走る、走る

ひたすらに、走る





振り返っちゃいけない

捕まっちゃいけない






ボロボロになっても

傷付いても

走る、走る、ただ走る






伝えにいかないと

助けを呼ばないと


あるじ様の、ピンチを―――






―――――――
―――――
――













突如としてレンに似た男―――ゼルジースは喫茶店に入ってすぐに行ったのは、店内一斉掃除。スズナの造ったミリの氷像を「あの御方を愚弄しているのか」とサーナイトを使ってやり直させ、また店内に色付く花々の飾りを見て「オレンジ色の華が少ないのはどういう事だ」と自身のロズレイドでさらに色とりどりにさせ、用意していたケーキを見つければ「なんだこの手抜きは。俺が直々に作ってやる」といちゃもんをつけるなど、初回から色々とやらかしてきたのが始まりだった

勿論回りも黙ってなんていない。真っ先に彼を止めに入ったのはデンジとオーバだった。レンと同じ顔で同じ声だけでも問題なところ、今から大事な話があるのに、つーかお前誰だよ!と二人はゼルに食ってかかった

当然ゼルは眼中に無いと二人をあしらい、レンと同じ顔で鼻で笑うものだから二人はカチンと何かがキレるわけで。彼等がポケモンバトルに転じるのも時間の問題だった






そしてバトルが始まった






デンジ&オーバ対ゼルのダブルバトル。二人が繰り出したポケモンはエレキブルとブーバーン、彼等の主力No.1のポケモンだった。対するゼルが繰り出したのはキリキザン。初めて見るポケモンに目を奪われた二人だったが、バトルはバトル。ナギサジムリーダーとして、シンオウ四天王として、この不届き者を成敗してやる!と熱く燃えた

キリキザンを繰り出したまではいい。なら次のポケモンはゼルの後ろに控えるサーナイトか?そう思ってもサーナイトは一向にバトルフィールドに立つ事がなく、ただ静かにゼルの傍にいるだけ。「もう一匹はどうした?さっきのロズレイドか?」そう問いてもゼルは自信ありげな表情を崩さずに、「お前ら相手ならコイツ一匹で十分だ」―――そんな答えが返ってきたもんなら、二人の怒りのボルテージがメラメラと上がっていってしまうわけで






バトルは始まった

お言葉に甘えて2対1で、フルボッコにしてやるよ!と始まったダブルバトル。長年の幼馴染みでもあるデンジとオーバのコンビネーションは、誰もが目を張るほどの実力を兼ね備えている。デンジとオーバ、エレキブルとブーバーンも互いに意思疎通が出来ているのも相成ってか、素晴らしいコンビネーションでのバトルだったのは間違いなかった

普通だったら、勝利してもいいくらい素晴らしいバトルだっただろう



しかし、現実は違った







ゼルの繰り出したキリキザンは、襲いかかる二匹の猛攻などなんのそのといった感じに躱し、躱し、躱し―――二匹の行動そのものが遅いとばかりに悠然と立つキリキザンにデンジもオーバも、エレキブルとブーバーンも怒りのボルテージがメラメラメラメラ燃えに燃えていって



二人と二匹は戦った。ありったけの力を、気持ちを、全てぶつけた。激しいバトルだった。しかし、どう足掻いたところでゼルとキリキザンの方が一枚上手だったらしい

結局キリキザンに攻撃が当たる事もなく、傷を負わす事もなく―――反撃に転じたキリキザンの攻撃に、呆気なく二匹は戦闘不能にさせられたのだった











「―――…なんだ、所詮支部はその程度の実力か。その実力でよくジムリーダーと四天王が務まるものだ」








カシミヤブルーの瞳は彼等を見下す

肩を竦め、敗者を相手に鼻で笑う









「恥を知れ、愚か者共が。その程度の実力であの御方を守ろうとするなど、百年早い。勿論、他のお前達にも言えた話だ馬鹿野郎。そんな実力で、何を守る事が出来るんだ。今一度修業しなおしてこい」










威厳を含ませた声色は容赦無く彼等の心を突き刺した。何も言えなかった、何も言い返せなかった。大切な者を守れなかった彼等にとって、ゼルの言葉は深手を負うほど痛烈な言葉の攻撃だったのだから




そしてすぐに――――













「―――ゼルジース!!!」









ゼルと同じ顔、同じ声、同じ髪

唯一違うのはピジョンブラッドの瞳






彼等の登場で、場の雰囲気が大きく一変する事になるのであった













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