人気のゴクリン人形が何故ソファーに置いてあるのかと不思議に思い、摘みあげたら実は本物だったというオチ

今ではこの邸のマスコットキャラになっていて、沢山のゴクリンが訪れた人達を出迎える癒しキャラクターになっている










「――――…アンタ達、まだこんな所にいたのかい?」

「お袋か…今帰った」

「どうも」

「えぇ、おかえり。今日もえらい張り切ってきたわね。コーヒー出来たから早くリビングにいらっしゃいな!ゴクリン集団にはホットミルクを用意してあげたからね!」

「「「「「こほぉー!」」」」」








彼等も元気に生きていた





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