嘘だと言ってくれ

こんな悪い夢なんて、認めたくない







「コウダイ!もっと早く飛ばないのかこの子達は!」

「これでも速い方だ!二匹ともこれでも歳だから無茶を言うんじゃない!」

「喧嘩はいいので二人とも舌を噛みますよ!」







せっかく再会出来たというのに

嗚呼、彼女が一体何をしたというんだ






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―――――
――











230番水道にある小島にてミリの捜索に入ってから、約数時間後

そこはさらに、大勢の人間達で縦横していた





地面は抉れ、岩は砕かれ、花畑であっただろうソコは跡形も無く花が無残にも散っている荒れ果てた島。大木もへし折られ、中には焼けた跡もあるその光景は誰もが見ても異常で、異形。新たに訪れた人々は眼前の光景に言葉を失った

問題なのはそれらも含めてだが―――暴走を止める為の手段として加えられた、見上げる程の立派な氷柱。中にはこの島に住むであろうポケモン達だった。ポケモン達は、安らかな表情で眠っている。氷状態で命に別状はないにしろ、広範囲に広がる氷柱を生み出した元凶に恐怖を抱かせるばかり

シンオウ四天王であり警察関係にパイプを持つ一人の男の一報により、瞬く間にこの地はリーグ関係者、警察関係者など様々な人間達に足を踏み入れられ、この壮絶なる惨事を目撃される事となる









「…これは酷い…こんな事が、たとえポケモンとはいえこんな事が可能にさせるとは…驚きだ」

「…トウガンさん……すまない…結局私は何も、」

「何も言うな、ゲン。お前は波動が分かるからこそ、要らない事まで知ってしまう……あまり自分を責めるな。これは誰の所為でもない」

「しかし…私は…!」

「ゲンさん……」

「トウガン、ヒョウタ…ゲンを休ませてやろう。ゆっくり休んだ方がいいだろう。こっちは海の中の捜索にあたる」

「頼んだ、マキシさん」

「マキシマム仮面だ、って言いたいところだが…まあいい。行ってくる」







転がっていた岩に座り、力も気力を使い果たしたゲンに、後から来たトウガンが背中を擦る。ずっと一緒にいたヒョウタも、やりきれない思いでゲンの姿を見つめるしかない

マキシもゲン、そしてゲンの手持ち達の事を踏まえた上で休ませる様に進言するも、仮面で隠れた表情は辛く、暗い表情を浮かべている。一抹の不安を振り切り、マキシは手持ちのポケモンと共にミリの捜索に入っていった


別の場所では―――






「シロナサン……」

「シロナさん……風邪を引きます、温かいところへ行きましょう…」

「…嫌よ。あの子も寒い思いをしているもの……私だけ、温かく、している、なんて………ミリ……ごめんなさい…守ってあげられなくて、ごめんね…ミリ……ッ!!」

「…師匠…!」

「ロケット団…!絶対に許さない!!」







泣き腫らし、疲れ切ってもなお懺悔するシロナ。ナタネもシロナを連れ出そうとするも、ナタネ自身も涙を流していた

状況を聞いたメリッサとスモモとスズナの三人は驚愕するばかり。どうしてこんな事になってしまったのだろうかと。状況が状況の為、メリッサはシロナを慰めに入るが、スモモはスズナの二人はロケット団の存在に怒りを示し拳を握り締めていた








「ダイゴさん!しっかりしてくれよ!アンタがしっかりしてなきゃ、誰がこの場を仕切るんだよ!アンタそれでも、ホウエンチャンピオンかよ!」

「……ッ、僕は…!!」

「ダイゴさん、アンタはミリが認めたトレーナーなんだろ?……だったら!信じろよ!ミリが無事なのも、生きているのも!今度は、絶対に!諦めない!!記憶も、消させないって!」

「………ッ!!」

「あ、兄貴!落ち着けって!」

「デンジさんも!ダイゴさん死んじゃうって!流石に殴っちゃダメだよ!」







あまりのショックに動こうとしない虚ろ気味のダイゴに叱咤するオーバ、胸倉を掴みあげ揺さぶるデンジ。それを慌てて止めにはいるバグとリョウ

ダイゴ、デンジ、オーバの瞳は涙が光っていた。六年振りの再会を果たし、せっかく穏やかに共に過ごし、守ってきたというのに―――結局自分達は守る事が出来なかった

悔しさと後悔、そして捜索しても見つからなかったミリの"死"の可能が浮上している今、自分達が出来る事としたら一つしかない。動かないダイゴにそれを分からせて、思い出させてやる為にもデンジとオーバはダイゴを奮い立たせようとする











「―――ゴウキさん、」

「ゴヨウか…」

「…………よぉ」

「久し振り、レンさん。…と、再会を喜ぶべきでしょうが…状況が状況です。今、幹部長と副幹部長がこちらに向かっています。……アスランさんと一緒に」

「「……………」」

「今、シロナさんとダイゴさんがあの状態なので…私が代わりに指揮を取ります。幹部長達と再会したら、一旦サバイバルエリアに集まります。貴方達も来て下さい」

「…分かった。こちらの事は警察に任せてくれ」






警察関係者に話をしていたゴウキとレンの元に、ゴヨウが現れる。ゴヨウの表情は、けしてよろしいものではなかった


シンオウ代表チャンピオン、シロナ。ホウエン代表チャンピオン、ダイゴ。彼等の指揮官が今意味を成せない状態の為、四天王代表であるゴヨウが彼等の代わりに指揮をとる事になる

彼は冷静沈着であまり物事に動じない。今回の件こそ彼が相応しいのだろう。しかし、ミリを知っているからこそ取り乱してしまう彼等の気持ちは痛いくらい理解出来るし、ゴヨウ自身も辛くやりきれない気持ちでいっぱいだった

どの道幹部長達がやってきたら、指揮権は幹部長になる。心を殺してでも自分は自分のすべき事をするまで


ゴヨウは小さく息を吐いた











「……貴方達の行いはこちらの耳にも届いています」

「「………」」

「本来だったらセキエイリーグの方々を交えて、が前提でした。しかし、これこそ状況が状況です。説明…してもらいますからね」

「……分かっている」

「…………」

「…サラツキ博士は、今?」

「…予想外な事が起きてしまった以上、いつでも説明出来る様にと、準備している。準備出来次第こちらにくるそうだ」

「分かりました」












彼等が真実を知るのは、もう少し先の話





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