「なんだ、この氷像は」

「え、っと…何だと言われたら、ミリさんですが…」

「そんな事は分かっている。俺が言いたいのはただ一つだ。誰が作ったかは知らねぇが、何なんだこの駄作は。こんなモン認められるものじゃねぇ。やり直し」

「だ、駄作!?やり直し!?」

「もっと美しく、麗しく、鮮やかにしてこそあの御方だというのに、所詮地方はその程度のレベルか…。仕方ない、サーナイト。冷凍ビーム、それからマジカルリーフだ」

「サー!」

「ああああミリさんがああああ!!」

「あと、何なんだこの壁の装飾は。あの御方の象徴のオレンジ色の花が少ないのはあの御方を愚弄しているのと同等。ったく、これも俺がやらねーといけないのか……ロズレイド、はなびらのまい」

「ロォォッズ!」

「ああああ私の手掛けたお花があああああ!!」

「あと他に…」

「誰かこの人止めて!!」








大変な事になっていた



―――――――
―――――
――









突如現れた、ガイルに



レンとゴウキは警戒心を露にする








「―――……」

「―――何故、俺達の名前を知っている。…その喫茶店の前で、誰かを待っているのか?」

「何故?………謙遜なされるな。貴方達の活躍を知らぬ者などおりません。私は貴方達三人をよくご存じです。……そうでしょう?サラツキ博士」

「――――ッ!!」









平然と、冷静に、淡々と

態度を変えずにガイルは―――ナズナに視線を向ける






ゾクリと寒気を覚えてしまう、その深い夜色の瞳

思い出す、あの時のトラウマ―――


気付いたらナズナの身体は戦闘態勢に入り、腰にあるモンスターボールを手に掛けていた









「…!おい、ナズナ…どうし、」

「……が、」

「「?」」

「―――何故お前が、此処にいる!?」








カッと見開かれるナズナの隻眼

勢いのままに放たれたボール

出てきたのはナズナの手持ちの一匹のデンリュウだった。デンリュウもボールの中で相手を見ていた為、すぐにでも戦闘態勢に入る。やんちゃなデンリュウの姿とは一変した、ナズナと同じ恐怖と憎しみの色を秘めて。バチバチと、デンリュウの尻尾が激しく電気が迸る





只事じゃないと察したレンとゴウキも戦闘態勢に入り、腰のボールに手を掛けた










「…ナズナ、奴は敵か?」

「ッ、敵も何も、アイツは……!!」

「如何されましたか、サラツキ博士。…私達は戦う理由は無いはずでしょう?なにせ私達は、初対面―――貴方に恨まれた覚えはありません」

「何をふざけた事を…!!」







わなわなと震え、ギロリとガイルを睨み付けるナズナ

冷静沈着で感情を露にしない、普段のナズナの様子とは一変した取り乱し方だった。こんなナズナの姿は、レンはおろかゴウキは初めてだった。恐怖を押し隠し、目の前の相手を凄ませる自身の兄の姿を



初めてだからこそ、二人もガイルを敵と見なし、ボールを投げた

現れたのはレントラーとジバコイル。デンリュウの隣に並び、レントラーは自身の牙を、ジバコイルは左右の磁石に電気を迸らせ、いつでも攻撃可能態勢に入った。電気タイプが三匹揃い、互いに静電気を誘発させる事で空間はバチバチと音を鳴らせた









「おいナズナ、簡潔に分かりやすく説明しろ」

「ッ、…アイツは、俺を二度にかけて殺そうとした………あの、炎使いの男!!」

「「―――!!」」








一度目は―――ナズナを殺しに掛かり、灼熱の炎を浴びせた事でクリスタルにさせてしまった時

二度目は―――ハナダの洞窟で見つけたクリスタルに向かってまた灼熱の炎を浴びせ壊そうとした時




忘れたくても、忘れられない


忘れるはずがない!








「アイツの名は――」

「お手間は掛けさせません。自己紹介なら、私自身でしましょう」











三匹のポケモン達を前にしても平然と、堂々と、臆する事無く

ガイルはナズナの言葉を遮って、言う





先程と同様に、胸に手を置き、

優雅な動作で、恭しく一礼をする










「私の名は、ガイル。ガイル・L・アルフレッド。歴代に渡るポケモンリーグ協会本部を取り仕切る者








―――我が主にして総監、ゼルジース=イルミール様の執事で御座います」
















三人の表情が驚愕の色に染まった






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