「おんどりぁああああっ!まだまだまだまだぁあああ!背負い投げいっぽぉおおおおんッ!」

「「「ウォオオォオオオッ!」」」




ドォオオオン!




「よーし次は滝修業だ!滝に打たれて精神統一、それから滝のぼりじゃぁああああッ!」

「「「オオオオオオッ!」」」




バシァアアッ!




「みんなー、ご飯ですよ〜。たっぷり作ったから午後の修業も頑張って張り切って頂戴ね!」

「「「「ウォオオォオオオッ!飯ぃいいいいッ!!」」」」




ガツガツガツガツ…!












「……ゴウキさん、元気にしているかなぁ…」








物静かなゴウキがあの中に入っていたと考えたくないミリだった

(シンオウの誰かが一人静かにくしゃみをした)



―――――――――
―――――――
―――――
―――












マサラタウンのとある家



家の庭の、森に囲まれた奥に隠れる秘密の広場







「ブイブイ」

「ブ〜イブイ」








その秘密の広場の中央


そこには白亜と黒恋の姿はあった






「ブイブイ」


パタパタパタパタ…


「ブ〜イ」


パタパタパタパタパタ…







同じ姿、同じ顔、同じ仕草はそのままに、違うのは二匹の身体の色だけ

そんな二匹は広場の中央で行儀良くちょこんと座り、パタパタと己の尻尾を振っていた




彼等は今か今かと待っていた




この広場にやってくる、あるポケモンを








シュッ…









「「ブイブイ!」」








座って待っていた二匹の少し離れた所に、一匹の緑色のポケモンが現れた

テレポートでやってきたのだろう。緑色のポケモンが現れれば二匹は嬉しそうにその場にピョンピョンと飛び跳ねる。待ってましたと言わんばかりの歓迎だ。緑色のポケモンはそんな二匹を視界に入れると、目尻を緩め、緩やかな動作で歩み寄って行く





「サー」

「「ブイ!」」






今自分が持っている大切な贈り物の中身を崩さぬ様に細心の注意を払う。ゆっくりと歩み、行儀良く座る白亜と黒恋にソレを差し出せば、二匹の瞳がキラキラと輝き、先程以上に尻尾をパタパタと振りまくる

二匹は何も言わなくてもこの中身が何であるかは既に知っている

知っているからこそ、彼らは待っていた。素敵なプレゼントを渡してくるこの目の前のポケモンを、優しい瞳で自分達の頭を撫でてくれる、緑色のポケモンを







「サー」

「ブイブイ!」

「ブーイ〜!」







贈り物を丁重に地面に置き、よしよし、としなやかな緑色の腕が白亜と黒恋の頭を撫でる。気持ち良さそうに喉を鳴らす二匹の姿を見れば、緑色のポケモンに懐いている証拠。彼等の中にはこのポケモンは敵じゃないと認識をしている。だからこそ、いくらポケモンであってもすぐに懐く事は無い。自分の主の紹介や繋がり、または話の流れで相手のポケモンと仲良くなる事はあるが、やはり時間が必要なのだ。いくら成長したとはいえ、昔の傷はそうそう治せるものじゃない

そう考えると、この緑色のポケモンと白亜と黒恋はそれなりの逢引があって親睦を深めたのだろう。かつて、いきなり現れた緑色のミュウツーの刹那の様に






「サー」

「ブイ!」






暫く二匹の頭を撫でていた緑色のポケモンが言えば、待ってましたと黒恋が元気良く返事を返す

緑色のポケモンが丁重に置いた贈り物のソレに視線を向け、キラリと瞳が青く妖しく光る。すると何かの力によって贈り物はフワフワと宙に浮き始め、黒恋の頭上で止まった

そう、これは黒恋のサイコキネシスだ








「ブイブイ!」

「ブイ!」

「サー」

「「ブイ!」」






ありがとう、と白亜が言い、

また来てね、と黒恋が言う

パタパタパタパタ、尻尾をこれでもかっ!と振りまくり嬉しさの感情を露にする二匹に、緑色のポケモンは微笑む




そして――いつもの様に、口の前に手を持っていき、人間でいう人指し指を作り、唇に当てる仕草をする。自分の存在を、他人には知らせてはいけないよ、という緑色のポケモンのお願いと警告

白亜と黒恋はその"お願い"に元気良く頷く。いつもと同じに、元気良く。言ってしまえばきっと、お願いを破った事で目の前のポケモンが悲しみ、自分達の元にやってこなくなるかもしれない

言わなくても、二匹は理解していた。"お願い"の意味に込められた真意はともかくとしても、純粋に守りたい。付け加えれば…きっとこの"贈り物"が来なくなりそうな気がしたため、それだけは嫌だと思っているのだろう






「ブイブイ!」

「ブーイ〜!」






緑色のポケモンが見守る中、白亜と黒恋は贈り物を持って家に向かって走っていく

ふよふよと不安定に浮かぶ贈り物を頑張って運ぶ黒恋に、陽気に元気良く走っては後ろを振り返りピョンピョンと飛び跳ねる白亜



バイバイ――――…



最後に二匹が振り返って尻尾を振り、…――そして広場から姿を消したのだった











「…サー」










暫く二匹の姿を見届けた緑色のポケモン――サーナイトは、彼等が意気揚々に家に戻ったのを察知能力で確認した後、踵を返す

サクリ、と踏む広場の芝生の擦れた音を最後に、自分の技の一つでもあるテレポートで姿を消した。自分の戻る場所で、贈り物を完成させて大満足しているだろう主の元へ、戻る為に










心地良い風が、サーナイトを見送った





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