サバイバルエリアにある、誰も知らない隠れた喫茶店。別名、「勝負所」。気兼ねなくバトルを楽しみながらゆっくり出来る、トレーナーにとってうってつけの穴場

昼から準備が施され、会場は花をモチーフとした装飾品がナタネの手によって綺麗に飾られ、中央にはスズナが作ったミリの氷像が立っている。ホワイトボードには「おかえりなさい、ミリさん!」と豪快に描かれている




本来だったら此処に全員が集まり、シロナとダイゴのエスコートでミリがこの場所に訪れ、手厚い歓迎を受ける。記憶が無いのは全員知っているから改めて自己紹介し合って、後から来た幹部長三人を交えて、楽しい楽しい歓迎パーティーが始まる

そう、誰もが理想を描いていたというのに―――



嗚呼、一体どうしてこんな事になってしまったというんだ








「――――そうか、そういう事だったのか…」

「ロケット団…解散したはずのロケット団が、まさかミリさんを…」







事の事情をゴヨウから話を聞いたコウダイとジンは表情を曇らせた

リーグで仕事を終わらせ、アスランと合流しサバイバルエリアに向かおうとした矢先、二人に連絡が入った。「マサゴタウンのポケモンセンターにて大量の野生のポケモンが緊急搬送された」と。あまりの数だった為もあり、すぐにでも別のセンターに緊急搬送すべしと対処していたら―――また一つの連絡が入る。サバイバルエリアにいたトウガンから「シロナとダイゴが襲撃に遭い、聖蝶姫が行方不明になってしまった」と連絡を受ける事に

そして三人は彼等の口から事情を聞くことになる






――――リゾートエリアで歓迎会の時間を待っていたら、突然ロケット団が現れた

奴等は凶暴のポケモンを操り、こちらに襲いかかってきた。そのポケモンはどんなに倒してもゾンビの様に復活し、またこちらに襲いかかってくるエンドレス状態

ミリを守ろうと戦闘に入るが、隙を突かれてミリのいる別荘が何者かの手により爆発。ミリの消息も安否も不明。しかしゲンの励ましもあり、なんとかこの状況をどうにかしようとバトルを進めた

サバイバルエリアにいたはずのデンジ達が助っ人に現れ、またゴウキ達も現れ、なんとか決着がつくも、別荘にミリの姿がなかった。ゲンを筆頭にミリの行方を探すも――――突然、パタリとミリの波動を感じなくなってしまった

ミリが最後にいた小島に行ってみると、そこは凄まじいバトルがあったことが明確な大惨事になっていた。ミリの捜索に入っても、警察がやってきても、ミリの姿は何処にもなかった――――







ごめんなさい、とシロナは弱々しい声で呟いた










「…私、馬鹿だったわ……自分自身見くびっていた………ミリを絶対に守れると、思っていたのに……結局何も、出来なかった…………コウダイさん、ジンさん、アスランさん、ごめんなさい……!」

「シロナ君…」

「「………」」

「…アスランさん、コウダイさん、ジンさん……大変、申し訳ありませんでした………僕の力不足の所為で、ミリを、ミリを……ッ!」

「シロナさん、ダイゴさん、あまり自分を責めないで下さい。貴方達に非はありません、しっかりして下さい。貴方達はチャンピオン…気持ちは痛いくらいに分かりますが、まずは貴方達がしっかりしないと」

「…ジンさん…」

「君達のポケモンの状態を見たら、一番に彼女を守る為に戦闘に挑んだ事くらい誰が見ても分かっている。……二人もまずは休んだ方がいい。勿論、そこにいる帽子のトレーナーもな。…名は?」

「…ゲンです。初めまして、コウダイ幹部長」

「うむ。三人を何処かへ落ち着かせてやってくれ」

「シロナさん、ダイゴさん、ゲンさん!こっちのテーブルに座って下さい」

「…ありがとう、ナタネ」

「「…………」」

「しかし、波動が消えたとなったら……事態は本当に、最悪だな」

「……えぇ、そうですね」






私のルカリオも彼女の波動を感じないみたいです

そう言ってジンは一つのモンスターボールを取り出した。このボールはジンの手持ちのポケモンの一匹である、ルカリオだ。ボールから開ける事はしないが、主の言葉に頷いているのかカタカタと悲しそうに揺れていた



波動が消えた―――その意味を、二人は知っていた





シン、と静まる喫茶店

誰もが皆―――暗い表情で下を向き、唇を噛み締めていた





ゴウキ、とコウダイは部屋の壁側にいたゴウキ達に声を掛ける










「――――お前達の行動はこちらの耳に届いている。動いていたからこそ、此処にいる。此処いる、という事は…」

「……期待に応えれるから分からんが、それなりの事実を手にした」

「…そうか」

「………」

「……幹部長、アンタは…コイツらが妙な動きをしていた理由を知ってたのか?」

「妙な動き、か……。そう言われても無理はないだろう。実際、ゴウキ達がどのような情報を手にしたかは分からんが―――キッカケを与えたのは、何を隠そう私達だからな」

「「「「!!」」」」

「本来だったら時期を調整して改めてセキエイリーグと共に説明してもらうつもりだったが、致し方無かろう。…今日、説明してもらう。ゴウキ、アスラン…いいな?」

「あぁ…」

「……分かっている」






それから、と

コウダイは―――ゴウキの隣で沈黙を守っていたレンに視線を向ける







「…そこの君は、アルの息子だったな。…顔を合わせたのは葬儀以来だったな。随分と立派になったものだ…アルの面影そのままだな」

「……どうも」

「彼女とは恋人関係にあると、そこのアスランから聞いている。…辛いかもしれんが、今は情報屋として責務を真っ当して欲しい」

「…言われなくとも今の俺は情報屋として此処にいる。…安心しろ、私情は慎むつもりだ」






小さく息を吐くレンはフッと笑い、視線を逸した

カントーにいた頃にはその様を見せなかったが―――元は一匹狼でもあったレン。必要最低限の接触で渡り歩いてきた彼の"今"の姿は、雰囲気は―――まさに一匹狼、その姿だった。これがミリが見たらさり気なく輪の中に迎え入れるか、「レン!照れてないでもっと輪の中に入ろうよ!」と引きずられていくかどっちかだっただろう




レンはあるところに目線を向ける



それは―――スズナのポケモンによって造られた、ミリの氷像だった

六年前の姿を見事に緻密に且つ豪快に再現されていた。チャンピオンマントを、その長い髪を靡かせて、ミリは笑っていた。レンの知る、太陽みたいな優しい微笑みで






「(ミリ……)」








嗚呼、愛しい人よ

お前は一体、何処にいるんだ













――――その時だった










カランカラン…












「すまない、遅くなった」










最後の来訪者が現れた





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