『――――あらあら?まーたちょっと別世界の監視に席を外していたと思ったら、ミリの姿が何処にもいないわねぇ………』 『おかえりなさい、フレイリ。今、大変な事になっていますよ』 『大事な場面を見過ごすなんて私ったら!…………あらあら、ダメじゃないのレンガルス。結局間に合わなかったじゃないの!………って、アラ?この子は……』 『……えぇ、"彼"ですよ』 あの人の、もう一人の生まれ変わり ―――――――― ――――― ―― レンとゴウキとナズナの調べ上げた『彼岸花』の情報と 聖蝶姫が闇に葬った全ての真実が明かされた 短時間で内容が濃過ぎたこの話は彼等に大打撃を与え、衝撃を与え、絶望に突き落とした シロナやデンジとオーバを始めとしたシンオウに住む友人達は、聖蝶姫の身に起きた事件は勿論、"約束"の所為でミリをチャンピオンに縛り付け苦しめさせてしまった事に後悔し ダイゴはあの事件と【氷の女王】の悲劇に全く気付けなかった当時の自分を呪い コウダイとジンはシンオウに『彼岸花』という脅威が人知れずずっと闇に潜んでいた事に気付かなかった自分達に憤慨していた 沈黙広がる店内で唯一聞こえるとしたら、涙を流し、鼻を啜る音のみ ―――もし此処に、強制的に家に帰らされた未成年組がいたらどうなっていたか 少なくても未成年組が聞いていいような内容ではないことは明白であり、強制帰宅させた後に独白で呟いたジンの言葉をやっと理解出来るものだった ――――時刻はもう、次の日を跨いでいた 『――――これ以上の話は止めておいた方がいいのかもしれないね。気付くともうこんな時間になってしまった…あともう一つは後日改めてにしようではないか。…残りの件は、急な話でもないだろうし』 「…そうだな」 「「………」」 「―――差し支えなければ教えて頂きたい。その件は、ミリ様と聖蝶姫の関連性の事についてでしょうか?」 『えぇ、その通りです。我々は元々、彼女達の関連性を見つけ出す為に動き出しました。調べはつきました、が…今の状況は避けた方がいいかと思って提案しました。…総監、如何致しましょう?』 「別の日に改めろ。その話こそ一番ややこしく、凡人には理解出来ねぇレベルだ。尚更、今のコイツ等の状況なら無理だ」 『ありがとう御座います。ではその様にしましょう』 心身共に疲弊している彼等には、これ以上の事は酷だろう 一旦此処は引き上げて彼等を落ち着かせよう。落ち着いて、休んで―――もう朝日が過ぎたら活動しなくてはならない。ミリを捜索しにいかなければならないし、『彼岸花』の対策も考えないといけないのだ。彼等はリーグの一員、シンオウ地方の代表として動いてもらわないと困るのだから 『…―――時に、総監。宜しいでしょうか』 「なんだ」 『総監は何処から何処まで把握していたのですか?あの事件の事は知らなかったとはいえ、後の事は全て認知している様子でした。本部ではどのように報告されていたか…差し支えなければ教えて頂きたい』 「いいだろう。…ガイル、」 「はい」 今まで誰もが疑問に思っても口に出さなかった事を、皆の代表としてカツラはゼルに問う その質問が来るだろうと予測していたゼルはガイルに答えさせる様に促した。ガイルは一度ゼルに一礼をした後、画面に映るカツラ達を含めたレン達三人に事の事情を代表として伝え始めた 「―――まず犯罪組織『彼岸花』につきましては、ゼルジース様とレンガルス様のご両親がお亡くなりになられた事を知ってから、ゼルジース様が独断で調べ始めた事が全ての始まりです」 「『「!」』」 「!…お前、」 「…………」 「それが三年前、ゼルジース様が20歳の時でした。ご両親の死を知ったゼルジース様はその悲惨な死に疑問をお持ちになり、監視員数名の小隊を結成させ、シンオウへ内部調査をさせました。奴等も中々尻尾を掴ませず長期化になってしまわれましたが、結果として『彼岸花』という犯罪組織に辿り着けました」 「が、だからといって確証が無かった。まだそれは俺達の憶測に過ぎない、仮定がしっかり成り立ってないと全てが始まらねぇ」 「今から半年前―――それこそ聖蝶姫の記憶が蘇った時期にこそ、やっと疑惑が確証されました。内容はゴウキ様がおっしゃった通りです。この事件は聖蝶姫無しでは解決出来ない次元だったのです」 だからこそ、尻尾が掴めなかった 長期化になってしまったのも、無理はなかった けれど優秀な部下達は諦める事なく三年間見えない敵と奮闘し、仕事を全うし続け―――ようやく、『彼岸花』へと辿り着けたのだ 「しかし、問題が一つありました」 「俺達が奴等に手を下すなど、造作も無い事だ。…だが、」 「リーグ本部の力を駆使しても―――奴等の本拠地が、掴めなかったのです」 『『『「「「!!」」」』』』 → |