一方、その頃 カントー地方ふたごじま 「―――――まさかミリ姫が行方不明になってしまうとは……しかもやはりミリ姫は狙われた、ナズナさんが昔に壊滅させた『彼岸花』に……ロケット団も絡んでいるとなったら、状況は本当に厳しくなりそうだ」 「そうだね…ミリちゃんだけじゃなく、シンオウ全土に更なる被害が起こりそうだ。勿論、こちらにも言えた事…」 「…ミリ君……」 研究所の一室に、カツラとマツバとミナキの姿があった カツラからマツバへ、マツバからミナキへ。シンオウ地方で起きた事件を唯一知る者として、カツラによって収集掛けられたマツバとミナキ 気持ち良くスイクンと戯れていた夢を妨害され、始めはマツバを生霊と決め付け攻撃しようとするも、ミリの行方不明を聞きすぐさま飛び起き、パジャマのままでマツバと共にスリーパーのテレポートでカツラの研究所へやってきた二人(※なので彼は現在進行形でパジャマ姿です)。既に話を聞いていたマツバはともかく、改めてカツラから事情を聞いたミナキはただただ驚くばかり 今現在、カツラはナズナからの連絡を待っている ナズナから事情を聞き一旦連絡を絶ってから、軽く二時間が経過している。あちらにはあちらの準備や事情があるのは分かっているが、この待っている沈黙の時間がとてももどかしくてしょうがない 「…時にカツラさん、ナズナさんは彼等に何処まで説明するつもりなんだ?」 「概ね全てを話す、と言っていた。私達が調べ上げた情報を、彼等にも知ってもらう為にも」 「『彼岸花』の事は勿論、聖燐の舞姫と盲目の聖蝶姫の関連性を問われる事になる…か。勿論、リーグが葬った事件も?」 「あぁ。『彼岸花』とミリ君の関係を繋げる重要な事件だからね。彼等には、しっかり知ってもらわないといけない。…彼女を知っていた分、辛く悲しい話になってしまうだろう」 「「…………」」 カツラは勿論、マツバとミナキにも"あの話"は耳にしている 盲目の聖蝶姫が不届き者に襲われ、怪我を負い、心の傷までも負ってしまった―――あの忌々しい悲しい事件を ゴウキから直接話された内容は三人に強いショックを与えた事は間違いなく、またミリに対する怒りの感情を芽生えた事も事実。彼女を身近で見て、知っていたからこそ、誰にも悟らせず誰にも信用せず自分自身で闇に葬った彼女が許せない気持ちでいた。しかし、リーグの立場上そうせざるおえなかった彼女自身の立場を踏まえてしまうと、何も言えなくなってしまうのが現状 当時まだ未成年だったとはいえ、被害者にしたら酷な事件。また聡い彼女だからこそ、自分を押し殺してでも闇に葬ったのだろう。回りに迷惑を掛けない為にも、リーグの痛手にならない為にも 少なくても、この事件と『彼岸花』に関係はある。三人を含めレン達も同様に勘づいている。まだ証拠も何も得られていないが、いつか必ず関連性を突き止め、真実を明らかにしてみせる それほどまでに奴等『彼岸花』は、あまりにも脅威なのだから 「私はこの件に首を突っ込んだ以上、仕事を休んででもミリ姫の為に動くつもりだ」 「頼もしいよ、ミナキ君。私もジムリーダーとして、ミリ君のおじいちゃん的存在としてもナズナ達の支援に勤しもう。ジムも暫く休暇しよう、万が一にもシンオウにいけるように」 「他のジムリーダーに悟られたりとかは?」 「大丈夫さ。私も年齢的に歳だ…前にも事情があって休暇していた時があったからな、体調不良として終わるさ。…それに、セキエイリーグの幹部長も私の休暇を認めてくれるはずさ。この件を話せば尚更」 彼等の決意は固い 否、彼等の決意"も"固い ミリという人間に会い、ミリという人間性に触れ、またミリという摩訶不思議な存在に導かれてしまった以上―――自ずと運命に巻き込まれてしまうのも、仕方がない事 無意識に導かれ、巻き込まれてしまったとしても、彼等は勿論気付かない。全ては自分の意思で、その運命を切り開いているんだと確信して だからこそ彼等はミリの為に動くのだ まるで家族みたいな大切な仲間に、代わりはないのだから 「マツバ、お前はどうする?」 「勿論、気持ちは二人と一緒さ。ミリちゃんの為にも、ジムを休暇してでも捜索に当たろう。僕は僕で探し出してみせるよ、ミリちゃんの手掛かりを」 「!……千里眼を使うのだな?」 「あぁ」 マツバは千里眼を持っている。忘れてはならないのは千里眼を駆使し、ナズナの記憶の欠片の光を見つけ出した実力者でもある。たとえ他者の介入から知り得た情報だとはいえ、結果が全て。マツバの中で揺るぎない自信がついたのも事実だった 研究所から見えるふたごじま。窓からその姿を眺めながら、マツバは言う 「……此処は静かでいい。あの山の上で探すにはもってこいの場所だ。カツラさん、暫く此処に滞在させてもらうよ。範囲が広過ぎるから長引いてしまうかと思うけど」 「勿論、構わないさ。好きなだけいてくれ」 「しかしマツバ、ミリ姫は…」 「…ミリちゃんの波動が無くなった、それは百も承知。そうなったら…別の手掛かりを中心に探し出してみせる。そう、別の手掛かりでね」 「別の手掛かり…?」 「!…なるほど、確かにお前にしか出来ない得意分野だな」 マツバは千里眼の使い手 千里眼の使い手として、最も得意とする事があった 「探し出してみせるよ、ミリちゃんの手掛かりを ――彼女の手持ちの、あの子達をね」 彼女に集う、五つの存在 彼等ならきっと無事に違いない (君達は今、何処にいる?) |