衝撃的で驚愕的な自己紹介を終わらせた彼等全員は、フィールドから出て先程のパーティー会場に戻っていた








フーディンとヤドキングの手によって設置されたパソコン機具やプロジェクター等の機材が揃っていて、いつでも説明可能状態になっている。流石サラツキ博士のポケモンなだけあって、手際が良い。ナズナはそのパソコンの前で、物凄いスピードでパソコンのキーボードを打ち込んでいた。何処となしに顔が険しく、ゼルの傍で紅茶を入れているガイルを睨んでいる様に見えるのは、気のせいじゃないだろう。時折マイクで誰かと会話しているらしく、小さくスピーカーから数人の声が聞こえる。きっとナズナ側の人間なのだろう

ゴウキはナズナの近くに腰を下ろし、腕を組み目を閉じて沈黙を守っている。近くの壁際にはレンも同じ様に沈黙を守っていたが―――その視線の先は、ゼルの姿が。ピジョンブラッドの瞳はずっと彼を睨み付けているが、見られている事なんてお構いなしにゼルは自分が手掛けたミリの氷像に満足した面持ちで、氷像を見上げながら優雅にガイルの淹れた紅茶を飲んでいた

ただでさえ、レンとゴウキとナズナの三人組がいるだけで警戒と不穏な空気になるというのに―――新たな乱入者、しかも総監が現れたとなったら空気はさらに重いモノになってしまっていた











「…しかし驚いたわ。レンガルスに兄弟…双子で、生き別れで、その兄が総監だっただなんて…」

「あぁ…にわかに信じられない。けれど事実は事実……僕らの上司には変わりはない」

「トウガンさんの話を聞いて、少しレンの事が分かった気がすんぜ…アイツにも色々あったんだな……」

「(だからあの時……)チッ、気に食わないのは変わりねーよ」

「デンジ、言葉は控えた方がいい。君の上司なら何をされるか分からないぞ」







重苦しい空気の中―――シロナとダイゴとオーバとデンジとゲンの五人は、ゼル達にバレない様にこっそりと小声で会話をしていた


視線の先は勿論"彼等"の姿

レンとゼル、そしてゴウキとナズナとガイルの五人

レンとゼルの関係性は理解出来た。事情がある二人に自分達から介入する事は出来ない、家族間の問題…まだ話は分かる。言い合いみたいな感動の再会みたいなよく分からない幼稚なソレを止めれた、ゴウキとナズナにもきっと彼等二人との関係が深いのだろう。特に今、あのナズナが凄みを利かせてガイルを睨み付けているんだ、因縁ともとれそうな、彼等の関係…口に出さずとも全員は薄々勘づいていた

でなければそう簡単にあの輪の中に入っていけるわけではないし―――(主にナズナ)あの三人からひしひし伝わる、こちらが冷や汗をかいてしまうくらいの強い警戒心を露にする事もない

彼等にはきっと、何かがある。果たしてそれが自分達が介入していいレベルかどうかは、分からないが









「まずはそいつらが調べ上げた情報とやらを全員に話してからだ。俺が直々に指揮を取る。異論は認めねぇ。…コウダイ、話が終わったらお前の処分を言い渡す。覚悟しておけ」

「!…分かりました」

「ッ……コウダイさん…」

「処分…!?何故幹部長が!?」

「それは後だ。まずは情報を知る事が先だ」









コウダイとジンはゼルの近くの席に座り、冷静に沈黙を守っている。しかしあの厳格で物事に動じないコウダイが、ゼルに対し冷汗を流し、何かを諦めた表情でいるのだから、回りは一体彼にどんな処分が下されてしまうのか不安に駆られた。ジンも冷静に居ようとしているが、内心とても複雑なのだろう。自分の上司がどんな末路に追い込まれるのか、またシンオウ支部はどうなってしまうのか―――

対するアスランは―――小声ではあったが、この状況でありながらもなんとゼルと会話をしていた









「君が…リチャードの息子だったんだね。初めまして、私の名はウルシバ・アスラン。君の話は聞いていた…死ぬ前にリチャードの息子に会えてよかった」

「…お前の事は報告書で知っている。元ホウエン支部幹部長、前任の数少ない友人。そして…あの御方の義理の父親」

「リチャードは君を愛し、期待していた。リチャードが死に、私もリーグを去ったから全く本部と接点が無くなってしまったから…こんな状況であれ、君に会えてよかった」

「………、一つ聞く」

「何かね?」

「前任は生前、俺に会わせたい人がいるとよく口に出していたらしい。…アイツから、何か聞いていたか?」

「会わせたい………あぁ、それはミリ君の事だね」

「!!」

「リチャードはミリ君を随分気に入ってくれていた。自分の息子と私の娘を引き合わせたかったのだろう……今となったら真実は闇の中。しかし……」

「しかし?」

「いにしえの再会がどうだか…そう、よく口にしていた。今もその意味が分からずしまいだが…」

「ッ!!………フッ、そういう事か」

「けれど、"あの御方"……先程もあの御方と言っていたが、それはミリ君を指しているのかね?」

「……その問いに答える事は出来ない。しかし、あの御方を守る立場であるのは間違いない。総監としてもな」

「…………」







紅茶の芳香楽しみ、カップを揺らし、愛しげにミリの氷像を見上げるゼルのまなざしは、先程の様子とは一変した優しいもの

何故、初対面のはずなのにミリをその様な目で見るのか―――アスランには分からなかった

後ろに控えるサーナイトも、ガイルも、ただただ静かにゼルの姿を、そしてミリの氷像見つめているだけ。もし、リチャードの言葉の意味を本人から聞いていたら、ゼルの言う"あの御方"の意味も、分かっていたのだろうか―――















―――ピピッ…




ブゥウン―――














「よし…無事、回線が繋がりました。…カツラさん、そちらに問題はないか?」

『あぁ、しっかりとよく見えている。久し振りだね、集会以来だ』

「!…あの人は確か、」

「カントーリーダーのカツラさん!」

「お待たせしました。では早速、本題に入らせて頂きましょう。…………総監は存じているかと思いますが、まずは彼等の紹介から―――」
























予想外の出来事が起こりましたが


やっと、本題に入ります








(この後彼等は驚愕する事になる)



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